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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

浅野 孝

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成18年
 
9月20日 来日
9月21-22日 講演活動打合せ、講演等準備
9月25-28日 土木研究所(つくば)にて、フェロー就任、講演、研究指導
10月2日 日本下水道協会にて技術指導
10月3-6日 講演会準備、作家・記者・研究者・実務者などの訪問を受け討議と技術指導
10月10日 東京都下水道局の都市下水再利用施設の視察
10月11日 東京大学都市工学科にて研究討議
10月12-16日 講演会準備、作家・記者・研究者・実務者などの訪問を受け技術指導と討議
10月17-25日 北海道大学及び北見工業大学にて研究討議、講演、常呂川流域等現地視察
10月26日 国土交通省水資源部にて講演及び技術指導
10月27日 土木研究所講演会にて基調講演
10月29-31日 福岡大学にて研究討議
11月2日 土木研究所(つくば)にて研究討議
11月6日 研究者の訪問を受け研究討議
11月7-9日 高知工科大学にて講演、研究討議、物部川流域現地視察
11月10日 国土交通省水資源部にて講演及び技術指導
11月11日 名古屋在住の環境工学者と研究討議
11月12-15日 京都大学流域圏総合環境質研究センター及び桂キャンパスにて講演、研究討議
11月16-19日 土木学会第43回環境工学研究フォーラム(函館大学)及び北海道大学にて研究討議
11月20日 (財)ダム技術センター・(財)ダム水源地環境整備センター共同意見交換会にて講演及び技術指導
11月21-23日 富山県立大学にて講演、研究討議
11月24日 日本学術振興会表敬訪問
11月27日 独立行政法人水資源機構にて講演及び技術指導
11月28日 (財)水資源協会にて技術指導
11月29-30日 福島にて福島県主催、福島大学・国土交通省後援の講演会で講演・意見交換、阿武隈川現地視察
12月4-6日 沖縄総合事務局土地改良総合事務所、沖縄県土木建築部・上下水道局にて講演、再利用施設現地視察及び技術指導
12月7-8日 土木研究所(つくば)にて研究指導
12月10日 最終報告打合せ
12月11日 離日

受入実施の状況とその成果

予てから招へいを要請されていた地方大学及び行政機関を多く訪問するため、また意見交換を希望する作家、記者、研究者の便宜のため、東京を本拠地として活動した。

講演及び意見交換のために訪問した機関は、土木研究所を含め8大学・研究機関、日本学術振興会や国土交通省を含め8行政機関であり、加えて3名の新聞記者と1名の作家を含む十数名の滞在ホテルへの訪問を受け意見交換を行った。さらに、研究運営体制に関する助言も浅野名誉教授から多くいただいた。

講演会及び意見交換を通して浮き彫りになった日米の水資源に関する根本的な相違は、高水質確保への取組みの姿勢、戦略計画の有無、安全性の考え方、広報体制である。都市下水の再利用は、カリフォルニア州を始めとする水不足地域で持続可能な水資源として公式の水計画の中で水不足を補うオプションとして位置付けられ、微量有害物質の健康への悪影響のリスクや市民の合意など種々の問題を抱えながらも利用が増大している。また、都市の水供給の安全性に関して、例えばロス・アンゼルス市は、カリフォルニア北部、シェラネバダ山脈、コロラド川の3つの地表水源、河道外貯留、地下水、再利用水と6つの大きな水源を有し、導水路が地震被害を受けたとき修復に必要な6ヶ月間給水を確保できるシステムを完成させている。一方、日本においては、水資源の水質や安全性をオープンな場で本格的に議論する風潮に乏しい。その理由として、人口減の時代において記者や世間の感心事となりにくいこと、かつての良好な質で豊富な水を日本は有するという先入観から水質の測定が不十分で問題が顕在化していなだけの可能性があること、戦略計画での位置付けがなされていないこと、地域問題である水資源の専門家が地方大学で育成されていないこと、広報体制が整っていないこと等が議論された。浅野名誉教授の講演・意見交換により、日本の多くのトップレベル研究者、実務者がこのような認識をもつことができた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

講演会や意見交換会をとおして浅野名誉教授は全国各地の学生や若手研究者へ大きなインセンティブを与えた。土木研究所講演会、北見工業大学、高知工科大学、富山県立大学での講演会を聴講した若手研究者からは、先進国である米国でも水不足が深刻で市民の意識の問題があること、再利用が導水より安価で低エネルギー消費であることを初めて知ったといった先入観の払拭と視野の拡大、自分の研究が実際の問題解決に直結する意識が高まった、グローバルに活躍する日本出身の先生を見て自分もそうなりたいと感じた等のモラル向上の感想が寄せられた。さらに訪問先の大学教員からは、再利用における世界の最先端技術と研究アプローチ、世界の著名研究者ネットワークを浅野名誉教授から知ることができ感銘を受けたと報告を受けた。

また、行政機関からは、浅野名誉教授が紹介した米国における都市給水の安全性を高めるインフラ整備、危機管理ではなく定期的な戦略計画の立案、社会基盤の維持のための投資の必要性を社会に問う取組み、米国連邦政府の開発から管理組織への変遷の事例は日本での政策立案の有益な参考情報として理解された。意見交換では、アジアに偏重気味だった日本の活動は、今後、欧米先進国とも情報交換を継続的に行う重要性が認識された。

土木研究所にとって、研究者への研究指導や士気向上に加えて、土木研究所フェローとして全国各地で講演活動と行政への助言の社会貢献を行うことができ、今後、研究活動の幅の広がり、優秀な人材確保に繋がるものと考えている。

今回の招へいで、日本の学界と行政双方のトップクラスの方々と浅野名誉教授が直接面会し長時間に亘り意見交換する場を設けることができ、研究と実践への取組み姿勢や考え方に関して、著書などでは得られない大きな好影響を及ぼしたと考える。

その他

本招へいにあたり、多大な支援をしていただいた日本学術振興会に、心より感謝申し上げます。浅野名誉教授は来年度も来日予定で、さらなるご活躍が期待できる。