新移民・入国管理制度に伴う留学生ビザ「Tier 4」の導入
英国では、入国管理制度が45年ぶりに大規模改正されている最中である。2008年5月以降、内務省国境庁(Home Office, The UK Border Agency)により、新移民・入国管理制度が漸次導入されているが、2008年7月30日に留学生ビザ「Tier 4」に関する趣旨書が公表されたので、関連する情報を掲載する。
【参考:P.22 JETRO法務労務セミナー(英国の新移民・入国管理制度)】
【なお、この新制度については、日々刻々情報が更新されているので、最新詳細情報は下記URLの公式サイトにて確認されたい。】
1.新移民・入国管理制度の概要
新移民・入国管理制度では、主に以下の3点の改正が行われている。
| (1) |
多岐に亘っていた英国入国カテゴリーが5つのTier(階層)に整理統合されたこと(下表参照)。 |
| (2) |
外国人を受け入れる事業所・大学等はスポンサーシップを取得するとともに、入国者の管理に責任を持つ必要があること。 |
| (3) |
ビザ申請者は必要なポイントを獲得する必要があること。 |
(参考) 新移民・入国管理制度において導入されるTier(階層)
| Tier 1 |
高度技能労働者(科学者、企業家など) |
| Tier 2 |
熟練労働者(教師、看護師など) |
| Tier 3 |
一時的な労働力不足を補う非熟練労働者 |
| Tier 4 |
学生 |
| Tier 5 |
ユースモビリティ及び、公演のための音楽家など一時的な労働者
(政府系機関駐在員含む)
|
2.留学生ビザ「Tier 4」概要(国境庁趣旨書から)
入国法改正に際し、Liam Byrne国境庁閣外大臣が留学生ビザ「Tier 4」趣旨書にて発表した概要は以下のとおり。
- 教育機関は、学生の選考及び入国後の学生管理に、より多くの責任を負う。
- 国境庁の要求が満たせない教育機関には、留学生の受入れが認められない。
- 教育機関は、ライセンスを取得するため、確かな認証を受けた機関であることを証明する必要がある。これは、不適正な機関を排除することにも繋がる。
- 学生の出席が認められない場合は、教育機関は国境庁に速やかに報告する必要がある。
- 学生は、入学する教育機関を国境庁に報告する必要があり、在籍機関を変更する際は、国境庁への事前報告が必要となる。
- 教育機関は、その学生の卒業時に、その課程に応じた学力を身につけさせることが要求される。
- 就労を含む課程においては、少なくとも50%は授業とし、就労は50%未満でなければならない。
- 学生は、課程入学及び留学に必要な資金を立証できれば、ポイントを付与される。
- この新制度では、ビザ申請学生は申請前にポイント計算が可能となる。
- 国境庁は、ビザ申請者の指紋を採取する。入国後に学生は、生体認証IDカードを取得することになる。
- この制度は、教育機関関係者との協議を重ねて構築された。今後も、利害関係者との協議を続けていく。
Tier 4ポイント要件(合計40ポイントが必要)
| ポイントが認められる条件 |
ポイント |
入学許可書
(学生が適切なレベルの課程を遂行できる能力及び意思があると認められる際に発行)
|
30 |
【12か月未満の課程】 月額800ポンドの生活費及び授業料
【12か月以上の課程】 初年度9,600ポンドの生活費及び授業料
|
10 |
3.UKCISAから留学生へのアドバイス
UKCISA(留学生交流促進を図る英国公的機関)は、国境庁の発表を受け、今後英国への留学を考えている留学生に、以下のようなアドバイスをウェブサイト上に掲載している。
- 新制度の下では、渡英してからの大学変更は困難が予想されるため、慎重に選択を行うこと。
- 学部レベルにおいて、3年間以上の在籍期間が認められると期待しないこと。
- 50%以上が就労関係で占められている課程は避けること。
- 出席が認められないと、当局に報告されることがあるので注意すること。
- 学業に専念し、良い成績が得られるよう努力すること。
- 必要な額の生活費、授業料を確保しておくこと。
- エージェントに任せる際も、申請書類は自分で確認すること。誤った書類が提出された場合、入国を10年間拒否されることがあり得る。
- アルバイトが認められている場合も、原則週20時間までであるので、注意すること。
4.新制度に関する英国大学協会(UUK)のコメントについて
UUKは、この新制度に関し、歓迎の意を発表している。以下、Diana Warwick, Chief Executive of UUKのコメントを記す。
- 大学はこの新制度の情報を待ちわびており、今回の情報は、新制度の諸条件を知るために大変有益である。
- 大学はこの新制度の方向性に同意しており、学生ビザが特定の受入れ機関とリンクするこの計画を受け入れている。しかしながら、今後の留学生及び大学側関係者が理解するためには十分な時間が必要であり、また、このポイント制の軸となる情報システムの厳格なテストが要求される。
- UUKは、教育機関に対する厳格なライセンス導入を歓迎する。厳格なルール導入は、真っ当な留学生が疑わしい機関に騙されるのを防ぐ効果が期待できる。
- 卒業後就業制の導入も歓迎する。これは、留学生に卒業後2年間の就労を認めるものである。留学生は、彼らの学業を就労経験により確固たるものにしたいと希望しており、この卒業後就業制は、英国を留学生にとって魅力ある選択肢とするのに有益である。
- UUKは、国境庁がこの計画を教育部門と改善していく要望を持っていることを歓迎したい。UUKは、学生にとって有益かつ分かりやすいプロセスにより英国留学が可能な制度になるよう、国境庁と必要な協議を進めていく準備がある。
【関連URL】
・新移民・入国管理制度「ポイント制」概要(国境庁)
・Tier 4について(国境庁)
・Tier 4 Statement of Intent(国境庁趣旨書)
・留学生に対するアドバイス(UKCISA)
・UUKコメント
(JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.18(平成20年10月発行)掲載)