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イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)へのヒアリング
−日本建築学会キャンパス計画小委員会 英国の大学・都市連携によるキャンパス整備と都市地域再生の調査より−


 2006年10月14日〜22日にかけて、日本建築学会キャンパス計画小委員会が、英国の大学・都市連携によるキャンパス整備と都市地域再生の事例調査を行った。その中で、10月18日に、イングランド高等教育財政カウンシル(Higher Education Funding Council for England(HEFCE))のMs Jannette Cheong、Head of International Collaboration and Development、及びMr Andrew Smith、Head of Estates and Sustainable Developmentより、英国の高等教育システムや、高等教育機関の施設整備、HECFEの取組みについてヒアリングを行い、JSPSロンドン研究連絡センターも同席した。その概要は以下の通り。


1.初めに、Ms Jannette Cheong、Head of International Collaboration and Developmentより、英国の高等機関システムとHEFCEの取組みの概要ついて、以下の説明がなされた。

・ 高等教育機関に対する公的資金は、英国の4つの地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)に置かれ、政府から独立した機関である高等教育財政カウンシルが、教育、研究に対して配分。政府は配分方法に対して意見することはできない。

・ イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)は、276の高等教育機関・研究機関(86の大学、44の高等教育カレッジ等、146の継続教育カレッジ)に教育、研究のための資金を配分。説明責任とValue for Moneyの考え方が重要であると考えている。

・ 大学は、地域的、国家的、国際的な役割を持つ、公共の資金が投入された独立の機関であり、幅広い収入源から自由に資金を調達できる(高等教育全体で見ると、公的資金は全体の6割)。大学によって資金受入内訳が異なり、一部の大学では80%以上の資金を公的機関から受け入れている一方、11〜12%しか公的資金を受け入れていない機関もある。

・ 英国の高等教育のシステムでは、大学の自治と説明責任のバランスが重要であり、次のように考える。(1)学問については、大学がコースを決め、その質と標準を維持するために説明責任がある。(2)財務については、資金調達に関する自治があり、同時に財務に関する説明責任として様々な要求事項がある。(3)マネジメントに関する自治も考える必要があり、説明責任がある。学問と財務に関する説明責任は、内部、外部に対しての2つに分かれる。

・ HEFCEは、大学の自治を保障するため、基本的には使途を特定しないブロック・グラントを配分している。大学に生じた特別な問題を解決する際は、ブロック・グラントでなく特別な資金を配分するが、どのように問題解決をするか政府の厳しいチェックを受ける。


2.次に、Mr Andrew Smith、Head of Estates and Sustainable Developmentより、高等教育機関の施設整備の取組みの概要について、以下の説明がなされた。

・ HEFCEによる2004-08年度の施設予算は約30億ポンド。ほとんどの各高等教育機関への配分額は、計算式に基づき配分され、教育研究面の配分額と額が比例する。また、各機関の戦略を見て、良い取組みについては資金提供するとともに、全機関のプロジェクトをレビューしている。

・ 各高等教育機関は、その他、施設整備のための資金について、銀行からの借入(HEFCEの規則で上限がある)、チャリティーグループからの寄付(研究所の建設費の他、最近は運営費やメンテナンス費にも寄付)、個人からの寄付(卒業生、成功者)により獲得。

・ スペースマネージメントは、人、金、建物の3本立てで考えることが大事。この数年間で学生は増えたが、大学の施設は非効率的に使われており、まず、建設工事費とメンテナンス費を削減することで効率化を図らなくてはならない。その他、セントラル・タイムテーブリング、スペースチャージ、質の高いスペースの効率的な利用、将来のためのスペースの確保が重要。このような視点から、近年、大学の施設を充実させることの必要性が再認識されており、HEFCEでは、グッド・プラクティスの推進に取組んでいる。

・ 建物のデザインの質について調査している。学生、スタッフを勧誘する上で、どの程度満足しているかを考える際の参考となるようにしている。

・ 大学内における、施設に対するユーザーの様々な要求を評価する仕組みを策定している大学がある。HEFCEもこのような取組を推進している。

・ 持続可能な開発として、(1)持続性(財政的に持続可能な物件を持つこと)、(2)社会性(大学に通う学生の幅を広げること)、(3)環境面(生物的多様性(キャンパス内で様々な動植物を増やすこと)、交通関係の改善、エネルギー問題の改善)について良い業績を上げた機関には、賞を授与したり、資金を追加配分している。


3.質疑応答により、Ms Jannette Cheong 、Mr Andrew Smithから以下の説明がなされた。

・ これまで、研究に対して資金を配分する機関は、実際にかかるコストより少ない額を配分していたため、大学は研究を行う度に赤字になっていた。これを改善するためにfull economic costingというシステムを導入した。研究そのものの金額だけでなく、スタッフ経費や施設経費など関係する全ての経費を把握するシステムである。研究についてはほぼ終了しており、次は教育面についてのシステムの構築を検討している。

・ 英国の高等教育機関の将来の課題としては、教育に対する投資に関して、世界クラスの高等教育システムを構築することではないか。世界クラスの大学はどの国にも1校や2校はあるが、公的資金だけでなく、企業や個人からの投資も集めるなど、全てのポテンシャルを最大限に活かした世界クラスのシステムを作り上げることが必要だろう。

・ 最近、「パートナーシップ」が重要であると考えている。教育と研究の質、スタンダードを最高のレベルにするためには、学問、財務、マネジメントについて、全ての面からの支援を総動員することが必要。さらに、大学の中に留まることなく、コミュニティと関わり、社会に向かって発信し、全ての市民のポテンシャルも最大限利用することが重要。

・ HEFCEによる公的資金の割合は低くなってきおり、様々な方法で資金が獲得されてきているが、これに関しては大きな議論の余地がある。

・ 地域に対する大学の役割の評価に関しては、OECDプロジェクトの中で、高等教育機関の地域開発に対する貢献度の査定について研究がなされている。英国では6年前に、資金配分の際に、教育と研究のみならず、コミュニティも考慮に入れるべきとの議論がなされた(Third streaming activity)。その後、全国調査により、大学は社会貢献していることが分かったが、さらに取組めることがあると考えられ、HEFCEは貿易産業省と協力し、教育、研究だけでなく、Third streaming activityに対しても共同支援することを検討している。このように、大学の潜在能力、可能性を拡大する方向で資金を使用している。

・ 大学の中のリーダーシップ、マネジメントの強化のために、2年前にリーダーシップ財団が設立された。英国では、あらゆる学校において理事の存在が大きいが、現在、給料をもらっていない。質の高い理事を集めるために給料を払うべきか、議論となっている。

・ 大学の授業料は、最高で年間3000ポンドとなっており、親の収入の額に従って支払われる。1/3は3000ポンド支払い、1/3は部分的に支払っている。残り1/3は支払っていない状況である。


(JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.11(平成19年3月発行)掲載)