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各リサーチカウンシルUKの今後の計画


 12月11日(火)付で、各リサーチカウンシルが英国2008-2010年度複数年度予算に対応し、今後の計画を発表した。以下に、工学・自然科学研究会議(Engineering and Physical Sciences Research Council: EPSRC)、医学研究会議(Medical Research Council: MRC)、科学技術設備会議(Science and Technology Facilities Council: STFC)の計画の概要を示す。


1.工学・自然科学研究会議(EPSRC)の今後の計画

(EPSRC Delivery Plan 2008/09 to 2010/11)

  • 科学技術学術予算を今後2011年までに3倍とする。英国は世界をリードする研究先進国であるが、その維持・発展のためにドイツとフランスの研究者が獲得する研究費の合計額以上をイギリスの研究者に提供する。
    1. 科学的技術革新と経済的利益の双方を生み出す新たな知識
    2. 現代経済を牽引する能力ある人材の供給
  • 計画の柱は以下のとおり
    (1)社会及び経済が直面している課題への対応
    1. エネルギー
      発電と供給、エネルギーの輸送、代替燃料といった基礎研究を大幅に支援する。
    2. ディジタル経済
      情報通信分野の研究成果、健康管理や輸送といった産業、さらに、経済を下支えし個人の生活の質を向上させるような創造的な産業を結びつける。
    3. ナノサイエンス
      基礎から応用まで首尾一貫した研究課題を戦略的に設定する。
    4. 次世代の健康管理
      工学及び自然科学における研究成果を診療サービス等に活かすための研究課題を設定する。

    (2)研究者の視野の変化
     「グランド・チャレンジ」のコンセプトにより、特定の目標に向け研究活動を加速させる。研究者の創意により課題を設定するものとEPSRCが課題を設定するものを立ち上げる。後者については、(1)で挙げた課題を配慮して設定する。
     「変化力のある研究(transformative research※1)」が、型を破る研究活動を追求するものであるという理解増進を図る。
     さらに研究者の視野を従来のリサーチ・ファンディング・モデルから、より大きなスケールで、より長期的で、より野心的な研究プログラムへ移行することを促進する。

    (3)次世代の人材の確かな供給
    引き続き博士課程の学生の訓練に対する支援を中心に実施するとともに、博士トレーニングセンター(Doctoral Training Centre※2)をさらに活用するなどして、@で挙げた課題に焦点を当てた投資を並行して実施する。

    (4)活力があり持続可能な研究環境の創出
    創造性を助長、奨励するため、特に研究者の創意による野心的な研究課題に対して支援する。

    (5)より良い開発に向けたステップアップ
     ニーズに基づき実施している博士課程の学生の訓練の範囲を広げる。例えば、工学博士課程のコンセプトを拡張することで、ビジネスにおける技術革新のニーズにより近い技能を訓練することができるようになると考えている。
     また、知識移転COEや産業界における博士の訓練機会(Doctoral follow-on opportunities)などといったいくつかの枠組みに焦点を絞り産学連携に投資する。
    【より良い開発を達成するためのキーとなる連携】
    • エネルギー技術研究所 21百万ポンドを投資する。
    • 技術戦略委員会 最低45百万ポンドを支援する。
    • 国立健康研究所 医学研究会議(MRC)とともに、密接に協力していく。
    • 産業界 キーとなる企業と戦略的に連携し、研究と利用者との橋渡しを実施するために引き続き投資していく。
    ※1 2007年に国家科学委員会(National Science Board)が出した報告書「Enhancing Support of Transformative Research at the National Science Foundation」において、「重要な科学的あるいは工学的概念に関する我々の理解を根本的に変え、または新しいパラダイムあるいは科学や工学の新分野の創出を先導するようなアイデアによって引き起こされる研究」と定義されている。

    ※2 現代医学及び生物学は数学者、物理学者、科学者、技術者などからの情報を必要とする局面が多数あるため、適切に訓練された人材を供給することを目的として以下のDoctoral Training Centreを設置している。ポスドクを訓練するための新しい学際的なアプローチが取られている。

    Doctoral Training Centre 設置している大学
    Bio-nanotechnology, medical imaging and bioinformatics University of Oxford
    Chemical biology Imperial College London
    Maths and physics in the life sciences and experimental biolog University College London
    Medical devices and related materials University of Strathclyde
    Molecular organisation and assembly in cells University of Warwick
    Neuroinformatics University of Edinburgh
    Physical methods and life sciences Universities of Leeds and Sheffield
    Proteomic technologies Glasgow, Edinburgh and Dundee
    Proteomic technologies Glasgow, Edinburgh and Dundee
    Targeted therapeutics University of Nottingham
    Systems biology three centres based at the Universities of Manchester, Oxford and Warwick

2.医学研究会議(MRC)の今後の計画

(MRC Delivery Plan 2008/09-2010/11)
  • 2010年度までに技術革新・大学・技能省(DIUS)から6億8200万ポンドの予算が配分予定
  • 計画の柱は以下のとおり
    (1)知の創出及び継承
    • 次の大項目の下、優先度の高い研究分野を設定
      1. トランスレーショナルリサーチの推進
        実験医学の推進、再生医学・肝細胞研究、方法論の開発、評価及び治験、公衆衛生及び集団科学、情報通信技術を活用した医学研究(E-Health)の推進
      2. 研究会議横断型学際領域の推進
        老化、環境の変化に伴う生活に関する研究、情報通信技術の活用、セキュリティへの世界的脅威、ナノサイエンス、エネルギーに関して、今後MRCとしてもFundingや研究プログラムを設定すること等により積極的に関与
      3. MRC研究理事会の助言に基づく研究の推進
        基礎研究の推進、健康に関するアフリカ研究を主導・アフリカ研究機関の強化、集団科学の推進

(2)人材育成

本計画期間内は、トランスレーショナルリサーチに焦点を当て、人材育成のための支援を強化


(3)公的機関との協力・国際的活動の拡充・社会貢献

 国立健康研究所(National Institute for Health Research: NIHR)や技術戦略会議(Technology Strategy Board: TSB)との連携強化、中国を基軸にした政府先導型科学橋渡しプログラム(Government-initiative Science Bridge programme)の策定、研究と健康との関係を広く社会に知らしめるための支援

(4)研究基盤及び研究能力の強化

国立医学研究所(National Institute for Medical Research: NIMR)、臨床科学センター(Clinical Science Centre)の新設、分子生物学研究所(Laboratory for Molecular Biology: LMB)の建物新築のほか、ガンビア及びウガンダの研究ユニット、RCUKの海外センターへの貢献といった海外の研究基盤への投資等

3.科学技術設備会議(STFC)の今後の計画

(Delivery Plan 2008/9-2011/12)
  • 今後3年間で約19億ポンドの予算が配分予定
  • 今後の方策は以下のとおり
    (1)各研究分野における今後の計画
    1. 素粒子物理学
       CERNのLarge Hadron Collider(LHC)の開発が最優先課題。国際リニアコライダー(International Linear Collider)への投資を中止。
    2. 核物理学
       引き続き投資を実施。
    3. 素粒子宇宙物理学
       現在のプロジェクトにおける投資額を再検討。高エネルギーガンマ線実験への投資を中止。
    4. 天文学
       欧州及び諸外国の関係機関との協力の下、極大天体望遠鏡(Extremely Large Telescope)及び次世代電波望遠鏡(the Square Kilometre Array)の設計に投資。建設への投資は2010年頃に判断。8m級ジェミニ望遠鏡への投資を保留。SCUBA2の開発のためジェームス・クラーク・マクスウェル天文台(JCMT)に引き続き投資。太陽地球系物理学関係の地上設置施設に対する支援を中止。
    5. 宇宙探査
       国際宇宙探査戦略の一環として、米国と協力の下、宇宙探査へ積極的に関与。
    6. 光源施設
       Diamond光源施設の第2期工事を実施。2011年内にビームライン14本及びテスト用ビームライン1本を建設。欧州シンクロトロン放射光施設(European Synchrotron Radiation Facility)のビームラインの改良等の7年計画を検討。並行して、欧州X線自由電子レーザーの建設(独ハンブルク)に参画。
    7. 中性子散乱
       世界最先端中性子実験施設であるISIS及びILLの改良に投資。並行して、欧州高出力レーザーエネルギー研究施設(HiPER)の建設の可能性を探るための研究開発を実施。
    8. レーザー
       アストラ・ジェミニ・レーザーシステムの開発を実施。
    (2)知識の交流を促し、経済インパクトを与えるための方策
    1. ハーウェル(Harwell)、ダールスベリー(Daresbury)の両科学・技術革新キャンパスの充実
    2. コンピュータシミュレーションやデータ解析等の専門的技術を提供し課題解決のワンストップサービスを実施するImaging Solutions Centre、新規の計算科学施設であるHartree Centre、物質の分析、画像化のためのJoint Institute for Material Design、各種センサーの製造、性能評価を支援するDetector Systems Centreからなる技術ゲートウェイセンター(Technology Gateway Centres)の設立
    3. 技術戦略会議(TSB)及び関係機関との協力
    4. 学際分野、研究会議横断プログラムへの貢献
    5. 英国国立宇宙センター(BNSC)との協力による国家宇宙技術プログラムへの参画
    6. 科学・技術革新リソースセンター(Science and Innovation Resource Centre)の設立、科学、技術及び工学離れを防ぐため国家レベル、地域レベルでの小中学校と連携、スチューデントシップの充実
    7. 国内外における動向の配慮
    8. 技術商業化の発掘等を目的として2002年に設立されたCLIK(Central Laboratory Innovation and Knowledge Transfer Ltd)の有効活用
    9. 英国内及び欧州の関係施設との協力
    10. 知識移転・流通のために設定された、産業化支援ファンディングスキーム(PIPSS)の充実高等教育機関へのファンディング
    11. 経済効果の観測


(JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.15(平成20年1月発行)掲載)