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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Wilfried H. Brutsaert

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成19年
 
5月28日 来日
5月28日-12月11日 筑波大学生命環境科学研究科滞在

  • 地球規模水循環への気候変化の影響に関する共同研究の実施
  • “Hydrology”日本語版出版へのアドバイス
  • 若手研究者に対する教育・指導等
  • 生命環境科学研究科地球環境科学専攻対象「大気境界層水文学」のguest lecturer の担当(全4回)
12月11日 離日
上記期間の内

  • 講演会(演題 "Has Global Dimming Caused a Slowdown of the Hydrologic Cycle?")の開催と研究者との交流活動.
    1. 10月29日(月)
      東京大学生産技術研究所
    2. 11月13日(火)
      海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター
    3. 11月16日(金)~11月19日(月)
      北海道大学低温科学研究所
  • 水文・水資源学会学会誌(Hydrological Research Letters)編集委員会メンバーとしての編集上のアドバイス.また,9月28日,東京秋葉原における編集員会出席.

受入実施の状況とその成果

平成17年度からの継続した3年間にわたる招へい事業であり,本年度が最終年度であった.このため,ここでは今年度分を含めた3年度分をまとめ,全体としての招へい事業の成果を報告する.

(1)講演会の開催
当初計画の通り.3年間にわたり若手研究者らとの交流等を目的とした講演会を以下の通り企画,開催し,全体としてこの分野における国内の拠点大学をほぼ網羅した交流を実施することができた.

平成17年度
1. 8月4日 筑波大学(水文・水資源学会特別講演)"The Relevance of the Complementary Concept in Resolving the Evaporation Paradox: An Update"
2. 11月10日 名古屋大学地球水循環センター “Objective Indications of Global Evaporation Trends in the Second Half of the 20th Century"
3. 2月23日 名古屋大学地球水循環センター “Pitfalls of some currently used operational methods to estimate evaporation"

平成18年度
4. 4月19日 京都大学防災研究所 “Indications of Increasing Terrestrial Evapotranspiration Over the Past Fifty Years"
5. 7月7日 筑波大学 "Indications of an Accelerating Hydrologic Cycle During the Second Half of the 20th Century"
6. 7月13日 東北大学理学研究科 “Indications of an Accelerating Hydrologic Cycle During the Second Half of the 20th Century"

平成19年度
7. 10月29日 東京大学生産技術研究所 "Has Global Dimming Caused a Slowdown of the Hydrologic Cycle?"
8. 11月13日 海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 同上
9. 11月19日 北海道大学低温科学研究所 同上
10. 11月27日,28日(全4回)筑波大学生命環境科学研究科地球環境科学専攻対象「大気境界層水文学」のguest lecturer

(2)若手研究者に対する教育・指導等
当初予定どおり,滞在先となった各大学において,多くの若手研究者の教育,指導に従事した.特に以下については,論文執筆の指導まで含めた指導を行い,論文の出版,博士号の取得などに貢献した.

筑波大学

  • 飯田真一(ポスドク)研究論文 "Change of evapotranspiration due to succession from Japanese red pine to evergreen oak"
  • 小谷亜由美(D5)研究論文 "Seasonal variation of surface fluxes and scalar roughness of suburban land covers"
  • 小谷亜由美(D5)研究論文 "Variance methods to estimate regional heat fluxes with aircraft measurements in the Convective Boundary Layer"
  • 小谷亜由美(D5)博士論文 “Characteristics of Scalar Admixture in the Atmospheric Boundary Layer and Estimation of Regional Surface Fluxes Over Semi-arid Area"
  • 岩田拓記 (D5~研究員) 博士論文 “Surface renewal analysis of sensible heat transfer in the unstable roughness sublayer over a forest canopy"

名古屋大学

  • 田中広樹(CREST-PD)研究論文 "Turbulent flux observations at the tip of a narrow cape on Miyako Island in Japan's Southwestern Islands"
  • 小林菜花子(D3)研究論文 "Nighttime Transpiration Observed over a Larch Forest in Hokkaido, Japan"
  • 李 薇(D3)研究論文 "Turbulence spectra in the atmospheric surface layer over the Loess Plateau in China"
  • 西川将典(D2) 研究題目 "中国黄土高原南部における混合層内の鉛直循環に関する観測的研究"
  • Y. Liu (研究員)平衡蒸発量に関する新しい研究に関するアドバイス
  • 小谷亜由美(助教) 投稿論文 “Concise Formulae for the Atmospheric Correction of Hemispherical Thermal Radiation Measured Near the Ground Surface"

(3) "Hydrology”日本語版出版に対するアドバイス
当初計画通り,Brutsaert教授が2005年夏に出版した" Hydrology"の日本語版出版に対するアドバイスを行った.教授との密接な連携下に準備された日本語版原稿は2007年10月に出版社に提出され,2008年春に出版される予定である.この後,中国語版の出版も予定されており,英語版,今回の日本語版と合わせ,この研究分野の国際的な交流や標準化の一助となることが期待される.

(4)国際学術誌の特集号のGuest Editor担当
筑波大学を中心としてすすめた国際研究プロジェクト(北東アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明,、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 (CREST),2001-2007年,通称RAISE)の取りまとめに当たり,国際学術誌の特集号を企画し,そのGuest Editor を受け入れ研究者と共に引き受け,Journal of Hydrology 誌の特集号としてElsevier社より2007年1月に刊行された.

(5)地球規模水循環への気候変化の影響に関する共同研究の実施
筑波大学研究者との共同研究として,乾燥地域であるモンゴル国ヘルレン川と湿潤地域である国内河川の利根川を対象に,観測された流量データを基にして過去50年間の地下水貯留量変化を調査した.得られた結果を2報の論文にまとめ,International Association of Hydrological Sciences の学会誌Hydrological Sciences JournalとAmerican Society of Civil Engineersの学会誌 Journal of Hydrologic Engineeringに投稿した.

(6)水文・水資源学会学会誌(Hydrological Research Letters)編集委員会メンバーとしての活動.
Hydrological Research Letters誌は,日本発の水文学・水資源学分野における国際的なレター誌を目指して2006年度に発行が決まった新しい雑誌である.このため,2007年度も雑誌名の決定,様々なルール作りなどが進行中であった.Brutsaert教授はこれまでの国際誌の編集者としての豊富な経験から編集委員会メンバーとしてアドバイスを行った.

(7)名古屋大学地球水循環研究センター外部評価委員としての活動
同評価委員として,自己点検案,年報などに基づき外部評価を担当した.この結果は,同センターの返答と共に同センター年報として公表された.

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

  1. 滞在期間中、大学院生および若手研究者の研究論文について、直接議論を行い、研究論文のまとめ方についての指導を行った.このことは英語による細かい内容についてのコミュニュケーションの経験が比較的少ない彼らにとっては、非常に大きな刺激となった.また、国際学会誌への投稿論文を作り上げていくという作業を通して、論理構造の積み上げ方や英語表現など、これまでに200近い重要な論文を記してきた招へい研究者ならではのノウハウを直接聞くことができたことは、大きな収穫であった.
  2. 滞在期間中に行った講演には、若手研究者を多く含む参加者があった.招へい研究者の講演は、日本人にとり非常にわかりやすいものである.論理構造がはっきりしていること、英語の発音が聞き取りやすいこと、そして多少の日本語を入れ込むことができるためである.この上に、内容として最近の世界での関連研究分野の最先端の話であったことから、今後の研究を進める上での重要な示唆、ヒントを与えたものと思われる.
  3. 筑波大学で行った全4回のguest lecturerとしての大学院前期1年生向けの「大気境界層水文学」は,Brutsaert教授の教科書 “Hydrology"の第2章を対象として行われた.受講生には新しい内容の理解と英語の理解という2つのハードルがあり,必ずしも簡単な授業ではなかったと思われるが,教授の明確かつ論理的な説明と教科書の存在に助けられ,受講者には良い刺激となったようである.
  4. Brutsaert教授の教科書 “Hydrology"の日本語版出版にあたり,細部に関する詳細な説明を行い,出版方法についてのアドバイスを行った.このため,600ページを超える厚さの文献の翻訳としては比較的早く,正確な出版まで行うことができた.
  5. 受け入れ機関全体の国際化に関しては、現在本学には数多くの外国人が滞在し、日常で国際的な環境に多少なりともあるため、招へい研究者1名で大きく変わったということはそれほど多くはない.しかしながら、招へい研究者が国際的な学会の会長などを歴任されたことなど、その経歴を有する者のみが与えることができる、国際的な情報、意志決定など、本学が今後ともそのような流れの中で一つの主要な位置を占めていく上で重要な示唆を与えてくれたと考えている.