英国研究者の流動性に関するUUK調査報告書
2008年12月23日、英国大学協会(UUK)は、英国研究者の流動性に関する調査報告書を公表した。本報告書は、欧州連合(EU)加盟国間の研究者の流動性が大きく向上したことについて、論理的解釈を試みており、流動性向上の要因、研究機関及び研究者個人に対するインセンティブに焦点を当てるとともに、流動性向上の障害を抽出し、将来の方策を示している。
1.主な結論
- 研究機関は、研究者の流動性を高めることにより、科学的な探求、異なる研究手法、新たな研究領域の確立等の便益を享受し得る。
- 研究者個人は、新たな経験、新たな研究施設へのアクセス、異なる研究手法等の便益を享受し得る
- 今後、優秀な研究者は、益々流動性のあるキャリアを形成することができるようになり、多くの国の様々な研究機関を移動していくことができる(と見込まれる)
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流動性促進のための多くの施策は、初期の研究者(Early-career researchers)を対象としているが、そのためには経験豊富な研究者(Senior researchers)の交流を促進する必要がある。研究ネットワークを通じた交流等から研究者の交流は生まれるが、特に経験豊富な研究者の交流はネットワーク形成の観点から有効である。一方、初期の研究者はネットワークを通じて経験を積むことの意義が大きい。
- 女性研究者(特に夫や子供等の家族がいる)は、どうしても移動することが困難な傾向にある。また、研究者としてのキャリアを断念するケースもある。
- 年金の国家間の移動性の問題は、依然として、研究者の流動性促進の大きな障害となっている。実効的な解決策が見出されておらず、欧州委員会により引き続き検討されている。
2.その他の興味深い記述
- 英国の研究者は、他の欧州諸国と比較して、国外(他の欧州諸国)への流動性が低い。
一方、他の欧州諸国から英国への流動性は高いため、英国の研究者は、日常的に他国の研究者と接する環境にある。そのため、英国では、研究者の研究キャリア形成の観点において、国外に出て研鑽を積むインセンティブが高まっていない。
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英国が、他の欧州諸国の研究者を引き付けている要因としては、大学のポスト公募が海外にもオープンで透明性があること、任期制ポストがあること、給与・雇用条件が東欧諸国よりもよいこと、公用語が英語のため言語的な障害が少ないこと、スキル向上のための支援が充実していることなどがあげられる。
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東欧諸国では、国内のポスト及び研究資金の不足等から、多くの研究者が国外に流出している。東欧諸国の大学等では、海外で活躍する自国籍の研究者に、無報酬の名誉的なポストを与えている例もあり、優秀な研究者とのリンクを保持するためには有効である。ただし、ポストの透明性の観点では議論がある。
(JSPSロンドン研究連絡センター発行『JSPS London Newsletter No.20(April 2009)』より)