英国工学物理研究会議(EPSRC)戦略プランの発表2006年11月2日、英国工学物理研究会議(ESPRC)の年次総会がロンドンで開催され、JSPSロンドン研究連絡センターが出席した。 1.冒頭、EPSRCの議長であるProfessor Dame Julia Higginsより、EPSRC戦略プラン −明日の課題に対するヴィジョンの共有に向けて− が発表され、以下の説明がなされた。 ・ 戦略プランを考える上でのキーポイントは、研究、人材養成、知識移転を促進させるファンディングにより、英国の将来の難題に対処することである。 ・ 戦略プランの策定に当たっては、EPSRCの戦略策定アドバイザリー・チーム、技術提言パネル、ユーザー・パネル、EPSRCの評議会などで繰返し協議した。また、産業界や関係機関に意見を求め、インターネット上からも多く意見が出され、参考にした。 ・ 今後、目標をどのように達成するかを示した、今後数年間の実施計画を策定する予定。 ・ 戦略プランの中では、以下の7つの重点目標を挙げている。 (1) 研究内容及びその実施過程において、創造性と冒険心を刺激・促進 (2) 英国の繁栄のため、最も才能ある研究者を、キャリアの全ての段階で支援 (3) 研究と産業界の双方向の知識移転を実現する協力関係の構築 (4) 学問分野、研究会議、大学間の境界をまたがった研究を支援、促進 (5) 研究費の出資者、社会、産業界、大学等による、今後の主要な課題についてのヴィジョンの共有 (6) 英国の社会と経済の繁栄と、国際競争力の強化に努力を集中することへの理解の促進 (7) 世界のリーダーとして認められる科学者、技術者を英国で育成し、英国で活動してもらうことの促進 ・ 上記の重点目標を達成するために5つの戦略を掲げ、以下の取組を行っている。 (1) パートナーとの協力 ・フィリップス社と、次世代のバイオ・メディカル診断技術を開発する戦略協定を締結。これに基づき、インペリアルカレッジ、ケンブリッジにある先端的な研究所や、オランダ、ドイツ、英国にあるフィリップス社の施設において研究、人材育成が行われる。 ・Life Sciences Interface Doctoral Training Centresは、工学物理研究会議(EPSRC)、バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)、医学研究会議(MRC)が協力して支援している、分野横断的な人材を養成するセンターである。産業界も協力しており、複数の大学が共同で運営しているセンターもある。 ・個々の研究者による産学共同研究を促進している。 (2) 長期間研究できる資金を提供 ・実験物理学のような分野では、10年以上もの間継続して同じ研究者にグラントを支給。 (3) 研究者の養成 ・研究者になったばかりの人材、指導的な研究者になる人材をサポートすることが重要。例えば、博士課程学生に、産業界での研究経験を提供するCollaborative Training Accounts(CASE) studentships、国際的に通用する独立した研究者を育てるAdvanced Research Fellowship、国際的にも名声のある研究者に、研究に専念できる環境を提供するSenior Research Fellowshipsなどがある。 (4) 壮大な課題に挑戦している研究者へのサポート (5) 国際的な流動性 Professor Dame Julia Higginsより、「ファンディングの柔軟性を保つこと、国際的なレベルでの協力が重要であると認識することは、国際協力をサポートする特別なプログラムよりも生産的だと思う」と述べられた。 2.次に、EPSRCの事務総長であるProfessor John O’Reillyより、EPSRCの全体像について、以下の説明がなされた。 ・ EPSRCの戦略プランにおける我々のヴィジョンは、研究を実施し、イノベーションを創出する上で、英国が世界で最も活動的で刺激的な環境になることである。 ・ ピアレビューは、EPSRCのコアとなる優れた研究をサポートする上で必要不可欠である。 ・ 各界関係者と共有すべきヴィジョンを検討するため、5年前に戦略策定アドバイザリー・チームを設置した。また、産業界と戦略的なパートナーシップを構築するためビジネスセクター・チームを導入したことにより、産業界との協力関係が高まった。 ・ 研究者に十分な環境を提供する面では、世界的な研究グループにリサーチスタッフを供給し、長期間優れた研究を行う環境を提供するPlatform Grantsが良い例である。 ・ 2006年3月に貿易産業省(DTI)より発表された「科学・イノベーション投資計画(2004-2014):次のステップ」では、健康分野の研究開発に多額の資金を投入することとされており、保健省は、EPSRCに関係する多くの研究をサポートするだろう。 ・ 各研究会議が、事務処理部門においてより密接に連携して、効率的に仕事を行えるよう、財源、人材、情報を収集する共同のサービスセンターを設置した。 ・ 新しい戦略プランにおいては、まず、ハイリスク、ハイインパクトの研究をいかにサポートするか考えなければならない。ピアレビューにおいて、5〜10%しか採択できなくても、このような研究はサポートされるチャンスがあるべきである。 ・ 社会における科学の関心を高めるため、ソサイエタル・イシュー・パネルを新しく設立した。また、以前より、メディアにおいて、研究を分かりやすく説明する先導的研究者を、Senior Media Fellowshipsにより支援している。さらに、学校の生徒に、科学に対して興味を持ってもらうなど、科学について広く理解してもらうため、他の研究会議と協力して、RCUK Science in Societyと称した様々な活動を行っている。 ・ EPSRCの将来計画では、人材養成を中心に置いている。工学物理科学においては、博士課程の学生の育成と知識移転が必要不可欠であり、これにより、経済や、その他の科学の分野にとっての基盤を構築することを目指している。これまで、エネルギー、ナノサイエンス、ナノテクノロジー、デジタルエコノミーが重点領域であったが、今後、健康関係の分野は、継続的に重要性が強調されるだろう。なお、エネルギー関係の研究は、EPSRCが研究会議の中でリーダーシップをとることとされている。 ・ 知識移転を促進させるため、模範的な活動や、実現可能性のある事業を大学に紹介するパイロット事業を最近立ち上げた。 3.この他、ゲストスピーカーの講演があり、オックスフォード大学のマイケル・ブラッディー教授より、EPSRCのサポートもあって、6つの企業を創業したことが紹介され、産学連携に対して否定的意見を持つ聴衆は、それを打破して欲しいと訴えかけられた。また、ブラッディー教授とも協力している、ガイダンス株式会社の創設者であるマルコム・ロバート博士より、1991年の創設以来、大学の技術を世界に通じる製品に活用していることが紹介された。 (JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.11(平成19年3月発行)掲載) |








