大学国際戦略本部強化事業【SIH】  リンク集 サイトマップ English

 事業・組織 大学国際化のためのお役立ち情報 JSPS主催シンポジウム等情報 JSPS調査報告 JSPS海外研究連絡センターより
HOME > 大学国際化のためのプラクティカルガイド

大学国際化のためのプラクティカルガイド


目標設定、行動計画、評価体制

「九州大学における『国際競争力強化の取組み』―数量データの活用と、教職員の協働―」
職員と教員の協働体制による国際競争力を高める仕組みづくりについて
(第4回「採択機関間の情報交換会」より)


安達明久先生(九州大学 産学連携センター特任教授/大学評価情報室協力研究員活性化チーム幹事)と田邉圭二氏(九州大学 国際部 国際企画課 課長補佐)から九州大学における国際競争力強化の取組みについての発表があった。発表の概要は以下の通り。


九州大学の活性化チームの概要、数量データの活用、教職員の協働について説明があった。活性化チームはQUEST-MAP(九州大学戦略マップ)の開発を主導した。同マップは、全学的には九大改革の方向を示した中期目標・中期計画の要約版であり、部局では、部局の将来構想を示すものである。マップは、企業マネジメントで使用されているバランスト・スコア・カード(BSC)、SWOT分析といったマネジメント・スキームが応用されている。マップは50の成果指標を含み、成果を様々な角度から図る工夫がある。


BSC作成上の重要なポイントは、(1)客観的な事実・データに基づくこと、(2)幅広い層の教職員と意見交換を行い、情報共有することで「多様性・自由度」という大学固有の価値観の尊重と客観性・合理性の高い「戦略」の「共有」を図ることにあった。(1)の客観的データについては、THE-QS等の大学ランキングデータ、論文データ等により基礎情報を収集した。これらのデータを分析し、他大学との比較により、大学の現状把握を行った。例えば分析により研究拠点作りの重要性が明らかになった。(2)の教職員協働については、「集団から組織へ」「教員と事務職員の両輪化」の二つの方針を柱として、組織としての戦略性確保が図られた。具体的には、QUEST-MAP策定におけるFDの活用、大学評価情報室と国際部の連携等が、合宿を含んだ議論を通じて推進された。


詳細は以下を参照されたい。
当日発表資料PDFファイル


(FAQ)

Q:

BSCやSWOT分析といったビジネス向けマネジメント・スキームを、大学という非営利組織に応用する場合のポイントは何か?

A:

法人企画・活性化担当理事の方針「集合体から組織体へ」に表れているように、基本的には企業も大学も組織体という意味では同じであると考える。ただし、Peter Druckerが「非営利組織の特徴はミッション重視にある」と述べているように、非営利組織向けにスキームの内容を変化させた。例えば、BSCの4つの視点のうち、ビジネス向けでは「財務の視点」とある部分を「外部ステークホルダーの視点」に変更している。


Q:

非営利組織とはいっても、財務ファクターを外すわけにはいかない。国際化に向けての取組によって、どれだけの収入が見込めるかは学内他部署からも問われる。国際化業務は「金食い虫」と評されることがある。財務ファクターはどの程度考慮しているか。

A:

難しい問題であり、ジレンマはある。しかし、長期的な視点に立った先行投資と捉えることで財務部門の理解を求めている。大学ランキングに注目しても収入に直結するわけではないが、競争的資金の獲得に有利になると考える。更にランキングは、海外の大学と手を組む際の参考データや、自大学の名刺代わりとして活用できる利点があると考える。 また、財務担当者を海外オフィス視察に連れていったことで、理解・協力を得、現地に職員を常駐することが可能となった。


Q:

大学特有のカルチャーは、QUEST-MAPや成果の数値化といった価値観を受け入れることができるのか。

A:

初の試みとして、教職員100名が混合して参加するようなワークショップを行った。ワークショップ後に行ったアンケートの反応は非常に良かった。このような集中的な議論による合意形成のプロセスを重視した。


Q:

職員の定期的な異動によるプロジェクトへの影響は?

A:

FDで議論して決定した事業については、トップが替わっても問題なく続いている。プロジェクト内容は部局へと落とし込んでいくので問題はあまりないと考える。


Q:

QUEST-MAPは、文部科学省に提出する「中期目標・中期計画」や「中期目標期間の業務の実績に関する評価」といかに連動しているか。

A:

QUEST-MAPに取り組んだ一部部局は、学内でも計画や評価の優良例としてベンチマークとなる部局であった。他の部局からは、QUEST-MAPのフレームワークを使用することで、評価書が書きやすくなったという声もあった。


Q:

大学ランキングを利用した分析を、現場にはどのようにフィードバックしているか。

A:

分析結果に対しては、理事とともに各部局をまわって情報提供を行った。かならずしも良い反応ばかりではなかったが、こうした行動を起こすことで、グローバルCOEの拠点から数値データに関する相談を受けるような状況が出てきた。こうしたアクションを、地道に時間をかけて行うことで、研究成果を対外的に説明する資料が必要だという意識が増えてくると考える。


Q:

タイムズ社のランキングについては、日本と韓国ではかなり分析を行っている。しかしながら、同ランキングは歴史が浅く、指標には主観的な要素も入り、危うさを抱えていることが指摘されている。なぜこれほど大胆に取り入れたのか。その決断の要素はなにか。

A:

本日は成果指標の例のひとつとしてタイムズ社ランキングをあげているが、一番に掲げているわけではない。あくまでも指標のひとつである。またミッション達成に向けての成果を図りやすく、論拠としては有効であると考える。しかし、人員的にもそれほど注力しているわけではない。ランキングは長期的に上昇すればよいと考える。


Q:

大学の国際化を推進していく際に、「大学による国際協力」「教職員の協働」「個人から組織へ」「事務職員の権限強化」が必要であるといった指摘は何年も前からなされてきた。しかしながら実施は困難であった。なぜ九州大学はこれほど成功しているのか。

A:

本学では「国際交流推進機構」を立ち上げ、その枠組みの中で事務組織である「国際部」、留学生センター等の教員組織、企画・立案等を担当する「国際交流推進室」が協力して業務を遂行している。そのほか国際開発協力に関して、国際交流推進室がJICAやJBICへの対外窓口として関係教員との連携を図っている。それらの連携により学内での国際開発協力における教員間のネットワーク作り等を支援するため「国際協力活動に取り組む教員データベース」を作成した。担当の事務職員も専門的に取り組んでいるところである。国際的な広報活動(ホームぺージ等の整備)については、必要性を感じるが全学的な取り組みとしては進んでいないのが現状である。


Q:

ミッションを反映するパラメーターとしての、人の流れをいかに捉えているか。

A:

そのような視点からは考えたことはなかった。そのため明確な指標はない。



■情報交換会参加者の感想・展望■

・早稲田大学では、2007年に創立125周年を迎えたことを契機に、今後10年間の中期計画として「Waseda Next 125」を作成した。相当数の教職員が参加してワーキンググループで議論を行い、学内説明会を行う等、プロセスを重視した点は九州大学と同様である。
 大学ランキングは、大学の総合力をはかるものではないが、指標ごとの結果を分析することで大学の強み、弱みを把握することができると考えている。これは、ランキングの指標が必ずしも正しく客観的であるわけではないが、ミッションの達成度をはかる指標の1つとして有効利用しているという九州大学のスタンスに共通する考え方である。ランキング結果に一喜一憂するのではなく、指標をうまく活用して、日本の高等教育全体の発展に繋げることが重要と考える。(早稲田大学)