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第11回日米先端科学(JAFoS)シンポジウム実施報告 |
Planning Group Member 日本側主査 京都大学・物質-細胞統合システム拠点・教授 上杉志成 |
バスは坂道を登ると、ある白い建物の前に着いた。タイル張りの前庭には噴水があり、背の高いドアから低層のモダンな建物に入れば、受付の米国人女性がにこやかに挨拶を交わしてくれる。ガラス窓の向こうに見えるのは、南カリフォルニアの乾燥した谷だ。 米国科学アカデミー・ベックマンセンター—ここで第11回日米先端科学シンポジウム (JAFoS) が12月5日から7日まで開催された。日本側参加者39名、米国側参加者34名、多分野から選抜された45歳以下の科学者が8つのトピックについて議論する。2年前にこの建物に来たときは、「ケミカルバイオロジー」というトピックのスピーカーであった。今回は日本側の代表になってしまった。 8つのトピックはどれをとっても先進的で興味をそそる。前年12月、第10回JAFoS(湘南)にて日米のPlanning Group Member 16名が会議を行い、今回のトピックについて原案を作成した。当初、約80個のトピックが思いつくままにホワイトボードに書き出されたが、過去のトピックと重複するものを削除、類似するトピックを融合し、30個に絞り込んだ。Planning Group Memberはその原案を持ち帰り、担当するトピックの要旨を作成した。全ての要旨はPlanning Group Memberに配られ、それぞれが30個の要旨すべてについて点数評価を行った。クリスマス、正月を越え、評価のスコアは米国科学アカデミーで集計された。 2月8日、その集計結果をホノルルで手にした。ホノルルでの第2回Planning Group Member会合の前日だった。集計結果を睨みながら、1日の会合で全ての話し合いを終え、8個のトピックを決定する。Planning Group Memberは担当するトピックについて5分間のプレゼンを行い、質疑応答、討論の後、投票でトピックを決定する。朝食、会議、昼食、午後のティータイム全て、同じ面々が同じ会議室に閉じこもる。会議室の外は快晴のワイキキビーチ。胃の痛くなる作業であった。同数票になり議論と投票を繰り返す場面もあったが、その日の夕方までには8個のトピックが出揃った。その8個は以下の通り。
日本語は英語から最も離れた主要言語のひとつだと聴いたことがある。言語は文化—つまり日本文化とアメリカ文化は違う。一方、科学には国境はない。JAFoSの特長は、異なる文化背景や専門知識を持った科学者が国境のない科学を語り合うことだろう。国際的かつ学際的である。ベックマンセンターでは、各々のトピックについて2時間を費やした。具体的にはこうだ。日米から3人が選抜され、まず一人が15分でトピック全体の概説を行い、2人が25分ずつ専門的な研究を紹介する。その後一時間弱、質疑応答と議論を展開する。 3人の演者はそのトピックについての専門家であって、そのトピックを面白いと思うから研究している。その気持ちの高ぶりを「面白いから面白い」と説明する講演だと、専門外の観衆の気持ちは離れる。しかし、さすがに選抜された優れた科学者だけあって、自分の気持ちを高ぶらせているものの正体を冷静に語り、面白さの根拠を多角的に示す。そのように話されれば、内容が頭の中にスッと入る。他分野の科学者に好奇心を生み出す。一時間弱も質疑応答が続くのかと疑問に思うかもしれないが、いずれのトピックでも時間が足りないくらいだ。 私たちは大いに学び、議論した(しかも大いに食べた)。一日の経つのが速く感じられた。専門外の事柄を自分の研究のように感じられることもあった。JAFoSの弱点は、具体的な短期目標がなく漠然とした長期目標のみであるため、シンポジウムの戦略が練りにくく、客観的にみれば「お楽しみ会」のように見えることだろう。しかし、これは長所でもある。短期目標のプログラムが多い中、長期的視野をもった投資的プログラムは稀だ。今後も続けてもらいたい。 個人的に嬉しかったことが1つある。最終日に日本側参加者の多くが口にしたことだ。驚いたことに、質疑応答や議論で日本側が米国側よりも積極的である場面が多かった。言葉の壁を乗り越えて日本側が議論をリードするのは、私が参加した3年間では初めてのことだった。JAFoSの歴史の中で初めてかもしれない。 全てのセッションが終わり、同じバスに乗り込んだ。バスの薄っぺらなシートも心地よく感じられた。 謝辞 |
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