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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

南部陽一郎

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成18年  
10月18日 成田経由・大阪伊丹空港着
10月19日-11月13日 滞在期間中は基本的には基礎物理学研究所の客員教授室に滞在し、研究所員および研究所訪問の内外の研究者と、対称性の自発的破れやクォークの質量の起源についての研究討論を行った。また、研究所の毎週水曜日にあるランチミーティングなどを中心にして若いポスドクや所員の現在行っている研究について聴き、議論を行った。
こうした研究活動以外に以下の講演や会談、研究会参加を行った。
11月14日 筑波大学にて第一学群自然学類文化講演会(14日 15:15~16:30)
「20世紀の物理から21世紀の物理へ」を行った。学生、大学院生など200名以上の参加。
その後、筑波大学学長らと会食、湯川朝永生誕百年の筑波大学、京都大学の取り組み、日本の科学の更なる国際化、大学教育などについて話し合う。
11月15日 日本学術振興会にて小野元之理事長と会談。湯川朝永生誕百年の催し、若手研究者の養成、高校生等に科学に関心を持たせるためのアウトリーチ活動などについて話し合う。
11月16日-18日 基礎物理学研究所研究会「基礎物理学の現状と未来 -学問の系譜・湯川・朝永をうけて-」に出席し、討論、コメントをした。
11月23日-25日 風邪のため出席予定だった名古屋大学における23日-24日開催のSCGT06(2006 International Workshop ”Origin of Mass and Strong Coupling Gauge Theories”)および25日開催の坂田模型50年国際シン
12月4日-7日 基礎物理学研究所にて11月20日-12月8日開催の湯川国際セミナー
YKIS2006 “New Frontiers in QCD-Exotic Hadrons and Hadronic Matter”
12月8日-24日 風邪再発のため出席予定の11日-13日開催の「湯川・朝永生誕百年記念シンポジウム-現代物理学の進展-」は欠席。講演原稿・パワーポイントファイルはE-メールで送付いただく。
12月26日 基礎物理学研究所にて、「湯川・朝永生誕百年記念シンポジウム-現代物理学の進展-」で予定されていた講演「The Legacies of Yukawa and Tomonaga」をセミナーとして行う。
平成19年  
1月4日 大阪伊丹空港より成田経由で離日

受入実施の状況とその成果

'2006年3月31日は朝永振一郎博士の、2007年1月23日は湯川秀樹博士の、生誕百年にあたるので、この我が国のノーベル賞受賞の第1,2号の両博士を輩出した京都大学は、平成18年度を「湯川朝永生誕百年の記念年度」として色々な記念行事を企画計画した。中でも、一般向けとしては、両博士にゆかりの筑波大学と大阪大学と国立科学博物館とで生誕百年記念展を準備、開催し、また物理研究者向けには、2006年12月に基礎物理学研究所と京都大学物理学・宇宙物理学専攻主催で「湯川・朝永生誕百年記念シンポジウム-現代物理学の進展-」を開催することとしていた。

このような記念年度の機会に、両博士とも直接交流のあった南部陽一郎博士に、関連するシンポジウムや国際会議出席いただき、専門家のみならず一般向けにも講演会などを行っていただくことを主な目的とした。さらに、基礎物理学研究所の客員研究者として滞在いただき、所内外の研究者と研究討論・研究指導をしていただくことも目的とした。

10月に来日いただいて、すぐに基礎物理学研究所の研究棟5階の客員教授室を使っていただくこととした。滞在期間中は、特別な講演会やシンポジウムなどに出られる以外は基礎物理学研究所に滞在していただいた。毎週水曜日には研究所内の研究スタッフおよび大学院生、ポスドク全員の分野を超えたランチミーティングがあるが、それに出ていただき、所のメンバーと親しくなっていただいた。若い人にも気さくに何を研究しているか聞かれ、また、ご自身のこれまでのご研究の経験をよく話されていた。研究上の討論では、対称性の自発的破れ、その際あらわれるいわゆる南部-ゴールドストンモードの個数の問題、クォークの質量の起源の問題などを熱心に議論された。

日程にあるように、11月14日には、朝永博士にゆかりの筑波大学を訪問し、「20世紀の物理から21世紀の物理へ」というタイトルで学生向けの講演会をしていただいた。自らの研究の経験や湯川、朝永、坂田博士らとの交流の思い出にも触れ、現在の物理学がどのように進んでいくかの展望をお話になり、200名を超える若い学生、研究者に強いインパクトを与えたと思う。また、米国の素粒子論研究の現場でも交流のあった岩崎洋一現筑波大学学長とも懇談し、湯川朝永生誕百年記念展を行った筑波大学や京都大学の取り組み、若い研究者育成の問題、日本の科学の更なる国際化、などについて話し合った。

11月16-18日には、湯川朝永以来の日本の基礎物理学の流れを顧み、将来を展望する基礎研研究会「基礎物理学の現状と未来 -学問の系譜・湯川・朝永をうけて-」に出席した。昨年も参加・講演を頂いたこの「学問の系譜」研究会で、今年は、色んな講演者の話に貴重なコメントを頂き、日本の基礎物理学研究の歴史がだいぶ明らかになった部分があった。この研究会の記録は昨年に引き続き「素粒子論研究」に出版予定で、若い世代に貴重な記録になるだろう。

12月11-13日の「湯川・朝永生誕百年記念シンポジウム-現代物理学の進展-」には、残念ながら風邪のため欠席されたが、そこで予定されていた講演「The Legacies of Yukawa and Tomonaga」自体は、12月26日に基礎物理学研究所のセミナーとして話していただいた。ここでもご自身の大きな寄与とともに、湯川、朝永、坂田博士らを中心として世界をリードした日本の素粒子論研究についてお話になり、50名余りの研究所近辺の教員・学生・ポスドクに強い感銘を与えた。

11月下旬の名古屋で行われた国際ワークショップSCGT06および坂田模型50年国際シンポジウムにも参加し講演して頂く予定が、さらにその後基礎物理学研究所で開催の湯川国際セミナーYKIS2006での講演予定も、ともに風邪のためキャンセルされたのが残念であるが、南部先生は来春もこの招聘とは独立だが来日される予定で、その「償い」も考えていただいている由、有り難いことである。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

先ず、受け入れ機関の基礎物理学研究所としては、十分長くご滞在いただき、毎週水曜日のランチミーティングを初め、多くのセミナーにも参加して、研究所内の研究スタッフおよび大学院生、ポスドクなど、所の多くのメンバーと親しくなっていただいたことが有り難かった。若い人にも気さくに何を研究しているか聞かれ、また、ご自身のこれまでのご研究の経験をよくお話頂いたので、若い人たちには、研究指導というよりこの上ない刺激になったものと思う。

研究上の討論では、対称性の自発的破れ、その際あらわれるいわゆる南部-ゴールドストンモードの個数の問題、クォークの質量の起源の問題などを議論されたが、これらは素粒子論に限らない、物性理論、原子核理論など、理論物理学の基礎的・普遍的な問題で、理論物理学全体を分野横断的にカバーする基礎物理学研究所の多くのスタッフ・研究員と議論いただいた。

わが基礎物理学研究所は湯川博士が初代所長であった時代以来、すでに国際的な研究所ではあるが、やはり地理的問題もあって欧米の研究者が日常的に常時滞在して世界の研究潮流を作る真の意味の国際研究拠点では未だない。そのような拠点になるためには、今後何をどうすべきなのか等について、昨年の外部評価委員の時に引き続き、貴重な助言を頂いた。折しも来年度の研究所のH19年度新規概算要求が認められ「クォーク・ハドロン科学の理論研究の新たな展開を目指す国際共同研究プログラム」が走り出すことになったので、今後の研究所の運営に生かしてゆきたい。

研究所外では、今回南部先生の訪問は筑波大学のみとなってしまったが、学生向け講演会でやはり若い学生・大学院生達に強いインパクトを与えたものと思う。湯川、朝永、坂田といった素粒子物理学の巨人達と直接の交流があり、かつ自身が歴史に残る大きな寄与をされた南部先生が、自ら直接若い人たちに語りかけ、基礎物理学のおもしろさと将来の展望を語る、ということは、なかなかそういう機会がないが、今回それが実現し、若い人たちの反応を間近に見て、やはりその効果をまざまざ感じた次第である。また、京都で行われた「学問の系譜」研究会や、年末の南部先生のセミナーは、研究所の人たちだけでなく広い範囲の人たちが聴き、そこでも大いに刺激になったものと思う。

今回の南部先生の日本ご滞在は、風邪のため一部の予定がキャンセルされたにもかかわらず、総じて、筑波大学や日本全国の、そして特に京都大学近辺の若い人たちに、基礎科学を研究することのおもしろさを十分に伝えていただけたと思う。

その他

最後に、本招聘にあたり、多大な支援をしていただいた日本学術振興会に、心より感謝申し上げます。他の財源では、なかなかビジネスクラスで奥様ともどもお呼びすることは難しいが、ノーベル賞クラスで年を召している研究者の場合は体力的にもそういう待遇でお呼びすることが必要で、是非こういうプログラムを続けていただきたいと思います。