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英国新設大学の海外展開・大学の国際化戦略


 2007年5月3・4日に英国大学調査の用務で訪問した York St John Universityの海外展開・大学の国際化戦略について報告する。

 York St John Universityは、英国の新設大学であり、2006年9月にUniversity CharterによりLeeds Universityの組織構成上の1つのカレッジ(College)から独立し、単独で高等教育機関となった。

 同大学は、地方の小規模かつ人文系を中心とする専門課程を要し、大学の運営経費における研究費の割合が非常に低く、授業料収入の割合が高い特徴がある。 したがって、大学の国際戦略もその特性を活かしたもととなっているのではないだろうか。

 以下、新設、小規模大学の国際展開の一例として、主立った事項の概略を取り上げる。


◆トップダウンでの大学国際化

 大学のプレゼンス向上・留学生獲得推進方策の一環として、大学設置にあたり、大学の国際戦略に関するポリシーペーパーである「Internationalisation Strategy 2007-2012」を作成している。大学が設定した国際化の柱に基づいて、各部門に国際化に関するアクションプラン・達成目標を課し、短期間での大学内の「内なる国際化」を図ることを目的としている。

 大学の国際課が学長のトップダウンのもと作成した同ペーパーは、6つの主要目標として
(1)大学の国際化に寄与するカリキュラム開発
(2)研究者・学生の移動性推進施策
(3)研究教育面での基準向上
(4)留学生受入推進の各部門の支援体制構築
(5)留学生の割合向上
(6)同大学の教育研究プログラム活用のための海外とのパートナーシップの形成
を掲げている。また、全個別事項に対して数値・年次目標を定め、大学設置後、短期間に実効性を高めるよう努めているとのこと。

 合わせて、同大学では、留学生受入方策上の優先国・地域を設け、国際交流事業に対する効率よい大学投資を行うとともに、戦略プラン・大学事業ともに、リクルートメント活動、カリキュラム開発、受入後の学生サービス支援事業、大学教職員のスタッフ・ディベロップメント等と関連づけをし、包括的なプログラム展開を志している。


◆海外の教育課程(オフショア・プログラム)の設置

 同大学では、留学生受入促進策として、地域・学部・修士等の対象毎に、オフショア・プログラムを展開している。以下に、目的別オフショア・プログラムの事例を挙げる。



・ファウンデーションコース

 本大学の場合、学部課程の留学生増を優先課題とし、学部課程準備コースを中国等に設置し、高等教育課程に必要な英語力・基礎学力の育成並びに本大学への入学リクルートメントを実施している。 ファウンデーションコースの実施体制については、授業担当等教育指導は、主に、英国高等教育を修了したコース設置国現地の教員が担当し、本大学は、コース運営体制の管理・監査を担当している。


・York St John University大学院(英国)国際学修士号取得課程(ディスタンスラーニングプログラム)

 Leeds Universityカレッジ当時から、明治大学と提携し、日本人向けディスタンス・ラーニング・プログラムを実施している。 (2004年度より開始。) 同大学の運営担当によると、「国際展開上重点地域と位置づけられている日本との教育ネットワーク・大学広報の観点から、日英高等教育機関のパートナーシップを通して、大学のプレゼンス向上に寄与している」とのこと。 また、「大学院等正規課程・非正規課程問わず生涯教育プログラムへのニーズが高まっている日本において、同遠隔教育プログラムの実施は、日英間の個々の協定締結等に比較し、国際連携協力上、大学の特色を打ち出す上でも有効ではないか」とのこと。


・現職教員向け教育大学院課程

 教員養成課程を要する教育・人文系大学の特色を生かし、ケニア・バーレーン2カ国に現職教員向け教育大学課程を設置し、現職教員に対する高等教育・職能教育の充実を図っている。


◆海外拠点の設置状況

 パキスタン地方公共団体と協力し、地方公共団体の建物・土地を賃借したオフィスの設置。パキスタンは中国等と並び同大学の留学生受入政策上重点地域に位置づけられ、ファウンデーション・コースの設置を検討していることから、海外拠点オフィスの設置が決定したとのこと。
なお、「Internationalisation Strategy 2007-2012」によれば、2010年までに計2カ所の海外拠点設置を計画している。


◆海外高等教育研究機関の誘致

 2008年に設置予定の大学建物スペース一部を海外高等教育機関オフィスや海外研究者の研究室として貸与することを検討・計画・一部誘致活動中とのことで、大学施設利用の観点からも、国際交流推進に配慮した取組を行っていることが分かる。

 また、通常、英国の大学において、学外者の施設利用は有料であるケースが多いが、本大学では、研究室・研究施設の使用料を無料にするなど研究者受入支援策を打ち出し、英国の他大学との差別化を図っている。


(JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.13(平成19年7月発行)掲載)