2007年度予算案発表と同時に公表されたPART評価結果
米国では、毎年大統領予算案の発表と共に、「プログラム評価採点ツール(Program Assessment Rating Tool: PART)」と呼ばれる連邦プログラムの評価結果がOMBから発表される。ここではPARTについて簡単に説明した後、2007年度予算案発表時に公表されたNSF、NIH、DOE、NASAの4省庁のPART結果の中で評価が高かったプログラムを紹介する。
(参考ウェブサイト:http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/about.html)
1.PART概要
PARTは、ジョージ・W・ブッシュ大統領が2002年に発表し、2004年度の大統領予算案発表時(2003年冬)から導入された連邦プログラムの評価システムであり、各省庁から提出された情報やデータをもとに、行政管理予算局(Office
of Management and Budget: OMB)が評価分析を行った結果を発表している。
PARTでは、以下の4分野でそれぞれ複数の評価のための設問が設けられており、それについての返答をまとめて、OMB審査官が各プログラムに対して評価を下す。
(1)Program Purpose & Design(プログラムの目的とデザイン)
プログラムの目的の明確さと、プログラムのデザイン手法に関する評価。質問には、根拠法などのプログラム担当省庁の責任範疇外のものも含まれる。
(2)Strategic Planning(戦略的計画)
プログラムの計画、優先順位決定、リソース割り当てに関する評価を行なう。各プログラムについて、適切なパフォーマンス評価基準と、野心的でありつつも達成可能な目標が設定されているか、また予算とパフォーマンス目標との関連付けがあるかについても評価される。
(3)Program Management(プログラム管理)
プログラムの目的と目標の達成に向けて、各省庁が効率的にプログラムを管理しているか、またそれを示すことができるかを評価。特に財務管理、プログラム向上評価、パフォーマンスデータ収集、プログラムマネジャーのアカウンタビリティーが重視される。
(4)Program Results/Accountability(プログラムの成果、アカウンタビリティー)
プログラムが長期的目標と年間目標の達成に向かっているかどうかが評価対象となる。同じようなプログラムと比較して当該プログラムは結果を出しているか、また、第3者機関による評価結果でパフォーマンス効果が実証されているかどうかについても評価される。
評価結果は、「効果的(Effective)」、「やや効果的(Moderately effective)」、「まずまず(Adequate)」、「効果的でない(Ineffective)」、「評価不可能(Results
not demonstrated)」の5段階で示される。(評価不可能とは、データ不足等で評価ができない場合を指す)
OMBが2007年度に発表したPARTでは、793件の連邦プログラムが評価対象となっており、その結果は表1の通り。
表1 2007年度のPART評価結果
| 対象プログラム数 |
793 |
| 効果的(Effective) |
15% |
| やや効果的(Moderately effective) |
29% |
| まずまず(Adequate) |
28% |
| 効果的でない(Ineffective) |
4% |
| 評価不可能(Results not demonstrated) |
24% |
2.国立科学財団(NSF)
NSFでは10件のプログラムがPARTの対象となっており、その全てが「効果的」と評価された。表2は効果的と評価された全プログラムとその内容である。
表2 PARTで効果的とされたNSFのプログラム
| プログラム名 |
プログラム内容 |
研究施設の建設
(Construction and Operations of Research Facilities) |
研究施設、研究船舶、南極に設置されている望遠鏡などの建設・維持・運営を実施する。 |
連邦研究開発センター
(Federally Funded Research and Development Centers:FFRDC) |
FFRDCとは、連邦政府が研究や運営に対する支援を行なうセンターで、民間委託機関に対して実際の運営が委託されているものを指す。 |
基礎科学技術研究
(Fundamental Science and Engineering Research) |
NSFの中で中心的なプログラムで、科学・数学・工学分野の教育と研究を幅広く支援する。 |
情報技術研究
(Information Technology Research) |
演算、ネットワーク技術、ソフトウェアや情報技術が及ぼす社会への影響など、情報技術分野の研究を支援する。 |
ナノ規模科学技術研究
(Nanoscale Science and Engineering Research) |
ナノテク分野の研究、教育、研究機器の開発に対する支援を実施する。 |
極地研究機器、施設、補給支援
(Polar Research Tools, Facilities and Logistics) |
南極に設置された研究所での研究を包括的に支援する。 |
環境による生物の複雑系研究
(Research on Biocomplexity in the Environment) |
複雑な生物・環境システムを理解することを目的とした研究を支援する。 |
個別研究者への支援
(Support for Individual Researchers) |
大学院生への奨学金など、科学・数学・工学分野を専門とする学生、教育者、研究者を支援する。 |
研究所への支援
(Support for Research Institutions) |
科学・数学・工学のレベルの向上のために、大学や研究所などに対して組織的な支援を提供する。 |
小規模研究協力支援
(Support for Small Research Collaborations) |
科学・数学・工学分野の教育を強化するための大学・地方自治体などから構成される協力体制に対して支援を実施する。 |
http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html
3.国立保険研究所(NIH)
NIHでは、4件のプログラムがPARTの対象となっており、3件が「効果的」、1件が「やや効果的」と評価されている。表3は効果的と評価されたプログラムとその内容である。
表3 PARTで効果的と評価されたNIHのプログラム
| プログラム名 |
プログラム内容 |
NIHの建築物・施設
(NIH - Buildings and Facilities) |
研究に必要な施設の建設計画と設計を支援し、既存の施設や機器を有効利用する。 |
NIH外の研究プログラム
(NIH - Extramural Research Programs) |
大学や民間に対する研究補助金の拠出や、研究事業委託を実施する。対象となる分野は、基礎研究、初期段階の医療実験、研究機材や実験動物の開発・購入など幅広い。 |
NIH内の研究
(NIH - Intramural Research) |
NIH所属の研究者による研究事業を支援する。バイオ・医学療関連研究の支援だけでなく、若手研究者のトレーニングも実施する。 |
http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html
4.エネルギー省(DOE)
DOEでは50件のプログラムがPARTの対象となっており、その内11件が「効果的」、26件が「やや効果的」、7件が「まずまず」と評価され、「効果的でない」は2件、「評価不可能」は4件である。表4は効果的と評価されたプログラムとその内容である。
表4 PARTで効果的とされたエネルギー省のプログラム
| プログラム名 |
プログラム内容 |
| 先端シミュレーション・演算(Advanced Simulation and Computing) |
米国が保有する核兵器備蓄の老朽化や安全性を分析するため、高速演算可能なコンピュータによるシミュレーションを実施。 |
| 基礎エネルギー科学(Basic Energy Sciences) |
材料科学、化学、地球科学、工学や生物学の研究を支援する。また年間7,000名以上の研究者にユーザー施設を提供している。 |
| 生物学・環境研究(Biological and Environmental Research) |
気候変動、環境改善、エネルギーに関係する微生物の遺伝子やたんぱく質研究、放射線生物学、医学などの分野の研究に対し支援を実施。 |
| 核兵器に転用可能なプルトニウム生産の廃止(Elimination of Weapons-Grade Plutonium Production Program) |
核兵器テロが起こる可能性をできるだけ減らすため、毎年1.2メガトンの兵器用プルトニウムを生産可能なロシアの3つの原子力発電所を閉鎖し、その代替として石炭発電所を建設する。 |
| 国際核物質保管・協力(International Nuclear Materials Protection and Cooperation) |
核兵器テロを防ぐため、旧ソビエト連邦内に残る核弾頭と核分裂性物質の厳重な保管を実施。 |
| 国家核安全保障局:大量破壊兵器不拡散のための国際的イニシアティブ(National Nuclear Security Administration:
Global Initiative for Proliferation Prevention) |
大量破壊兵器の拡散を防ぐため、旧ソビエト連邦、リビア、イラク、その他の地域で失業中の大量破壊兵器の専門家を対象に補助金を提供し、兵器開発に関係させずに、安定した職業につけるよう支援する。 |
| 国家核安全保障局:海軍原子炉(National Nuclear Security Administration: Naval Reactors) |
米海軍に対し、安全で軍事的に有効な原子力推進プラントを提供し、安全且つ信頼性のある運営を支援する。 |
| 国家核安全保障局:兵器利用―準備キャンペーン(National Nuclear Security Administration: Weapons Activities
- Readiness Campaign) |
設計から製造に到るまでの核兵器備蓄に関連する技術を開発・提供する。また、国家核安全保障局の兵器複合施設の運営コスト削減につとめる。 |
| 核不拡散と国際安全保障(Nonproliferation and International Security) |
安全保障上の懸念がある輸出を制限し、さらに、国際的な核不拡散にむけて、政策(条約、合意、相互査察など)の策定や、審議・活動実施に対して技術的・政策的な助言を行う。 |
| 原子核物理学(Nuclear Physics) |
原子核加速器の運転、基礎原子核物理学や天体核物理学などを含む関連分野の研究を支援する。 |
| 戦略的原油備蓄(Strategic Petroleum Reserve) |
米国のエネルギー安全保障を強化するため、7億バレルの原油を備蓄し、海外からの原油輸入量、または国内での生産量がなんらかの理由で減った場合、この備蓄を利用する。 |
http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html
5.航空宇宙局(NASA)
NASAでは9件のプログラムがPARTの対象となっており、その内2件が「効果的」、4件が「やや効果的」、3件が「まずまず」と評価されている。表5は効果的と評価されたプログラムとその内容である。
表5 PARTで効果的とされたNASAのプログラム
| プログラム名 |
プログラム内容 |
| NASAの天文学・宇宙物理学研究(NASA Astronomy and Astrophysics Research) |
宇宙がどのように始まり、進化してきたか、また物質、エネルギー、空間、時間に限界があるかを理解することを目的とし、データ収集のための無人宇宙探査機を開発・運行させる。 |
| 太陽系探査(Solar System Exploration) |
太陽系の惑星や月などの誕生と進化、地球外生命の存在などを調査するため、無人宇宙探査機を打ち上げ、航行させる。 |
http://www.whitehouse.gov/omb/expectmore/effective.html
(平成18年2月21日 JSPSワシントン研究連絡センター)