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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Maxim Kontsevich

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
10月3日 成田空港着 東急エクセルホテル渋谷チェックイン  
研究討議内容・スケジュールについての打ち合わせ
10月4日~10月5日 東京大学大学院数理科学研究科にて1)高木レクチャー連続講義、2)「高校生と数学者の出会い」での高校生との対談
10月6日 慶應義塾大学理工学部訪問(前田と変形量子化問題についての討議)
10月7日~ 10月8日 東京大学大学院数理科学研究科にて行われた「日仏科学フォーラム」に参加し、研究討議を行った。
10月9日 慶應義塾大学三田キャンパスにて行われた「日仏科学フォーラム」にて講演および研究討議を行った。
10月10日 経団連会館にて行われた「日仏科学フォーラム」に参加し、討議を行った。
10月11日~10月12日 慶應義塾大学理工学部にて、前田他と変形量子化問題についての討議を行った。
10月13日~10月14日 東京大学数物連携宇宙機構(IPMU)を訪問、特別講演と斉藤恭司教授と研究討論を行った。
10月15日 午前:日本学術振興会訪問(小野理事長との懇談および表彰状受領)
午後:慶應義塾大学理工学部にて、若手研究者との研究討論
10月16日 東京から京都へ移動(京都ロイヤルホテル宿泊)
10月16日~10月20日 京都大学大学院理学研究科および京都大学数理解析研究所訪問、講演と深谷賢二理学研究科教授および柏原正樹数理解析研究所長等と研究討議を行った。
10月20日 京都から城崎へ移動(城崎宿泊)
10月20日~10月24日 城崎代数幾何学シンポジウムに参加、講演と研究討議を行った。
10月24日 城崎から関西空港(ホテル日航宿泊)
10月25日 関西空港から帰国

受入実施の状況とその成果

本招聘外国人研究者Maxim Kontsevich氏は現在フランス高等科学研究所教授である。同氏の研究は、一つの数学の専門に特化するものではなく、代数学、幾何学、トポロジー、解析学、組合せ論等純粋数学の様々な研究分野を横断する研究を提唱し、世界中の数学者へ強い影響を与えている。また、理論物理学、特に超弦理論や量子場の理論からの影響を受け、それを数学の研究として設定し直し、数学の新しい理論体系を構築している。これにより、理論物理、特に素粒子物理学や超弦理論に対しても深い影響を与えている。同氏の研究は数理物理の幾何学的側面、特に、量子化問題、結び目理論、ミラー対称性を中心とし、世界の数学研究に大きな影響を与えている。同氏は1988年にフィールズ賞を受賞した。フィールズ賞は40歳までの卓越した研究を行った若き数学研究者に与えられる賞である。この賞の重みは、その後の数学研究分野において、世界をリードする研究を推進することが期待され、実際この賞を受賞した数学者のほとんどが、世界の数学研究分野の進展に大きな貢献を残している。同氏はこの意味で、最も典型的なフィールズ賞受賞者といえ、受賞後の研究は、多くの純粋数学研究分野と理論物理研究分野において強い影響を与えている世界でもっとも注目されている研究者といえる。このような、現在の数学研究分野で世界で最も注目されている研究を行っている同氏を招聘し、東京および京都を中心として、国際会議、専門家による研究討議、共同研究、若手研究者とのインフォーマルセミナー、高校生との対話等、忙しい日程のなかで多くのことを実施した。そのうち特に、専門分野に関連する実施事項について、成果とともに記する。

1)連続講演会「高木レクチャー」:東京大学大学院数理科学研究科において、11月4日から11月5日に亘り、「ホロノミックD加群と正標数」と題する2回の連続講演を行った。本講演会には200名以上の専門家が集まった。また今回は他に、J.P. Bourguigunon教授、E.Ghys教授、N.Nekrasov教授も参加し、講演と討議が行われた。本講演では、同氏が現在共同研究者と行っている最先端の研究を紹介、新しい研究テーマの提供が得られた。

2)日仏科学フォーラム「Perspectives in Mathematical Sciences」:東京大学大学院数理科学研究科および慶應義塾大学三田キャンパスで行われた。本フォーラムでは、数学、物理学、数理生物学を中心として14人の講演者を招き、次世代の数学を拓くための様々な新しい研究提案がなされた。そのなかで、Maxim Kontsevich氏は超ケーラー多様体の研究についての新しい手法を提案した。この手法は、今後多くの日本人研究者が様々な研究分野に応用できることが期待できる。また、多くの講演に対して、同氏による討議提案がなされ、それぞれの研究に大きなステップを与えた。

3)城崎代数幾何学ワークショップ:10月20日から24日にかけて、城崎において代数幾何学研究者とのワークショップを合宿型で行った。代数幾何学の現在の問題点について、的確なアドバイスを与えることができ、多くの研究者にとって研究推進に役立った。

4)慶應義塾大学での研究討議 : 前田吉昭との変形量子化問題についての研究討議を行った。特に、代数的アプローチ、代数多様体の変形量子化問題について集中した討議を進め、来年もこの研究討議を継続する。

5)東京大学数物連携宇宙研究機構での研究討議:斉藤恭司とは周期積分、不連続群のモジュライ空間等複素解析幾何についての研究討議をし、来年以降にもこの研究を継続する。

6)京都大学での研究討議:10月16日から10月20日にかけて深谷賢二教授により京都大学に招へいを受けた。深谷賢治教授とはミラー対称性やフレアーホモロジーについて、また柏原正樹とはD加群についての研究について討議を行い、双方にとって新しい視点を得ることができた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

同氏を受け入れることで、慶應義塾大学において多くの寄与があったといえる。慶應義塾大学では、数理科学研究推進のために21世紀COEを引き継ぐ統合数理科学研究センターが設置された。本センターは特に大学の国際化に貢献すべく、多くの国外研究者の招聘を行っている。日本学術振興会の支援によりこのような、世界的に著名な研究者を受け入れることにより、同センターを学内外にアピールすることができた。また、東京大学や京都大学との連携事業を行うことで、受入機関が国内においても数理科学研究分野拠点としての評価も高めることができた。受入機関に所属する学生および若手研究者に対しては、このような著名研究者とじかに触れ合うことができ、数学研究に対する刺激を受けることができたといえる。特に、若手研究者が同氏の前で自分の研究成果について説明をしたインフォーマルセミナーを企画することで、同氏から様々な研究方向についてのアドバイスを得ることもできた。

受入研究機関は、現在「非可換構造の数理科学」について統合的な立場から研究推進を行っている。これに対し、同氏が強い関心を示し、研究アドバイザーとして関わってくれることを承諾してくれている。これにより、本研究機関が国際的な拠点としてこの研究プロジェクトを推進することに大きな力となる。さらには、同氏は2009年と2010年にも受入研究機関を訪問することが予定されており、これにより国際的な研究拠点形成がさらに進むことになる。

その他

1)高校生とのふれあいによる数学の喚起:
今回の招聘では、高校生を含む学生、若手研究者の育成のために、同氏の協力が得られた。特に、高校生と数学者の対話を実現させている。これには、日本人フィールズ賞受賞者である広中平祐教授も協力をしていただき、全国から80名の高校生の参加のもと、行った。これには、高校教員、大学生、数学オリンピック財団および数学オリンピックメダリスト等の参加と協力があった。同氏と広中教授とが高校生からの質問に答え、また自分の経験等を話されることで大きな刺激を高校生や高校教員の方々にあたえることもできた。

2)記録の配信:
今回の招聘での、国際会議、セミナーは記録としてDVD化し、広く関連研究機関等に配布する予定である。