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フンボルト財団(AvH)、ドイツテレコム財団及び公益法人ドイツ学術振興寄付連盟の共催による「Welcome Centre」事業開始


フンボルト財団(The Alexander von Humboldt Foundation: AvH)は、2年間の事業検討期間を経て(下記、「関連記事」を参照。)、2006年3月にWelcome Centreの公募を開始、同年7月に応募を締切り、審査会を経て10月末に採択大学を決定、2007年1月から採択3大学のWelcome Centreに対する支援を開始した。同財団は、ドイツの最大手電話会社であるドイツテレコム財団(the Deutsche Telekom Foundation)及び公益法人ドイツ学術振興寄付連盟(Stifterverbandes fur die Deutsche Wissenschaft: the Donors' Association for the Promotion of Sciences and Humanities in Germany)の共同支援を得て、1大学あたり2年間で125,000ユーロ(約2,000万円)の支援を実施する。ドイツには、区分の方法にも寄るが、約80の大学があり、その3分の1以上である32大学から応募があった。JSPSが文部科学省から受託している「大学国際戦略本部強化事業」との興味深い一致点として、我が国では700余りの大学の中から、20大学の国際化を支援しているが、ドイツにおいても、100弱の大学の中か3大学の国際化を支援しているという点で、ドイツ側も予算の都合で3件にしたとのことであるが、支援する大学の割合としては偶然にもほぼ一致している。


また、これまで各研究室が個別にノウハウを蓄積してきてはいるが、同じ大学でありながらも隣の研究室では全くそのようなノウハウが蓄積されていないという状況が発生しており、大学が組織的にWelcome Centreを国際課又は学長室の直下に置き、ノウハウ及び情報の一元化を図り、大学全体として国際化に取り組むことを支援しているという点で、概念的方向性の一致が見られる。


更に、ドイツの大学に於いては、外国人の受入という点では、教育つまり留学生の受入については国際課がこれまで学内で受入担当機関として機能していたが、研究者の受入は上記のとおり個別の研究室の関心事項として捉えられていたために、大学における組織整備の必要性が問われていたという点も我が国の大学の事情と類似点が見られるが、教育と研究の不可分の観点からか多くの大学において、国際課との連携、学長の直轄下に置くことに解決策を見出しているところに、我が国の大学との検討の方向性の一致が見られる。


ただし、Welcome Centreが大学国際戦略本部強化事業と異なる点は、Welcome Centreは外国人研究者が来独するにあたり、入国、日常生活から研究生活に至るまで、快適に暮らせることを如何に工夫して実施できるか?という点に事業のポイントを集中させている点にある。大学国際戦略本部強化事業よりも支援金額が少ない理由はここにあるとも言える。


これは、例えば既に、エクセレンス・イニシアチブのような事業により研究教育機関としての大学の最先端化を図る一方で、研究を支える環境がそのような最先端化の理念及び実施に追いつかない部分があるが、これはコインの両面のようなものであり、環境整備が欠落していては、結局、優秀な研究者にとっては魅力的に映らない点を重視している。


大学の反応は、既に上記に記載したとおり、全大学の3分の1が応募し、エクセレンス・イニシアチブのように大々的に公募した事業とほぼ同時期に募集しているにも関わらず、多くの大学がこのWelcome Centreの企画案を非常に良く練ったという事実に反映されており、Welcome Centre事業が目指す目的は、多くの大学にとって重要と認識されていると言える。


同centerは、前述のとおり、事業の検討に2年を要しているが、審査基準は次の5点である。なお、番号が若いものから重要度が高い。

1) Welcome Centreは学内の一貫した構造に組み込まれていること

2) 研究者支援に対象が絞られていること

3) 全く新しい試みではなく、既に幾ばくかの経験を有する支援手段に付加価値が加わった物であること

4) 地域の他の研究機関とのネットワークの構築が見られること

5) 2年間の支援対象期間が経過しても学内において1)で構築した構造的機能が永続するよう構築されていること


また、審査委員は次の7名である。

・ フンボルト財団、ドイツテレコム財団、ドイツ学術振興寄付連盟の機関長 計3名

・ 退職した大学国際課長1名

・ フンボルト財団元フェロー2名(1名は外国人、1名は外国生活が長かったドイツ人)

・ ドイツ大学長会議1名


各企画書に特徴的な記述としては、前述のとおり、Welcome Centreを国際課又は学長室の直下に置く試みが多かったこと、特にバーチャルな組織と言うよりは、専門家の雇用又は同事業を実施する研究行政職の特に中間管理職の育成を含めた可視的組織の形成が多かったこと、ウェブサイトの構築、充実が多かったこととのことである。


採択3機関は、簡単にその特徴を挙げると、ボーヘム大学はバチュラーの学生に国際文化交流概念形成の経験を積ませる一環として検討させ、単位を与えるという企画を提案した。マールブルグ大学は逆に、退職した研究者にその経験を活かして貰うよう組織している。また、ボン大学は、近隣の研究所との協働に重点を置いている。これらの機関に対しては、可能な限りインタビューを予定しているので、今後も報告したい。


採択大学に限らず、全32大学の企画書の中から特筆すべきグッドプランをフンボルト財団が既にまとめている(前掲:「フンボルト財団応募結果報告書」ご参照)ので、参考に列挙する。研究者の流動性を高める環境整備に焦点が絞られている分、対策は詳細である。


1)Welcome Centreの役割
・ 外国人研究者、学内研究者及び事務局の橋渡しをする。
・ 外国人研究者のために学内で調和が取れかつ継続的な事務手続きを実施するための方法を開発する中心となり、コーディネートポイントとなる。
・ 外国人研究者のためのウェブサイトの構築及び更新に責任を持つ。
・ 全大学の外国人研究者の登録に責任を持つ。つまり、各受入研究科は、受け入れた外国人研究者を、例えばデータベースにオンライン登録とするなど、Welcome Centreに登録することが必須となる。アクセス権は、外国人研究者同士のネットワーク作成のため外国人研究者に与えるだけでなく、Welcome Centreと受入研究科との連絡のために、Welcome Centre及び受入研究科の責任者にも与える。また、このデータベースを窓会組織の作成のためにも役立て、マーケティング及び広報に役立てる。
・ 受入研究者のためのハンドブックを作成する。
・ 受入研究者に対する行政関連事項のクリア方法の指導や、事務局、受入研究者、学外関係者に対する異文化交流研修を実施するためのコンタクトポイントとなる。
・ 良く発生する問題を記録する。


2)来独する外国人研究者に対するサービス
(来独前)
・ 大学、大学がある地域、幼稚園を含む学校に係る情報、来独前の準備に係る準備段階別の情報にアクセスできるウェブサイトの提供(大学の求人情報もリンクに掲載)
・ 福利厚生諸情報、特別企画のチラシ、ハンドブックの提供、FAQとその回答の提供
・ 訪問中または帰国した外国人研究者のプロフィールへのアクセスし、連絡をしたり、ネットワークを構築したりする機会の提供

(訪問期間中)
・ 出迎えサービス、来独直後の数日間のための大学に近い宿舎の提供
・ 出身国別サービスの提供
・ 客員研究員IDカードの提供
・ イベントカレンダーの提供(Welcome Centreの説明会、来校時及びクリスマスの学長主催歓迎会、市長主催歓迎会、外国人研究者のための月例交換会(昼食会)、外国人研究者のミーティングポイント(アカデミック・ラウンジ)の情報、著名人等来校時にセンター職員ともにユニバーシティ・モーニングの儀礼などに参加すること、著名研究者を招聘した場合は、市役所や美術館で市民講座を開催すること)
・ 市内のゲストカードやバウチャー
・ 特別契約を締結した幼稚園の住所の提供
・ 一年のいつ来ても始められる語学講座の提供
・ 大学の行政組織構造の説明会への招待
・ 翻訳等に係る雇用契約、期間契約の準備
・ 外国人研究者とその家族のためのドイツ特有の行動、エチケット、地域研究などに係る異文化交流研修の提供
・ 研究者の祖国を食べ物やエキシビションを通して紹介できるナショナル・デイへの招待
・ 特に、家族のためのガイドツアー、近郊へのエクスカーション、クラブや組織へのコンタクトを助けるため、国際クラブとの協力していることを情報提供すること
・ 大学の運動サークルなどに参加を(大学や社会に)溶け込む機会として提供すること
・ 同伴者の求職のため、就職紹介所へのコンタクト
・ 登録済み研究者へのオンライン・ニュースレターの発行。記事の内容例:現状、外国人研究者の経験談、地域のイベントの紹介とその文化的背景のコメント

(滞在期間の終了直前以降)
・ 帰国時のチェックリスト
・ リース契約解除の補助
・ フェローシップ事業の情報提供
・ 求人機関への推薦
・ 他の同大学滞在者とのコンタクト


3)出国するドイツ人研究者に対するサービス ・ 外国へ出国するドイツ人研究者と同研究者が向う国から訪問している外国人研究者がコンタクト出来るよう、例えば、「外国人研究者による高等教育システム及び学術研究」などの講義シリーズを開催し、アレンジする。
・ 異文化交流研修の開催
・ フェローシップ事業の情報提供



なお、本事業については、2007年1月開始に続き、5月末に経過報告会が予定されている。


(参考)
フンボルト財団Webサイト

Press Releases ( October 25 2006,No. 25/2006 )
“Bochum, Bonn and Marburg win the competition for cosmopolitan universities”
http://www.humboldt-foundation.de/en/aktuelles/presse/pn_archiv_2006/2006_25.htm(外部サイト)

Summary of the result of the competition
"Welcome Centres for internationally mobile researchers"
http://www.humboldt-foundation.de/de/programme/welcomecentres/doc/brochure.pdf(外部サイト)



(関連記事)
大学国際戦略本部強化事業Webサイト ボン研究連絡センター

AvHらが「国際的な大学」コンテストを2006年より開始
―選定校には“Welcome Centre for internationally mobile researchers”の称号を―
http://www.jsps.go.jp/j-bilat/u-kokusen/foreign/bonn-h180531.html(外部サイト)


(JSPSボン研究連絡センター発行
『ぼんぼん時計(平成18年冬・平成19年春合併号 第14・15号)』掲載)