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第5回シンポジウムに係る記事 |
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掲載記事中の見出し(抜粋)
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「科学新聞」6面
2003年3月7日(金) |
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JAFoSシンポに参加して 東京医科歯科大学教授 入來篤史氏
「Congratulations to be invited!」というのが、レセプションでの参加者同士の挨拶だった。米国科学アカデミーの開会主旨説明を聞くと、その理由もうなずける。「現代最先端科学を担う選ばれた有能な若手研究者が、学問的な交流を通して新しい学問領域を開拓創造することに資するとともに、参加者がいずれ研究機関のリーダーになった時に役立つように、国際的人材ネットワークを養成することを目的とする」というのである。 その、アメリカ人らしく率直な言葉に、日本人としてはいささか気後れしつつも、アメリカの未来を見据えた科学的世界戦略の力強さを感じるとともに、このいかにも自然な高揚感には、ある種のなつかしさをも覚えた。 この会に集い、これからのアメリカ科学界を率いるのは、一九六〇年代のいわゆるスプートニク・ショック直後の、ケネディ・ジョンソン政策下に小学校教育を受けた世代である。私も、このころ二年ほどアメリカの小学校に在学する機会があったが、そこでは、「君たちは、科学を通して世界のリーダーになるのだ」ということを徹底的に教育された覚えがある。 あの高揚感、使命感、エリート意識がこのシンポジウムの企画者・参加者の潜在意識の底に、脈々と流れているに違いないと感じた。昭和の戦後理科教育の中で育ったわれわれ日本の科学者には、容易には計り知ることのできない素地が、そこにはあるのかもしれない。 このような彼らの態度には、古来の「貴族や富豪のパトロンの庇護下の孤高の科学者」から脱却して、「社会資本や公的資金に立脚した社会現象としての科学の担い手」としての、新しい科学者像を目指す戦略が感じられる。したがって、自分の狭い研究分野に特化した、職人的名人になろうという発想とは全く無縁なのだ。このシンポジウムでの興味や議論の対象が、自然科学の諸領域は言うに及ばず、経済学・政治学・歴史学や文学・哲学にまで広がって行くのは、当然の成り行きであった。 このような、各人の人格の琴線に触れる議論を通して培われ、共有されることになる、価値観や、倫理観、美意識といったものが、ここで形成される人材ネットワークを通して、やがて世界を主導することとなってゆくだろうと目論むのは、ごく自然なシナリオなのであろう。 このような米国的な価値観が、「正しく良いものである」とは必ずしも言えないかもしれないが、その善し悪しについて議論するためには、独自の歴史観・社会観に根ざした確固とした対立概念を持つことが不可欠だ。 確かに、この場に居合わせた日本人参加者の英語能力や、対論能力は素晴らしかった。ついこの間まで、私たちが学生の頃見聞きした国際学会での先輩達の英語とは、誠に失礼ながら、隔世の感がある。 しかし、われわれの世代は、日本人として見失ってはいけない独自の世界観に立脚した評価軸を、持っているのだろうか。異分野間の討論のためのテクニックや、レトリックではなく、もっと根元的な命題が、実はわれわれの未来を決定する要因であることに、改めて気づかされたシンポジウムであった。 「科学新聞」6面
2003年3月7日(金) |