
外国人研究者等の受入れ改善
「来日前から帰国後まで」
教員・学生・職員が協働し、外国人研究者のサポート体制の整備を推進−東京外国語大学
(第1回「採択機関間の情報交換会」より)
学生、教職員あわせて、概ね7人に1人が外国人。言語と世界諸地域の文化・社会に関する教育研究を行う東京外国語大学は、その性質上、国内指折りの外国人学生・教職員の占める割合の高い大学である。そればかりか、教育研究の対象とする言語数は50にものぼる幅広さだ。この、多国籍・多文化大学を構成する受入れ外国人研究者を支えるのは、「国際学術戦略本部(OFIAS)」及びその実施部隊としての「OFIASサービスフロント」である。その活動に、密着してみたい。
1.東京外国語大学の外国人研究者受入の現状
東京外国語大学は、その名が表すとおり、各国の言語及び文化・社会の教育研究を専門に展開する国立大学である。その意味で、外国人研究者の受入が必要不可欠なものとして、従来から活発に行われていることは、言うまでもないだろう。
文部科学省科学技術政策研究所が行った「大学等における科学技術・学術活動実態調査報告(大学実態調査2007)」によると、平成18(2006)年5月1日現在、東京外国語大学に在籍する教員のうち、外国人教員の占める割合は14.1%。同調査に回答した計670の大学の教員のうち、外国人教員の割合が3.4%であることと比べれば、東京外国語大学における外国人教員の割合は、全国でトップクラスと言えよう。
東京外国語大学の外国人研究者の受入スキームは、主に3つ。(1)専任教員(日本人教員と同様に、教育研究に従事する者)、(2)外国人研究員(学術研究の推進を図るため、共同研究等に参画させることを目的に東京外国語大学が3ヶ月〜12ヶ月の期間で招へいし、雇用する者)、(3)特任外国語教員(外国語を母国語とし、外国語科目および専門教育科目の担当を主な職務とする任期付(2〜3年)常勤教員)である。その他、外国語学部や留学生日本語教育センターにて受入れの外国人研究者、アジア・アフリカ言語文化研究所(略称「AA研」)のフェロー、JSPS、JISTECの諸事業を通じて受入れている外国人研究員、外国人非常勤講師(東京外国語大学では、非常勤講師を科研費の応募資格のある研究者と位置づけている)も挙げられる。
2.国立大学法人化、大学国際戦略本部強化事業への採択――全学的なサポート体制へ
外国人研究者の受入れは、大学で行われる教育研究の質と魅力を向上させる。しかしながら、受入れにあたって発生する問題は極めて多い。
東京外国語大学も例外なく、様々な問題に直面する。ビザの取得に関することから始まり、いわゆる異文化間適応の問題。滞在中の病気、怪我、妊娠・出産。また、雇用契約に関する十分でない事前説明による「ボタンの掛け違い」、在職中の研究成果の取扱いに関する取り決め不足といった問題も発生してきた。これらの問題に対処する体制の整備とサービスの提供は、外国人研究員の受入れなくして成り立たない東京外国語大学にとって、取り組むべき課題であった。
平成16(2004)年の国立大学法人化をきっかけに、東京外国語大学では、全学的な国際活動の企画・立案組織として「国際交流室」を設置。同年10月には、特任外国語教員を対象とした「ワンストップ・サービス・オフィス」を設置し、受入れ外国人研究者への組織的サポートを開始した。
平成17(2005)年の「大学国際戦略本部強化事業」採択後は、「国際交流室」を改廃し、新たに設置された「国際学術戦略本部」(略称「OFIAS」: Office for International Academic Strategy)の主導のもと、東京外国語大学の全学的な国際展開を推進している。「ワンストップ・サービス・オフィス」は、現在その機能をOFIASの組織内に移し、「OFIASサービスフロント」として活動している。
3.OFIASが提供する外国人研究者受入れに関するサービス
OFIASが受入れ外国人研究者に対し提供している主なサービスを、来日前から時系列に沿って見てみよう。
(1)来日前1
(来日準備の導入) |
□ ホスト研究者との協議、調整
□ 渡日、受入れにあたっての案内文書の送付
文書1) Application for visas
文書2) Payments, deductions etc.
文書3) Accommodation
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(2)来日前2 |
□ 契約書の作成
□ 研究室の用意
□ パソコン、インターネット、メールアドレスの手配
□ 宿舎の確保
□ ホスト研究者との連絡調整
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(3)来日直後 |
□ ホスト研究者との引き合わせ
□ オリエンテーションの実施
・保健、医療に関すること
・入国、在留の諸手続に関すること 等
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(4)来日中 |
□ 各種照会、発生した問題への対応
□ 全学電子メール、通知文書の多言語化
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(5)離日前 |
□ 帰国旅程の手配
□ 離日にあたって必要な諸手続きに関する情報提供
・銀行口座の閉鎖
・各種精算手続き
・出国手続き
□ 受入れ研究者からの意見聴衆(アンケートの実施)
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(6)離日後 |
□ 国民年金/厚生年金保険の脱退一時金支給に関するサポート
□ 「TUFSグローバルコミュニティー」への加入、運営
※TUFSグローバルコミュニティー
=東京外国語大学在籍・滞在経験者のネットワーク組織
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4.教員・学生のリソース化が鍵
以上のサービスの提供を実現しているひとつのポイントは、「外国語大学」という特徴を存分に活かした、OFIASサービスフロントのメンバー構成にある。
OFIASコアスタッフのうち、OFIASサービスフロントを担当するのは、AA研のBHASKARARAO Peri教授。つまり、同学に在籍中の外国人研究者自身が、受入れ外国人研究者のサポート体制の整備を推進するリーダーとして、直接業務に携わっているのだ。そのため、OFIASの活動には、「受入れ外国人研究者」の意見や視点が自然と反映される仕組みになっている。このように、学内の「受入れ外国人研究者」と協力し、意識を共有しながら体制の整備を進めることが、きめ細やかで充実したサービスの提供に繋がると考えられる。
また、在学生を学生インターンとしてOFIASに採用し、文書・用語の多言語化等の実務作業の第一線的な役割を担わせていることも見落とせない。この活動は、在学生の持つ語学能力を効果的に活かすと同時に、在学生に国際業務の実務経験を提供することで、国際的に活躍する人材の育成を図るという、二重の効果を狙っている点でも、興味深い。
このように、学内の教員・学生を本部の活動の推進力として上手く組み入れ、まさに大学関係者が一丸となり活動を展開することが、大学の国際化ないしは大学全体の強化のための基本なのではないだろうか。
5.サービスのさらなる充実を目指して
東京外国語大学では、「サービスの量的拡大と質的向上」をキーワードに、外国人研究者の支援体制の更なる整備を図る方針だ。
しかしながら、当然、一大学で実現できることは限られている。例えば、国際法務や知的財産の取扱い、宿舎の整備・拡充等に関する課題は、一大学で取り組むよりも、複数大学の連合体、ないしは国レベルで取り組めば、より高い効果があがることが期待される。そこで、東京外国語大学では、開発したサービスの他機関との共有や他機関への公開、さらには事業化の可能性を模索している。今後の展開に注目したい。
■大学データ■
東京外国語大学 http://www.tufs.ac.jp/index-j.html
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設置形態 |
国立大学 |
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構成 |
学部 |
1 |
外国語学部 |
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研究科 |
1 |
地域文化研究科
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研究所 |
1 |
アジア・アフリカ言語文化研究所 |
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センター |
1 |
留学生日本語教育センター |
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学内共同利用施設 |
5 |
多言語・多文化教育研究センター、地球社会先端教育研究センター、海外事情研究所、語学研究所、総合文化研究所、 |
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人員 |
教員 |
227 |
教授、准教授、講師、助教。うち、外国人教員数31。 |
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職員 |
101 |
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学部学生 |
3,808 |
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大学院生 |
852 |
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財務 |
支出 |
6,034 |
百万円 |
|
収入 |
6,034 |
|
|
|
3,389 |
|
|
|
69 |
|
|
|
13 |
|
|
|
2,451 |
|
|
(2,397) |
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雑収入 |
(54) |
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112 |
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(平成19(2007)年5月1日現在)