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在英日本人研究者会議 (Conference for Bridging Japan and the UK)


 2006年2月17日にロンドンにおいて、大学その他公的研究機関で研究に従事している在英の日本人研究者が参加する情報交換の場を提供するため、“Conference for Bridging Japan and the UK”(日本学術振興会ロンドン研究連絡センター主催「在英日本人研究者会議」)を開催した。今回参加した研究者は、自然科学・工学系が専門で、自分の研究室を持っている方から、JSPS海外特別研究員まで幅広い層の方である(計16名)。

 会議では、柳田博明JSPS学術システム研究センター副所長が、ロンドン研究連絡センターの初代所長として英国で活動した経験や、英国との研究交流の経験について紹介した後、参加した各研究者から自己紹介がなされた。

 その後、配布した「諮問第5号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(平成17年12月27日 総合科学技術会議)」の内容も踏まえ、日本の科学技術に関する制度等について議論がなされ、政策、施策、具体的な制度を検討する際に大変参考になる貴重な意見が数多く出された。その概要は以下の通りである。


1.研究者の創造性を高める研究環境づくりの促進

  •  日本では「ポスドク1万人計画」が推進されており、日本の研究成果の向上に寄与していると思うが、30代半ば以降に応募できるフェローシップ制度は無く、大学のポストは限られているため、研究する場所を見つけられない研究者がかなり多く大きな問題となっている。ポスドクの人材養成を促進するのであれば、その先のキャリアパスも見据えた政策を立案して欲しい。

  •  一方、ポスドクに対するフェローシップ制度の年齢制限等は、ある年齢までに独立の見込みのないポスドクには、別なキャリアパスに進むことを促すために必要であり、30代半ば以降に応募できるフェローシップ制度は、例外を除いて独立した研究者のみを対象とすべきとの意見も出された。

  •  英国の大学では、キャリアチェンジする方法を教えるセミナーを開催するなど、研究する場所を見つけられない研究者や他の職業で自分の能力を生かそうと考えているポスドク等を対象としたサポートが充実している。また、キャリア充実の観点では、CVの書き方から、メディアとの受け答え方を教えるもの、「女性研究者としてどのように研究活動を続けていくか」といったテーマまで、数多くのセミナーが開かれている。

  •  ポスドクに対するフェローシップ制度の支援期間、年齢制限については、途中で研究分野を変えた人や、時間の要するプロジェクトに取組んでいる人には、その分年齢制限等を緩和できるよう配慮すると効果的である。

  •  日本の大学は、特に医学系では、大きな組織の下で研究をする環境であり、教授の下にいないと研究費を獲得できず、若手にとっては海外の方が研究しやすい。講座制を廃止するか、あるいは、助教授、助手にlast authorなどを保証しないと若手のモチベーションがあがらず、人材がさらに流出するだろう。

  •  英国では、優れた研究者には、シニアなレベルまでサポートしている。例えば、医学系の場合、フェローシップ制度が充実しており、the Biomedical Charities※1、Research Councils、the Royal Societyはそれぞれ、学生からシニアな研究者まで、様々な段階の研究者を対象としたフェローシップ制度を持っている(大学院、ポスドクの他、その後のキャリアに対しても、初期、中期、シニアの3段階のフェローシップがある※2)。段階が上になるに連れ、採択者数は減っていくが、優れた研究者の能力をさらに高めていく観点からは、このシステムは非常に良い。

    ※1 例えば、the Biomedical Charities の1つであるCancer Research UKでは、3〜6年間のポスドクを経験した研究者を対象に、独立した研究環境(本人、ポスドク、技官の給料、研究費)を6年間提供する“Career Development Fellowship”というフェローシップ制度があり、それが終了しても、競争率は厳しいが、6年間サポートする“Senior Cancer Research Fellowship”という制度に応募できる。
    http://science.cancerresearchuk.org/gapp/grantapplications/tcdb/?version=1(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif')参照

    ※2 “Academy of Medical to succeed (The Academy of Medical Sciences、 July 2005)”P39参照
    http://www.acmedsci.ac.uk/index.php?pid=48&prid=31#description(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif')

  •  英国における研究者の創造性を高める運営システムを構築している研究所としては、12名のノーベル賞受賞者を輩出した医学研究会議の分子生物学研究所(Medical Research Council(MRC) Laboratory of Molecular Biology)が挙げられる。ノーベル賞を受賞した研究の仕事は、30歳代以下の若い時の研究である場合も多く、20歳代の場合もある。当研究所は、優秀な若い研究者を見つけ、研究成果がすぐに出なくても援助し続けられるのに最適な体制を構築している。
     具体的には、第一に、独創的な研究テーマを持った、30歳前後の若手研究者を独立した研究グループのリーダーとして雇っていること、第二に、長期プロジェクトにたずさわりすぐに業績の出ない人でも、部門長や所長の判断で長期に渡ってサポートすることが出来ること、第三に、5年に1度MRCから受ける研究成果の評価システムの仕組みが挙げられる。
     この評価システムにおいて、研究所の研究予算に影響を与えるのは部門としての成果であり、各研究者の受ける評価は予算には直接影響を与えない。また、評価されるのは論文の数ではなく、その研究が世界の科学研究に与えた影響である。このため、研究所のほとんどのグループリーダーはすぐに結果が出なくても重要なプロジェクトを選ぼうとしている。
     さらに、研究費が研究所全体で賄われ、部門あるいは研究グループ毎の研究予算が無いことから、同じ部門の誰かが良い仕事をしていることが、研究部門さらには研究所が良い評価を受け研究費を維持するために大切となるため、自分の研究成果が得られていなくても人の成功を助けるなど、研究者同士が協力する関係が生まれており、シニアの研究者が若い研究者をサポートする雰囲気である。
     このシステムは、現在建設中のアメリカのハワード・ヒューズ・メディカル・インスティチュートのジェネリアファーム研究所※3のモデルとなっており、日本においても、幾つかの研究所にこのようなシステムが構築されると素晴らしいと思う。

    ※3 Janelia Farm Research Campus Program Development Report
    (http://www.hhmi.org/janelia/pdf/JFRC.pdf(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif'))


2. 評価システム

  •  英国のグラントの採択率は1割を切る程の厳しい倍率であるが、日本に比べ公正に評価するシステムが構築されている。応募された研究課題について、その分野を専門とする研究者が評価し、評価内容は申請者に返される。若手の自由なアイデアが伸ばされる環境だと思う。日本では、なぜこの研究計画が採択され、この研究計画が採択されないのかという疑問をよく感じた。

  •  大学等研究機関のポストやフェローシップ制度の審査は、欧州、英国は日本に比べ厳しく公平であり、面接が非常に重視されている。例えば、The Royal SocietyのUniversity Research Fellowships※4という若いポスドクに対して5年間(10年間まで延長可能)支援するフェローシップ制度は、各提案書に対して2名づつが審査した後、上位の提案書についてはさらに研究分野の専門家2名が審査を行っている。また、米国のフェローシップ制度は、4名の審査員から1時間の面接を受けたことがあった。

    ※4 http://www.royalsoc.ac.uk/funding.asp?id=1121(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif')参照

  •  一方、日本では、例えば海外特別研究員の面接時間は大変短いため(10分間)、十分な準備をして海外から帰国して面接を受けたのに、自分がきちんと審査されているのか不安に感じたことがある。また、大学等研究機関のポストの募集では、コネが行われているように感じることがある。審査する側としても、面接をしないとその人の適性は判断できない。

  •  海外特別研究員のような海外で研究するフェローシップについては、英語で審査する方が良いのではないか。

  •  外国人特別研究員制度については、2年間日本に受け入れ、お金をかけるのであれば、面接をすべきである。受入人数を減らしてその分審査にお金をかけ、質を高める方が良いのではないか。EMBO(European Molecular Biology Organization)の場合は、EMBOが旅費を支払って、候補者は専門家から面接を受けているが、場合により面接を電話で行うこともある。例えば大使館にテレビ電話があるのであれば、それを利用して面接することも考えられる。また、受け入れる日本人研究者の実力を審査することも大事である。

  •  また、英語で申請できるグラントが多ければ、外国人にとって申請が苦でなくなるため、より多くの外国人が日本で研究するのではないか。事務が大変なのであれば、専門の部署を作ると良いのではないか。


3.学部生等が短期間海外で研究する機会を提供する制度の創設(英→日、日→英)

  •  英国の学部生・修士の学生が、日本で数ヶ月間研究する機会を提供する制度を創設できないか。英国の研究者は日本で研究することに対して、生活の経験がないため不安に思っている人が多い。そこで、若い時に日本で研究・生活する経験ができれば、日本に関心を持ち、将来日本で研究をしたり、日本人研究者と共同研究を行うことをより促進できると考える。なお、将来研究者を目指す英国の学部生にとって、夏休み期間は、自分で研究所に申し込んでサマー・スチューデントとして研究の経験ができる重要な時期であり、その際に研究室のボスから出されるコメントは、大学院生になる際に、審査する側にとって重要な材料となっている。このため、学部生に対しては、夏期に日本で研究する機会を提供すると効果的である。

     また、日本の学部生が海外で数ヶ月間研究する機会を提供、あるいは推奨することができないか。若い時に海外を経験することは効果的であり、上記のサマー・スチューデントと同様に、経歴として残る意味においても重要である。自分の研究室で短期間研究したいという、英国外の学部学生からの応募メールをよく受け取っていることから、諸外国の学部学生は普通に行っていることだと思われる。

  •  このような制度の例としては、Federation of European Biochemical Societies (FEBS)のSummer Fellowships※5(博士論文をまだ提出していない学生を対象に、夏期の間、外国の研究所を体験する機会を提供する制度)、米国のロックフェラー大学のSummer Undergraduate Research Rellowship※6(学部2、3年生を対象に、夏期の間、ロックフェラー大学の研究所を体験する機会を提供する制度)等がある。

    ※5 http://www.febs.unibe.ch/Activities/Fellowships/Fellowship_INFO.HTM(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif')参照

    ※6 http://www.rockefeller.edu/surf/overview.php(外部サイト,'../../../j-gs/img/coes_top_mo.gif','../../../j-gs/img/pd_jspshome_mo.gif','img/navi_top_b.gif','img/navi_gaiyou_b.gif','img/navi_koubo_b.gif','img/navi_iin_b.gif','img/navi_sinsa_b.gif','img/navi_saitaku_b.gif','img/navi_mext_b.gif','img/navi_jsps_b.gif','img/navi_english_b.gif','img/btn_pagetop_b.gif','com/head_link_on.gif','com/head_sitemap_on.gif','com/head_english_on.gif')参照


4.研究費等の使用可能期間の弾力化、長期化

  •  研究は当初の予定通りに行かないことが多いため、科研費などの研究期間を弾力的に延長できるようにすると効果的である。例えば、NIHやヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)のグラントは、研究の途中で1年間研究期間を延長でき、その手続きは書類を書くだけで非常に簡単である。科研費は、使用開始できる時期が遅く、使用期限も3月までで使いにくいという単年度予算主義の弊害が問題である。

  •  外国人特別研究員の場合も、まとまった研究成果が出来るまで支援した方が研究者のキャリアにつながり、優秀な人が日本に来ることにつながると思う。


5.学生、若手研究者を対象とする賞の創設

  •  日本や海外にいる日本人学生、若手研究者を奨励する賞を創設してはどうか。

  •  英国では、Royal Institutionが、博士号を取る前の学生を対象とした賞を創設している。賞金は1万ポンド程度で少ないが、受賞者にはメディアとの接し方のトレーニングや、ファラデーも立った演壇で受賞講演の機会を提供するなど、若手研究者のモチベーションを高める手法が非常に上手である。

  •  大学院に応募する学生を審査する場合、賞の受賞歴や、サマー・スチューデントの経験等の活動歴を参考に学生のアクティビティを評価している。しかし、日本の学生の場合、大学レベルでの表彰制度はほとんどなく、また、大学名は日本では有名でも英国の人は知らないので、日本の学生にも優秀な人はいると思うが、選考において外国人の学生と競うのが不利になっている。賞金を出さなくても、賞をあげるだけで随分違うと思う。博士号を獲得した後のポスドクの審査は、既に論文を幾つも書いているので、学部生よりは能力を判断できる。


6.研究環境の向上(経費の向上、技官の雇用)

  •  英国は日本に比べ技官の配置が充実しており、研究に集中しやすい環境である。また、医学研究会議の分子生物学研究所では、事務スタッフが充実しており雑用が極度に抑えてあるため、グループリーダーも実際研究の先頭に立ち、学生、ポスドクの指導にあたっている。


7.日本への帰国後の受け皿

  •  海外にポスドクとして活動している人はたくさんいるが、家族のことを考慮して日本に帰ろうと思ってもポストがないことが多い。若手のポストが無いことが原因である。

  •  海外在住の優秀な日本人研究者の帰国を促進するフェローシップ制度があると良い。その際、受け入れる研究機関を支援して、研究機関が帰国する研究者個人を選択する権利を与えるのではなく、帰国する研究者個人を支援して、研究者が大学等機関を選択する権利を与える方が、特に若手研究者の帰国を促進するのに効果的であろう。特に優秀な研究者を30代半ばまでに日本に戻すように絞り込むのも良いのではないか。


8.その他

  •  外国人特別研究員制度(2年間)は、ポスドクになって第一番目のポストとして日本を選ぶ人に集中させて募集するのも一案である。ポスドクになって6年経ってもまだ独立した研究室を持っていない人は、日本に招へいしてもしょうがないように思う。


(JSPSロンドン研究連絡センター発行Newsletter No.8(平成18年4月発行)掲載)