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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Kurt Lambeck

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成17年
2月17日
来日
2月17日~22日 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
2月18日 東京大学地震研究所訪問

国立極地研究所訪問
 南極昭和基地における超伝導重力計を用いた重力観測についての討議

2月21日 東京大学 シンポジウム「変動する地球—地球内部と表層のつながりを求めて」にて講演
 1)地球内部ダイナミクスについて
 2)氷期—間氷期を含む気候変動について
2月22日 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
 気候変動モデルと氷床モデルに関する、東京大学気候システム研究センターの研究員を含む複数グループでの議論
2月23日 国立天文台三鷹観測所訪問
 天文台長と懇談
2月23日~25日 国立天文台水沢観測所訪問
 所長を含め研究所員との討議
 40年間の人工衛星を使った測地学の発展等について講演
2月26日
~3月1日
九州大学理学研究院地球惑星科学専攻訪問
 地球回転の諸問題についての議論および地球内部の物性構造についての講演
3月1日~3日 京都大学理学系研究科地球惑星科学専攻訪問
 地球内部物理学についての議論および講演
3月3日~7日 岡山大学地球内部研究センター訪問
 シンポジウムにて地球内部構造と地球物理学についての講演
3月7日~9日 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
3月8日 日本学術振興会訪問

東京大学総長との懇談

3月9日 離日

 

受入実施の状況とその成果

招へいの目的は、過去30年間に渡って常に地球科学の分野をリードされているLambeck教授を招き、共同研究やセミナー、シンポジウムでの講演や個別の議論を通して東京大学内外における地球ダイナミクス分野および気候変動を含めた表層環境変動の研究分野を発展させることにあった。
 Lambeck教授は、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻において、2月21日に開催されたシンポジウム、「変動する地球?地球内部と表層のつながりを求めて」にて、1) Earth rheology from glacial rebound analyses using geological and geodetic data: Is there evidence for complex spatial structure and for non-linear behaviour of the mantle viscosity? と、2) Ice history during the last glacial cycle: What we can learn from global and regional sea level analysesという2つの講演をされた。このシンポジウムでは、現在東京大学で推進している21世紀COEプログラムのポストドクター研究員2人を含む若手研究者が講演し、多くの活発な議論が交わされ、若手研究者や学生の積極性がLambeck教授にもとても印象に残った様子であった(Lambeck教授の英文報告書参照)。このシンポジウムには、東京だけではなく関東近郊および神戸や金沢、また福岡や岡山といった遠方からの参加者もあり盛会となった。シンポジウム以外でも、地震研究所や気候システム研究センターの助教授やポストドクター研究員といった若手との少人数での議論を活発にもつことを希望され、地球惑星科学専攻のLambeck教授のオフィスでは毎日、共同研究等についての議論が交わされた。
 一方で、地震研究所や国立極地研究所の測地学や地形学研究グループへの訪問もこなされ、オーストラリア国立大学地球科学研究所の地球物理学分野との共同研究の可能性や、南極の昭和基地とオーストラリアのキャンベラで現在行われている超伝導重力計を用いた研究データについての議論、それに日本の地震や津波等、防災科学に関する情報交換もなされた。Lambeck教授が現在オーストラリア政府と行っているインド洋沿岸諸国における津波警報システム構築についての議論もなされた。
 東京滞在以外の期間にも、国立天文台、九州大学、京都大学、岡山大学固体地球研究センターなどを訪問され、幅広いトピックスにおいて多くの議論がもたれた。国立天文台三鷹観測所においては、オーストラリアのキャンベラにおいて現在行われている、超伝導重力計観測の継続についての議論を天文台長と行い、水沢観測所においてはVLBIプロジェクトおよびSvalbardでのGPSや重力観測などについての共同研究の話が観測所長を含む多くの研究者となされた。国立天文台水沢観測所では、"Forty Years of Satellite Geodesy: Contributions to the understanding of the solid Earth"と題したこれまでの宇宙測地学の発展について講演を行ったが、これは水沢観測所が進めようとしている月観測のプロジェクトとも関連した興味深いものであった。
 九州大学においては、地球回転についての地球物理学的な側面に関する議論や現在日本が中心になって進めている統合深海掘削プロジェクト(IODP)についてのオーストラリアの参画についての有用な議論がなされ、地球内部のマントルの粘性構造についての講演も行われた。
 さらに京都大学と岡山大学固体地球研究センターにおいては、地球内部物理学についての議論が中心となった。特に岡山大学固体地球研究センターにおいては国際シンポジウムが開催され、Lambeck教授はケンブリッジ大学、エール大学などからの国際招待講演者とともに基調講演を行い、多くの活発な議論がなされた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

Lambeck 教授は、東京大学滞在中、若手研究者や学生との交流を積極的に希望され、多くのポストドクター研究員や若手研究員との議論を交わされた。その中には、今後の気候変動および固体地球研究のモデルの精度向上を行うための研究者訪問や、具体的なテーマを挙げての共同研究、それに人物交流計画の提案などがあった。今回の招へい事業での、東京大学における受入担当教員が理学系研究科の国際交流担当委員であることや、Lambeck教授が昨年度までオーストラリア科学アカデミー(Australia Academy of Science)の国際交流委員長を務めてこられた事もあり、東京大学とオーストラリアの研究機関との将来にわたる長期間の提携や交流について、様々な可能性を探る事ができたことも有意義であった。
 一方、日本学術振興会理事長および東京大学総長の訪問時においても、地球科学および惑星科学分野における日本とオーストラリアの協力関係強化の重要性が議論された。特に総長訪問時には、地球惑星科学専攻においてLambeck教授と議論を行った教育および研究の交流構想が、2国間のみならず他の欧米諸国やアジア各国を含めた交流プロジェクトとして大学をあげて遂行しつつあることが話題にあがり、Lambeck教授の招へいは時宜を得たものであった。

その他

上記のようにLambeck教授の滞在期間は21日間という短いものであったが、多忙を極める教授に3週間来日していただき、日本の地球惑星科学の研究者と広く議論を交わしていただいたことはとても有意義なものであった。現在も地球惑星科学研究の第一線で活躍され、かつ研究者の国際交流にも造詣が深いLambeck教授の今回の招へいは、中長期的将来にわたって、二国間の地球惑星科学分野での交流を深めて行く重要なきっかけになったと思われる。最後に本招へいにあたって多くの支援をしていただいた日本学術振興会に感謝申し上げる。