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フランスにおける大学再統合の動きについて


2003年に初めて上海交通大学が発表した大学ランキングは、フランス大学関係者にとって極めてショッキングな内容であった。フランスの大学のトップが65番(Pierre and Marie Curie University(Paris 6))と揮わなかったからである。


その理由として、フランスの有識者たちは教育面、研究面のシステム上の問題2点を挙げている。1点目として、フランスの高等教育システムがグランゼコールと大学の2種類に分かれており、グランゼコールでは少数のエリートを養成し、大学ではマス教育をしているという形態上の問題が挙げられる。2点目としては、研究面においても大学やグランゼコール、国立研究機関に分かれていることである。

確かに、双方の研究者が共同ユニットを組むケースは多く、その数は、大学、グランゼコールの持つ約3,000の研究室のうち、1,200が大学と国立研究機関の研究ユニット(UMR)である。しかし、その恩恵に浴さない研究室の方が多い。また、研究ユニットに参加する大学所属の研究者が、その研究成果を論文にまとめた際、署名時に研究資金の出所である研究ユニット名(多くは、CNRSやINSERM等との共同ユニット)のみを記し、所属する大学名を記さない傾向があるなどの弊害を指摘している。


こうした世界大学ランキング結果を踏まえて、国民教育・高等教育・研究省による提案もあり、フランスの大学では、大学統合案が浮上し、統合による規模の拡大を図るとともに、以下の理由により現状を是正しようと考えるようになった。1960年末に総合大学が学問領域等に応じて複数の大学に細分化された経緯もあり、フランスの大学は現在85校、またグランゼコールはエンジニアリングスクールを含めて70校あり、同一地方・市内に大学等の高等教育機関が乱立している状況である。

特に大学においては、外国の学生等第三者にとって、リヨン第1大学と第2大学の違い、或いはパリ第1大学と第8大学の違いが不明瞭であるという不利な条件を抱えており、総合大学を創設することによって、学生に学際的なカリキュラムコースを提供し、世界の大学間競争で優位に立ち、外国の優秀な頭脳の獲得に門戸を開こうとする動きが活発化している。また、統合によって新しい概念を取り込んだ大学の創設が目指され、また、ヨーロッパ内での共通の学位制度であるLMDの導入ともあいまって、「フランスの大学」から「ヨーロッパに開かれた大学」へと転化しつつあるといえる。その動きに先駆け、ストラスブール第1、第2、第3大学は、3大学それぞれの評議会で2009年の大学統合を2007年2月末に正式決定した。3大学の統合によって、4万5千人を超える学生を有する総合大学が生まれる訳である。ストラスブールに続いて、ナンシー、グルノーブル、リヨン、ボルドー、パリでも統合計画を有している。


また、上記大学統合の動きと並行して、アルザス地方では、ミュールーズにあるUniversité de Haute-Alsaceが上記3大学に加わって、PRES Alsace(PRES:Les pôles de recherche et d’enseignement supérieur/研究・高等教育拠点)という地理的に近い公的研究・高等教育機関を集合させて、これらの研究機関間の研究活動を効率化させるために相互援助する拠点を作ることとなった。PRES Alsaceでは、研究・博士課程・教育課程・国際政策・評価開発・学生生活・図書館活動・インターネット環境の8項目についての共同政策を実施することとなった。更にPRES Alsaceには、L’Ecole Nationale du Génie de l’Eau et de l’Environnement de Strasbourg (ENGEES)、L’Institut National des Sciences Appliquées de Strasbourg (INSA)、L’Institut Universitaire de Formation des Maîtres d’Alsace (IUFM)の3つのグランゼコールとEUCOR* に属するスイスのバーゼル大学、ドイツのフライブルグ大学及びカールスルーエ大学も代表者を送ることとなった。このようなPRESによる大学グループ間のプロジェクトは、アルザス地方だけでなく、フランスの他の地方でも企画されている。


*ライン河上流に位置するスイス・ドイツの3大学と、ストラスブールの3大学、ミュールーズの1大学は、1989年にEUCOR (European Confederation of Upper Rhine Universities)を設立し、7大学の学長レベルで定期的会合を行い、同地域内での共通の課題を共同研究したり、教官及び学生の交換プログラムによる流動性の促進を図ったりしている。更に、ESBS(Ecole supérieure de Biotechnologie Strasbourg)というヨーロッパのバイオテクノロジー分野の専門家を養成する共通のグランゼコール(学生はフランス・ドイツ・スイスの3カ国より選抜する)をEUCORの枠内に持っている。


(平成19年3月21日 JSPSストラスブール研究連絡センター)