お問い合わせ先

国際事業部人物交流課
外国人著名研究者招へい担当
TEL03-3263-3443
FAX03-3263-1854

外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Serge Daan

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
H20.6.26 (木) アムステルダム発
H20.6.27 (金) 9:30 関西空港着  ホテルへチェックイン。
午後 大阪大学を訪問し、グローニンゲン大学と大阪大学の教育研究における協力についての検討を行う。会議は、理学研究科長東島教授(量子物理学)を議長とし、理学研究科荻原教授(細胞生物学)ほか多数の大阪大学のメンバーを交え、1)両大学間学生・教員交換プログラムとそのため補助金の申請について、2)グローニンゲン大学数学自然科学院と大阪大学理学研究科間のテレビ授業とその将来計画について、3)木下教授による世界トップレベル研究拠点、大阪大学免疫フロンティア研究センターの紹介と大規模な研究者交流プログラムの将来計画、の3点について、討議した
H20.6.28 (土) 大阪・神戸視察。兵庫近代美術館、茨木市の光の教会等を訪問。
H20.6.29 (日) 名古屋への移動と講演会の準備。
H20.6.30 (月) 名古屋大学理学研究科近藤孝男研究科長と面談。近藤研究室を視察、博士研究員や大学院生を交え、生物リズムに関する討論を行う。
名古屋大学農学研究科海老原教授および吉村教授の研究室を訪問、学生との討論を行う。
16:00より名古屋大学において大学院特別講義「生物時計と光:生物はいかにして地球の自転に同調するか」を行う。 講演終了後、東京へ移動。
H20.7.1(火) 青木 清上智大学名誉教授の訪問を受け、日本とオランダ、日本とEU間での生物学領域における共同研究や教育プログラムやその申請について、検討する。午後、皇居を非公式に訪問し、天皇・皇后両陛下と親しく会談する。
H20.7.2(水) 札幌への移動。北海道大学医学研究科本間研究室を訪問し、大学院生と討論を行う。
H20.7.3(木) 北海道大学サステナビリティウィークG8サミットラウンド、国際シンポジウム「環境と健康:変動する地球環境と人の暮らし」に参加。
15:15?16:20 特別講演「変動する地球上の生命:挑戦と機会」を行う。
19:00?21:00 招待講演者懇親会に出席し、北海道大学副学長で、今回のサステナビリティウィークG8サミットラウンド議長の本堂教授や北海道大学医学研究科長本間教授、副研究科長吉岡・白土両教授らと会談。
H20.7.4(金) 北海道大学サステナビリティウィークG8サミットラウンド、国際シンポジウム「環境と健康:変動する地球環境と人の暮らし」に参加。
19:00?21:00 W.Dement スタンフォード大学教授を交え、国内の代表的睡眠学研究者との懇親会に出席
H20.7.5(土) 休養と阿蘇山見学。
H20.7.7(月) 熊本大学発生医学研究センター、再建医学部門 幹細胞制御分野訪問。粂 昭苑教授と粂 和彦准教授のホストで、学生、スタッフと討論を行う。
17:00?18:30 熊本大グローバルCOE、「細胞系譜制御研究の国際的人材育成ユニット」共催の第115回 発生研セミナーにて、「生物時計と光環境:生物はいかに地球の周期的変動に同調するか」のタイトルにて講演と質疑応答を行う。
H20.7.8(火) 熊本視察と講演準備。
H20.7.9(水) 福岡に移動。直ちに福岡教育大学を訪問。副学長遠藤秀治教授のホストで、学長を表敬訪問、「生物時計と昼夜・季節への同調」に関するセミナーを行い、学生や教員と質疑応答を行う。遠藤教授夫妻と国際交流委員を交えた懇親会に出席。
H20.7.10(木) 東京に移動。
H20.7.11(金) 前 青木清上智大学名誉教授、川崎雅司バージニア大学理学部教授と会談。
13:00 日本学術振興会に小野理事長を訪問。著名研究者の賞状を受領する。
14:00 秋篠宮邸を訪れ、秋篠宮殿下・妃殿下にお目にかかる。小野理事長、青木上智大学名誉教授、本間さと教授と共に、1時間余り会談する。
H20.7.12(土) 帰国準備。
H20.7.13(日) 午前11:30成田発のKLM機にて帰国の途につく。

受入実施の状況とその成果

Daan博士は、6月27日の来日当日から、講演、学生教育、グローニンゲン大学・オランダ・EUと日本の教育研究における協力体制作りについての検討などを精力的にこなし、この間、皇室への公式・非公式な訪問も含め、科学・教育における国際交流に多くの成果をあげて7月13日帰国の途についた。今回の招聘における成果は大きく3領域、1)講演や学生との討論を通して、博士の専門領域の生物時計研究の成果や研究法の普及 2)研究・教育における国際協力とその推進 3)皇室訪問 に分けることができる。

1)講義・討論・研究技法の普及:名古屋大学では大学院特別講義を通じ、生物時計研究を専攻している大学院生だけでなく、広く生物学や農学を専攻している若手に生物時計の光同調を中心に講義を行い、大学院生や博士研究員と親しく討議する機会を得た。今回の招聘のメインテーマでもある北海道大学サステナビリティ・ウィークG8サミットラウンドの国際シンポジウムでは1時間半の特別講演を行い、医学部学生や一般市民を含めた200名余りの聴衆に、生物時計が地上の生物の進化と発展にいかに重要であったか、昼夜変化や季節変動に生物時計がいかに同調するかについて、分かりやすく講演を行った。熊本大学においては熊本大グローバルCOE、「細胞系譜制御研究の国際的人材育成ユニット」共催の発生研セミナーで、生物リズムについての講義を行い、発生・分化にも関与するすべての生物がもつ時計機構について、詳しく説明し、学生との討議を行った。福岡教育大学においては、ヒトを含めた生物時計のメカニズムをわかりやすく講義した。教師をめざす学生や教員に、生物時計の基礎と成長期の睡眠やリズム維持の重要性を強く印象づけた。

2)研究・教育における国際交流とその推進:グローニンゲン大学研究科長であり、長年の欧州と米国における研究による広い人脈をもつダアン博士は、今回の招聘のすべての訪問先で、研究・教育における国際交流の進展に重要な役割を果たした。特に、グローニンゲン大学との積極的な国際交流が成果をあげている大阪大学では、学生交換プログラム、特にEUが日本との間に提案しているプログラム申請についての検討を行い、さらにグローニンゲン大学とのテレビ講義にも参加した。また、世界トップレベル研究拠点に採択された大阪大学免疫フロンティア研究センターとの今後の研究協力についても討議した。北海道大学でも、副学長および医学研究科長との会談において、特にグローニンゲン大学数学自然科学研究科と北海道大学の研究者や大学院生の交流の可能性について、前向きの討論ができ、今秋の代表団訪問が決まった。

3) 皇室訪問: 今回、ダアン博士夫妻は、東京に2度にわけて滞在し、最初の滞在である7月1日には、上智大名誉教授青木教授の案内で、皇居へ天皇・皇后陛下を訪問した。夫妻は、一昨年の国際生物学賞受賞の際に引き続いての訪問へのお礼を述べるとともに、日蘭両国の科学を通じた交流についても和やかな雰囲気のもとで約2時間会談した。7月11日には、日本学術振興会小野理事長、青木上智大学名誉教授、北大の本間と共に、秋篠宮殿下と妃殿下を秋篠宮邸に訪ねた。鳥類学者であられる秋篠宮殿下は、先頃「鳥類学大全」を刊行されたばかりで、鳥類や魚類の生態に豊富な見識をお持ちであり、鳥類や冬眠動物などについて研究成果を話す機会を得た。生物学者の天皇陛下、秋篠宮殿下と親しく生物学や両国の交流について話すことができたことは、博士にとっても、また、招聘した側にとっても大変な名誉であった。

Daan博士は、今回の訪日において、教育・研究における今後の国際協力に関して積極的推進に重要な役割を果たしただけでなく、皇室から一般市民まで、広く日本とオランダおよびEUとの交流につとめた。Daan博士は、訪日の全プログラムを予定通り終了し、予測以上の多くの成果をあげ、来年度の訪日に期待をよせつつ、7月13日に帰国の途についた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

Daan博士は、滞日中に、何度も若手との討議の時間は、自分への最大のもてなしであると言及し、積極的に若手研究者や学生との討論を行い、質問に丁寧に回答すると共に、熱心に指導を行い、若手との対話の時間を楽しんだ。若手、特に大学院生には生物時計やリズム研究、フィールドワークから得られるものや、綿密な研究計画の立て方などについて、親しくかつ詳しく指導し、直接指導を受けた者には、将来に向け、大きな励みとなった。また、生物リズム研究を専攻している大学院生に、これまでの研究室やフィールドでの膨大な動物の行動リズム計測の経験と、そのフォーマルプロパティから生み出した理論に基づき、生物個体が示す表現型リズムに真摯に向き合う姿勢と、仮説に基づく研究計画の立て方について、詳しく指導を行い、将来の生物リズム研究を担う若手にとって、貴重な経験となった。北海道大学において開催されたシンポジウム、「環境と健康:変動する地球環境と人の暮らし」の講演は、学部学生や生物学上の専門知識をもたない一般聴衆にも配慮し、分かりやすく印象深いものであった。講演では、私たち人類は体内時計を持っており、それによって、一日の時間や季節を各臓器や細胞レベルでも知ることができること、様々な長さの周期性を知る仕組みが体内にあり、生理機能を整えるということの重要性は、近年益々、重要性を増していることが示された。最近の24時間社会は現代人の生活パターンに多大な変化をきたし、その結果、健康障害を始めとする様々な悪影響を及ぼしている。このため、体のリズム維持の重要性は、誰もが認識するべきものである。特に、今回の訪問では、医学部学生や教師を目指す学生たちに、将来臨床医として、また、教師として、生物時計の意義を生かせるよう指導した。日本学術振興会に小野理事長を訪問した際にも、Daan博士は、若手研究者や学生と討議したことは自分にとってとても貴重な時間だったと話した。さらに、来年も学生らと討議を通じ、リズム研究の普及や指導を行うことを約束した。

Daan博士は、これまでに、異なる齧歯類における莫大な数の行動リズム観察結果に基づき、多くの報告し、時間生理学の発展に多大な貢献をしてきた。特に1976年に発表された5編の論文は、この分野を目指すものであれば少なくとも一度はこの論文を読むべき名著であると認識されている。Daan博士は、ヒトの睡眠リズム研究においても、画期的な理論を打ち立て、現在、彼のモデルをもとに世界中で研究が進められており、最近になって、ようやく分子レベルでの研究が手がけられるようになっている。さらに、エネルギー源、冬眠のタイミング、獲物と捕食者の関係といった研究を通して、Daan博士は、繰り返し体内時計の生態学的意義を説いている。これら、動物の生態、特に、フィールドにおける生態に根ざした研究成果や理論は、近年の時計遺伝子クローニングや分子レベルでの時間生物学研究の急速な進展を経て、その重要性が一段と増している。68才の現在もなお、Daan博士は、時計遺伝子変異マウスを用いて、分子生物学的な結果から得られたモデルをフィールドで検証する、という時間のかかる研究に挑んでおり、フィールドで検証されて始めて意味があることを示すというDaan博士の姿勢は、北海道大学における若手研究者達への強いメッセージとなった。

Daan博士は、今回の北海道大学訪問においては、副学長、医学研究科長や国際協力担当教員との会談を通し、グローニンゲン大学と北大間での研究・教育の交流推進に重要な役割を果たし、特に、医学研究科では、教員や学生の交流を今後も進めることで合意ができた。

その他

本招聘にあたり、多大な支援をいただいた日本学術振興会に深謝いたします。夫人ともどもビジネスクラスで招待することは、他の招聘プログラムではほぼ不可能であり、博士・夫人とも、大変に感謝していた。来年度の招聘では、Daan博士より、自分のなしてきた研究や経験を通し、できるだけ多くのことを日本の若手に伝えたいので、若手への直接の教育の機会を増やしてほしいとの要望を頂いており、是非、来年度の計画に盛り込みたい。