大学国際戦略本部強化事業【SIH】  リンク集 サイトマップ English

 事業・組織 大学国際化のためのお役立ち情報 JSPS主催シンポジウム等情報 JSPS調査報告 JSPS海外研究連絡センターより
HOME > JSPS海外研究連絡センターより > エリート大学競争の予選:その結果をめぐる論議

エリート大学競争の予選:その結果をめぐる論議


dpa, Nr. 5/2006 30 Januar 2006


前述の「エクセレンス・イニシアティブ」、特に3本柱のうちの「エリート大学」の選考結果は大きな波紋を呼んだ。その論議の声を一部紹介したい。


エリート大学競争の予選後、落選した大学を抱える諸州で結果を巡る論議が始まった。トップ大学候補を出さなかったRheinland-Pfalz州とHessen州では野党が各々の州政府に責任有りと指摘した。それに対し「当然もっといい結果を望んではいた。」とRheinland-Pfalz州の科学相Juergen Zoellner氏(SPD)はコメントした。Hessen州の同相Udo Corts氏(CDU)も現状以上を期待していたことを認めた。近く退陣する独学術評議会会長Karl Max Einhaeupl氏は旧東独の諸大学の落選は不利なスタート条件の結果と理由付けた。


独学術評議会とDFG(ドイツ研究協会)による協同委員会が1月20日に27の応募大学の中から“未来へのコンセプト”を持つ10の大学を選抜した。それらの大学はこれで4月20日までに未来のエリート大学としての援助金を申請することが出来る。第一回戦の最終決定は10月13日になされる。“トップ・テン”の大学はMuenchen-、Aachen-とKarlsruhe工科大学、Bremen-、Freiburg-、Heidelberg-、Tuebingen-、 Wuerzburg-、Muenchen大学にBerlin自由大学。他の二つの振興プログラム−グラデュエート・コレ−グとエクセレンス・クラスター−では全体で80の候補がノミネートされた。4月に二回目の選抜が始まる。


第一回戦のダークホースはBremen大学だった。反対にBerlinフンボルト大学とDarmstadt工科大学の落選は予想外の出来事だった。研究界での“燈台”の希望者は先端研究センターとグラデュエート・コレーグのどちらの条件をも満たさなければいけない。DFG曰くこのパックに関しては特別手当が出た場合、大学は平均2500万ユーロほどの援助を期待できる。連邦・諸州・プログラム(エクセレンス・イニシアティブ)のためには2011年までの期間に合計19億ユーロが用意されている。その内75%を連邦が、25%を諸州が負担する。


Bremen大学のエリート大学候補入りをBremen州政府教育大臣Willi Lemke氏(SPD)は“大いなる成功”と評した。「しかしまだ目標には達していない。まだ通過地点だ。」とdpaに語った。Bremen大学は1月27日に課された大学発展計画の予算削減の訂正をBremen都市州に要求した。今回のエクセレンス・イニシアティブの予選における成功を目にしてなお削減を行うのは“恥ずべき”こと、と大学評議会の意見は一致している。


BerlinではCDU、緑の党、FDPが州政府を批難。「Berlinの3つの大学は大変な努力のもとに、そして州政府の科学政策にもかかわらず、クオリティーを維持することが出来た。人員削減や予算削減が無ければより良い成績を残したのでは」と。州政府科学大臣Thomas Flierl氏(左翼党)は「Berlinの予算から更なる資金をエリート大学振興の副融資のために用意すべき」と要求した。Berlinフンボルト大学は今後第二のチャレンジについてじっくりと考えるつもりだ。「慌てた行動に走ることなく、第一の申請の弱点を詳しく分析するつもりだ。」と代弁者のAngela Bittner氏は語った。


Rheinland-Pfalz州のほとんどの大学が落選したことに対し、同州のFDPは新たなイノベーション・プログラムを要求した。この成績の責任は唯一政府にあると州議会CDU党派の大学政策代弁者Marlies Kohnle-Gros氏は言った。緑の党も諸大学の“長年に渡る資金不足”を嘆いた。反面Zoellner氏は州特有のエクセレンス・プログラムを誉めた。「これは文句無しに今後の競争においてRheinland-Pfalz州の諸大学の出発地点(レベル)を有利なものに変えるだろう。」


NRW州内では唯一Aachen工科大学が“燈台”になるチャンスを得た。「NRW州はもっとも密集した大学地帯を持ってはいるが、最も優れている訳ではない」とイノベーション相Andreas Pinkwart氏(FDP)は語った。「特に優位に立っている南ドイツ諸州に追いつくのは“大変な力仕事”となるであろう」と。ドイツ国内の競争でのHessen州諸大学の落選は1月26日にWiesbadenの州議会で論争を呼び起こした。SPDと緑の党は悪成績の責任はCorts氏にあると攻め立てた。


Mannheim大学学長Hans-Wolf氏は“未来プロジェクト”の選抜の際、小さな大学の提案が考慮されなかったと批判し、「またもやマンモス大学のみが優先される」と咎めた。ドイツの大学で二番目に古いLeipzig大学は旧東独の大学が一つもエリート大学候補として選ばれなかったことに遺憾の意を表した。Rostock大学は次回の応募戦を推論するため、まず自分たちの落選の原因を解析するつもりだ。


Thueringen州SPD党首(Landesvorsitzender)Christoph Matschie氏はCDU州政府に大学に対する援助を増すことを要求した。彼は国内的に重みを持った大学地域を築くため、新たにThueringen州、Sachsen州とSachsen-Anhalt州の諸大学間の協定に力を入れることを求めた。そのため諸大学は資金アップを必要とする、と。「大学協定の資金はもう何年も前から凍結されている。それは毎年に渡る実質的削減を意味する。」


Einhaeupl氏はエクセレンス・イニシアティブを通してドイツの大学システムに劇的な変化が訪れると見ている。「今回の公募や競争だけでも科学界に過去10年で最も大きな動きを引き起こした。この競争を経てドイツの大学システムは生まれ変わるだろう。」とEinhaepl氏は1月26日にザクセン新聞(Saechsischen Zeitung)に語った。この競争はトップだけでなく、弱点のある部分をも明らかにする,と。


「顕著な南北間の落差、そして更に明確な東西間の落差には正直驚いた。そしてそれらに関して危惧の念を抱く。」とEinhaepl氏。「旧東独の諸大学はスタート条件が西と異なっていた。トップグループに属するためにはもっと長い期間と資源が必要だ。」近い将来大学とそれらの資金めぐりは完全に州任せになるため、貧しい州は経済力のある州よりも不利である。「しかしそういった要素によって最終的に豊かな州のみが良い大学を所持することになってはいけない」と近く退陣する独学術評議会会長は警告した。彼は同時に2011年以降のエクセレンス・イニシアティブの継続を期待している。


(JSPSボン研究連絡センター発行『ぼんぼん時計(平成18年春 第11号)』掲載)