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国際生物学賞委員会審査委員長 星 元紀
第22回国際生物学賞審査委員会を代表いたしまして、今回の審査の経緯について御報告申し上げます。審査委員会は、私を含めて計19人の委員で構成いたしましたが、そのうち4人は特別に委嘱した外国人の権威ある研究者でした。
審査委員会は、今回の授賞対象分野に定められた「時間生物学」に関連する内外の大学、研究機関、学協会および個人研究者並びに国際学術団体あてに、1,794通の推薦依頼状を送りましたところ、68通の推薦状が届きました。このうち重複を除きますと、推薦された候補者の実数は31人であり、広く14か国に渡っておりました。
審査委員会は、計4回の会議を開き、慎重に候補者の選考にあたりました。その結果、第22回国際生物学賞受賞者として、オランダのサージ・ダアン博士を国際生物学賞委員会へ推薦することに決定いたしました。
サージ・ダアン博士は、1940年生まれの66歳で、オランダ国籍をお持ちです。博士は、1973年にオランダ・アムステルダム大学で博士号を取得されました。その後米国・スタンフォード大学を経て、1975年よりオランダ・グローニンゲン大学に移られ、主任研究員、準教授、教授として研究された後、2003年からはグローニンゲン大学ニコ・ティンバーゲン行動生物学教室主任教授に就任され、今日に至っております。
ダアン博士は、動物の体内時計である概日リズムについて、行動を指標とした詳細な観察研究を行い、概日リズムに関する基本的性質とその適応的意義を実験的・理論的解析により明らかにしました。それは、概日リズムの光周期への同調機構とその生態学的意義、光周期への同調の履歴現象、季節の日周期リズムの変化への適応、さらに朝夕に活動量のピークを持つ双峰性リズムの朝夕二振動体による制御機構などです。これらの先駆的な研究により、時間生物学の基礎を確立しました。
また、睡眠-覚醒リズムについての研究では、睡眠が概日リズムと睡眠制御因子により制御されるというモデルを提案し、睡眠-覚醒リズムの理解に貢献するとともに、その成果は体内時計の不調による症状の改善や治療にも応用されています。さらに、動物の冬眠についての研究では、冬眠が睡眠遮断であることを示し、これまで睡眠と同様とみなされていた冬眠に関する認識を一変させました。
博士は、年周期と概日リズムの生態学的意義にも早くから注目し、鳥類のげっ歯類に対する採餌行動の時間的関係の解析により、狩猟頻度と狩猟成功率が餌動物の活動に依存することを発見しました。また、繁殖行動に関する解析も行い、繁殖時期と繁殖の成功率が年周期によって制御されていることを明らかにしました。これらの研究を通して、概日リズムや季節と関連する年周期の制御と環境に対する適応的意義についての理解に貢献しました。
このような博士の業績は、時間生物学の黎明期より時計機構の研究に大きな影響を与え、その発展に大きく貢献しました。また現在も、分子生物学的方法により時計遺伝子の研究を続けられ、これらの成果は生物学のみならず医学などの分野の発展にも貢献しております。このような次第で、今回の授賞は国際生物学賞に対する内外の評価を高めるものであると信じております。
審査委員会は、本賞の審査基準として、研究の独創性、国際性および生物学の進歩に対する貢献度を取り上げていますが、サージ・ダアン博士の業績は、そのいずれをも十分に満たすものであることを認め、国際生物学賞を授与するのに最もふさわしい研究者として推薦いたしました。
国際生物学賞委員会は、審査委員会の推薦を承認し、サージ・ダアン博士に対し、第22回国際生物学賞を授与するものであります。
以上をもちまして、私の審査経過報告を終わります。