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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Sheldon Lee Glashow

滞在中の日程
年 月 日 訪問先名称・訪問内容
平成15年5月  
10日(土) 米国ボストン発
11日(日) 成田空港着
東京へ移動 休養
12日(月) 小柴昌俊(ノーベル物理学賞受賞者)東京大学名誉教授と対談
13日(火) 谷垣禎一 産業再生機構担当大臣表敬訪問(於 警察庁)
 基礎科学の重要性及びその振興方策について懇談
14日(水) 東北大学訪問
吉本高志学長表敬訪問
ニュートリノ科学研究センター視察
 研究者との意見交換
講演「科学における偶然の役割について」(於 理学部大講義室)
 理学部学生及び理学研究科大学院生を対象に講演。およそ400人の聴衆の中に学長も参加。質問も活発で、1時間半の予定を大幅に超過した。
15日(木) 休養
16日(金) 日本学術振興会理事長表敬訪問

加速器科学研究会(於 キャピトル東急ホテル)
 講演「ニュートリノ:それは何者で、なぜ我らを魅了するのか」
 高エネルギー物理学者、関連企業技術者、ジャーナリスト等約100名が参加、1時間半にわたり講演と質疑応答が行われた。

細田博之 科学技術政策担当大臣表敬訪問(於 内閣府)
 ニュートリノ、電子・陽電子衝突加速器開発等の分野において日本が世界をリードしていること等の話題について懇談
17日(土) 休養
18日(日) 東京大学宇宙線研究所神岡実験施設訪問
 研究者との意見交換
19日(月) 神岡地下研究施設視察
 スーパーカミオカンデ(東京大学宇宙線研究所所管)及びカムランド(東北大学ニュートリノ科学研究センター所管)を視察

講演会 (於 岐阜県立飛騨神岡高等学校体育館)
講演「ニュートリノ:その正体、その不思議」
 高校生約300人及び高校教師、一般人約50人の聴衆を相手に1時間半にわたり講演・質疑応答を行った。
20日(火) 京都大学
研究者との研究打合せ
21日(水) 京都大学
 研究者との意見交換
 講演「科学における発見と直感」(於 理学部大講義室)
 およそ300人の理学部学生及び理学研究科大学院生が聴講し、質疑応答を含め1時間半の予定のところ、2時間の有意義な講演であった。
22日(木) 関西空港より離日
サンフランシスコ泊
23日(金) サンフランシスコ発
ボストン着

受入実施の状況とその成果

 Sheldon Lee Glashow氏は、今回は12日間滞在し、2つの英文講演題目で各2ヶ所、計4ヶ所での講演、3研究施設の訪問・視察、その他ノーベル物理学受賞者の小柴昌俊教授との対談、日本学術振興会理事長を表敬訪問し懇談、谷垣禎一 産業再生機構担当大臣及び細田博之 科学技術政策担当大臣とそれぞれ懇談、等の多彩なスケジュールをこなすとともに、多くの研究者と意見交換を行った。

 講演題目の一つは原文では「The Role of Serendipity in Science」で、理学専攻の大学、大学院学生向けの内容であった。東北大学に於いては「科学における偶然の役割について」、京都大学に於いては「科学における発見と直感」としてポスターが作られ、前者ではおよそ400人、後者ではおよそ300人の若い聴衆が集まり、盛況であった。この講演では、科学の発展は、あらかじめ計画された通りに起こるだけでなく、むしろ往々にして偶然が重要な役割を果たすことを、昨年のノーベル物理学賞受賞者である小柴昌俊教授の業績を含む豊富な事例で説明し、政府や産業界はこの事実を良く認識するべきであると説いて、聴衆に大きな感銘を与えた。

 もう一つの講演題目は一般向けの内容で、原文のタイトルは「Neutrinos: What Are They and Why Do They Fascinate Us?」であり、東京のキャピトルホテル東急会場では「ニュートリノ:それは何者で、なぜ我らを魅了するのか」とやや固い感じの題目、岐阜県神岡の飛騨神岡高校会場では「ニュートリノ:その正体、その不思議」と高校生向けにやや柔らかい感じの題目で紹介された。この講演は、ニュートリノ発見の歴史とニュートリノの性質についてかみ砕いて解説し、続いてカミオカンデ、スーパーカミオカンデ、カムランドと続く日本のニュートリノ物理学に対する貢献を称え、最後に大強度陽子加速器施設J-PARCでの長基線ニュートリノ振動実験の重要性を指摘した興味深いものであり、講演後の質疑応答も活発であった。

 Glashow氏が特に楽しみにしていたのは神岡地下実験施設の訪問であった。氏は1986年にカミオカンデを訪れているが、スーパーカミオカンデ訪問は初めてであり、ニュートリノ物理で重要な発見をもたらした実験の現場を非常に熱心に視察された。また、元のカミオカンデの空間を利用して建設された東北大学のカムランドも訪れ、特に現場で実験中の米国人研究者数人と顔見知りであることから、彼らから詳細な説明を受け、また有益な意見交換がなされたようである。ニュートリノ物理学の分野で世界最先端で大活躍をしているこれらの実験施設を視察後、現地の研究者に、日本はこの勢いを更に拡大する次の計画(J-PARCでの長基線ニュートリノ振動実験)を是非早期に実施するべきであると力強い激励の言葉を残した。

 政府関係者との懇談では、Glashow氏は3年間に4人の日本人科学者がノーベル賞を受賞したことに象徴される日本の基礎科学の底力を強調し、特に素粒子物理学の分野で次期先端施設として世界的に望まれている電子・陽電子衝突型線形加速器の開発研究において日本が大きく貢献していることを語った。また、J-PARCでの長基線ニュートリノ振動実験の重要性とこの分野での日本の優位性について述べた。これらは日本の基礎科学、特に高エネルギー物理学への政府関係者の理解を深め、共感を得ることに大いに役立ったものと考えられる。

受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

 受入機関の高エネルギー加速器研究機構は、高エネルギー物理学分野で日本を代表する研究機関であり、欧米の研究機関と協力しつつ、一方激しい競争を繰り広げている。なかでも、ニュートリノ振動実験に関しては世界初の長基線ニュートリノ振動実験であるK2Kおよび大強度陽子加速器施設J-PARCでの次期実験計画は世界をリードしており、また高エネルギーフロンティアーを目指す電子・陽電子衝突型線形加速器の開発研究では欧米と並び最先端に位置している。日本の高エネルギー研究者コミュニティーは、次期基幹計画としてこの加速器を日本に建設することを強く望んでいる。Glashow氏はこの2つの重要な計画のいずれにも造詣が深く、その推進を協力にサポートしてくれており、政府、財界、マスコミ等関係者との懇談、一般や学生向けの講演において常にその重要性を分かり易く説明し、理解と協力を訴えてくれた。世界的に著名なGlashow氏のこのような発言が計画推進にとって大きな力となったことは確実である。

 東北大学および京都大学における理学部学部学生、理学系研究科大学院学生向けの講演とその後の質疑応答は、次代を担う若者たちに強い知的刺激と感銘を与えた。また、神岡地下実験施設を視察した際には、東京大学(スーパーカミオカンデ関係者)や東北大学(カムランド関係者)の若手研究者と懇談の機会を設けた。彼らが教科書で学んだ現代素粒子物理学の創始者の一人である氏との親しい会話は、これら若手研究者にとって得難い貴重な体験であり、研究へのモチベーションを高めたことは疑いない。

その他
特になし

活動状況

2003年5月14日
2003年5月21日