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国際事業部人物交流課
外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

平成26年度外国人著名研究者招へい事業報告書

事業報告書

Robert Anthony Kowalski

滞在中の日程

平成26年/年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
10月13日 来日
10月14日 滞在予定打ち合わせ
10月15日〜21日 受入研究者との研究議論
10月22日 国立情報学研究所にて「論文の書き方ワークショップ」開催
10月27日
10月28日

10月29日
10月30日
10月31日
東京から金沢へ移動
JAIST情報科学研究科セミナー開催
http://www.jaist.ac.jp/event/2014/-2611513301500.html
JAIST情報科学科にて「論文の書き方ワークショップ」開催
JAISTロジックキャンプに参加し、関連研究者(東条敏教授)との議論
金沢から京都へ移動
11月10日 京都から奈良へ移動 奈良女子大学にて講演, 関連研究者(新出教授)との議論
11月11日


11月12日~11月13日
NAIST情報科学研究科集中講義
http://cl.naist.jp/index.php?%A4%B1%A4%A4%A4%CF%A4%F3%A4%CA%BC%AB%C1%B3%B8%C0%B8%EC%B8%A6%B5%E6%B2%F1
NAIST情報科学研究科集中講義
11月14日
11月17日〜18日
11月19日
11月20日

11月21日
奈良から京都へ移動
京都大学大学院情報学研究科山本章博教授との討議
京都大学大学院情報学研究科にて「論文の書き方ワークショップ」開催
京都大学大学院情報学研究科特別講義
http://www.i.kyoto-u.ac.jp/informatics-seminar/
京都から東京へ移動
11月23日〜24日 法的推論ワークショップ(JURISIN 2014)参加@慶応大学
http://www.jaist.ac.jp/org/jurisin2014/
11月25日 国立情報学研究所にて法と情報学の日韓ワークショップ参加
11月26日
11月27日〜29日

11月30日
東京から葉山へ移動
湘南会議(「自然言語処理と論理的推論の融合による説明生成ワークショップ」)参加
http://shonan.nii.ac.jp/seminar/057/title-and-abstract/
湘南会議参加 葉山から東京経由札幌へ移動
12月1日





12月2日
12月3日
北海道大学大学院情報科学研究科集中講義 第1講
http://www.csit.ist.hokudai.ac.jp/news/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%81%8C%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%95/
論文書き方ワークショップ 
北海道大学大学院情報科学研究科田中譲教授との研究討議
北海道大学大学院情報科学研究科集中講義 第2講   
札幌から東京へ移動
12月4日〜12月5日 早稲田大学 大学院情報学研究科集中講義
http://www.leading-sn.waseda.ac.jp/event/1204_05workshop/
12月8日〜13日 受入研究者との研究議論
12月13日 離日

受入実施の状況とその成果

研究計画に従い、Kowalski教授の招へい事業として以下を行った。
1)国立情報学研究所での論文の書き方ワークショップ
このワークショップは、Kowalski教授の論理的な論文の書き方の講義と参加者のアブストラクトに対する改良の議論である。
この講義の中で、Kowalski教授は自然言語を論理的に用いることに関して、2つの補足的なポイントについて強調した。一つ目のポイントは、英語による文章は、条件と結論を結びつける、隠れた、しかし単純な論理形式を有しているということである。この論理形式により、論理的に筋の通った文章の形は、概してピラミッドの形をとるという結果をもたらす。すなわち、このピラミッドの中では、主要なゴールないし結論はトップに来て、その主要なゴールを解決するためのサブゴールに還元されていくということである。効果的な発表は、発表の初期の段階でピラミッドの頂点をなす主要なゴールを示すこと、そして、下位に位置するサブゴールがいかに問題解決に寄与するのかを明確にすることである。
二つ目のポイントは、情報を首尾一貫して示すことに関係する。このことは、個々の文章のレベルでは、馴染みのある情報を最初に提示し、新たな情報を最後に提示することで達成される。また、文章全体においては、古い情報と新たな情報の論理的関係を表現することで達成される。典型的には、新たな情報は文章の最後で紹介され、次の文章の冒頭には馴染みのある情報が来ることになる。
この二つのポイントは、発表を行う際にともに用いられる必要がある。多くの場合、このことは、最初にゴールを提示し、サブゴールそれ自身が事実として認められるか、あるいは容認可能な仮定として認められるまで、徐々にサブゴールを還元される方法で、文章を連続して発表することでなされる。
ワークショップには、8本のアブストラクトが提出され、議論の俎上に上がった。多くのアブストラクトは、学生がKowalski教授のコメントを受け取った後に、彼らによって書き直されていた。学生全員が、アブストラクトの詳細について議論する前に、自身のアブストラクトについて短い説明を行った。この説明を行ったことで、アブストラクトについて詳細に検討し議論する前に、アブストラクトのトピックについて、参加者が、よりよく理解できるという利点がもたらされた。
多くのアブストラクトは、同様の構造を有していた。まず初めに、問題について記述し、さらにいくつかは先行研究についても記述し、その後に新たに得られた成果とそれが問題解決に寄与することを記述していた。これはよいアプローチであり、Kowalski教授が指摘した二つ目のポイントに合致するものだった。けれども、一つ目のポイント、すなわち、研究をゴールとサブゴールの構造で発表することに関しては、かなり問題があることが分かったため、議論の多くは、どのようにこの点について改善していくかについて向けられた。
2)北陸先端科学技術大学院大学
a)JAIST情報科学研究科セミナー講義
講義は、プログラミング、データベースや人工知能による知識表現および問題解決といった、コンピューティングの異なる領域で発生する、共通の特徴の概観を提示するものだった。Kowalski教授は、これらのシステムに共通する最も主要な特徴は、状態遷移の表現及び生成であると述べた。多くの計算機科学者は、計算システムについて、論理的意味論を有している宣言型システムと論理的意味論を有していないif-thenルールに基づいた反応型システムを区別しているが、Kowalski教授は、2種類のシステムを統合し、両者に論理的意味論を与え、現在している計算システムが、提案したフレームワークの中でどのように再定式化可能であるかを提示した。
b)論文の書き方ワークショップ
5人の学生がアブストラクトを提出した。学生たちは数日前にアブストラクトをKowalski教授に送ってきていたので、Kowalski教授は、彼らにコメントを送り返していた。そのため、彼らはワークショップでアブストラクトを提出する際にコメントを考慮していてくれた。このワークショップでは、過去のワークショップとは異なって、学生たちは研究トピックを提示し、書き改めたアブストラクトをグループの前で何度も見直した。これは、ワークショップを行うに当たり非常に効果的な方法で、学生がより活発に議論に関わることを助けた。また、ワークショップは、アブストラクトを提出していないたくさんの学生の出席により良いものとなった。彼らは活発な議論に寄与し、多くは、数時間以上続いたワークショップの最後まで出席していた。
c)ロジックキャンプ参加
Kowalski教授はJAISTで定期的に開催されている論理学やソフトウェアの検証分野に従事している研究者の研究集会"ロジックキャンプ"に参加した。Kowalski教授は、上記セミナーの縮小版の講演を行い、また、他の研究者の発表が、Kowalski教授の発表と大変関連が深いことを発見し、議論を深めた。
3)奈良女子大学
Kowalski教授はJAISTでの講演の改訂版を、奈良女子大学の学生に講演した。学生だけではなく研究者も参加し、活発な議論がされた。
4)NAIST
a)情報科学研究科集中講義
Kowalski教授は、二つの講演を行った。一つ目は、JAISTと奈良女子大で行った、コンピューティングについて新たな論理的基礎を提案する講演の改訂版である。二つ目は、計算論理と英語の文章体のガイドラインとの関係についてである。
b)論文の書き方ワークショップ
このワークショップは2日間にわたって開催された。一日目は、6本のアブストラクトについて議論した。最初に、各学生が簡単にアブストラクトのトピックについて説明し、次いでKowalski教授と受入研究者はアブストラクトを精読した。Kowalski教授と受入研究者は、ワークショップの初めの短いプレゼンテーションでKowalski教授が強調した二つの問題点(NIIでの講義参照)は、全てのアブストラクトに関係していることを確認した。このワークショップを通して、前に言及されたトピックに的確に言及することが大事であることが判明した。また一方で、いくつかのケースでは、詳細すぎるディティールを読み手に提供しているために、却って不親切になっていることが発見された。いくつかのケースでは、より具体的であるがあまりにも詳しすぎる表現よりも、抽象的な用語を用いることが有用であるということである。
二日目には5本のアブストラクトについて議論した。初日に比べ、議論はより順調に進み、問題点はより明快になった。これは、前日のワークショップに比べて、少なくともある程度は、学生たちが論理的に文章を書く方法についてよりよい理解を得たためだと考えられる。
5)京都大学
a)山本章博教授との議論
Kowalski教授は、山本教授と、自然言語テキストから、論理形式で知識を検索する際の問題点を含む、数々のトピックについて議論した。
b)論文の書き方ワークショップ
ワークショップの始めに、効果的な自然言語対話に必要とされる主な論理的原則の概略説明をした。Kowalski教授は事前に生徒のアブストラクトを校閲したり、改善することで、ワークショップの準備をしていた。そのため、アブストラクトのディスカッションは、より徹底したものにすることができた。ディスカッション中、Kowalski教授が十分に理解出来ていなかった、著者がアブストラクト中で説明したかった数々の論点が明らかになった。
結果、このワークショップは、Kowalski教授、生徒共に相互に学習できる議論となった。Kowalski教授はこの相互ディスカッションを大変楽しむことができ、生徒にとっても、有意義だった。
c)情報学研究科特別講義
JAISTと奈良女子大とNAISTで行った、コンピューティングについて新たな論理的基礎を提案する講演である。山本教授より、Kowalski教授の講演の中のフレームワークの典型的なアプリケーションについて質問を受け、Kowalski教授は、この質問により、提案の枠組みに理論的用途と実践的用途の両方があることを明らかに出来ていなかったことに気がついた。理論的用途は、すべての分野のコンピュータに一つの一体化された枠組みを与えることであり、実践的用途は、すべてのアプリケーションに利用出来る一つのコンピュータ言語の基礎として提供することである。しかしながら、異なる種類のアプリケーションは異なる特徴をもつため、それぞれのアプリケーションドメインに最適化された専門の言語を開発することが有益であると思われる。
6)法的推論ワークショップ(JURISIN 2014)(慶応大学)
Kowalski教授は、ワークショップのディスカッションに参加した。多くの発表がKowalski教授の研究分野や研究対象に関係していた。Kowalski教授は溝口教授によるオントロジー工学の招待講演を高く評価した。特に、発表後半に紹介された、サブゴールに対してゴールを還元することについての実践的なアプリケーションを見ることに興味を示した。Kowalski教授は講演のあと、この特色について溝口教授と話し合い、この様なゴール還元ルールは、論理プログラミング形式で表現することが出来るかもしれないと示唆した。
また、Bart Verheij教授による招待講演は、ベイズ推定と議論とシナリオを融合し、一体化する手法についての発表であったが、Kowalski教授は、それは代価として論理の表現力を失うという指摘を行い、代わりに、同等の能力があるだけでなく、論理的プログラミングの知識表現と問題解決の能力も含む、仮説的論理プログラミングの使用を提案した。
7)法と情報学の日韓ワークショップ(NII)
ワークショップは、この分野の日韓の数々の研究者の発表で構成されていた。韓国のプレゼンテーションは、あまり技術的なものでなく、既存のシステムについてのものが主だった。しかしながら、Kowalski教授は、Hanmin Jung氏の発表の中で、重点がComplex Event Processing (CEP)に置かれていることに興味を持った。
8)湘南会議(「自然言語処理と論理的推論の融合による説明生成ワークショップ」)
本ワークショップは、自然言語処理と論理的推論の融合を目標としたものであるが、ほとんどの発表がこれらの2つのアプローチのどちらかであり、 NLPと論理的アプローチ両方を組み合わせたものは少なかった。Kowalski教授は、この二つのアプローチの融合は適切であり、web上に散らばっているテキストから論理形式でルールを引き出す大きなポテンシャルを持っていると確信した。
Kowalski教授はまた、この融合が機械学習から恩恵を受けることができると思った。ワークショップの発表が示しているように、このNLPと論理と機械学習の融合の実現化における主要なハードルは、論理学者から、このタスクに適切な論理が提案されていないからである。しかしながら、Kowalski教授は、簡単な結論とより複雑な条件の区別に着目した論理プログラミングがこの目的に適切な形式を提供するという、確かな根拠があると主張した。
9)北海道大学
a)情報科学研究科集中講義
Kowalski教授は、二つの講演を行った。一つ目は、計算論理と英語の文章体のガイドラインとの関係についてであり、二つ目は、コンピューティングについて新たな論理的基礎を提案する講演である。二つ目の講演においては、ホストの田中譲教授から、手続き型言語における状態転移にセマンティクスを与える関数プログラミングの継続利用について言及があった。これが、状況計算が論理的言語の構造問題の解決方法になるように、関数系言語の構造問題の論理的な解決方法となるかどうか、または、LPSが論理的言語の実践的側面を解決するように、より実践的な解決方法となるかをKowalski教授は今後検討することにした。
b)論文の書き方ワークショップ
5つの異なるアブストラクトによる論理学と英語のワークショップを行った。2つのアブストラクトは大変良くかけており、彼らのトピックはとても簡単に理解できた。それだけでなく、これらのアブストラクトの文章一つ一つを分析することは、アブストラクトを理解しやすくしている特徴を明確にすることにも役立った。2つのアブストラクトは理解するのが難しかった。そのうちの一つは、研究動機と研究の技術的詳細の間に大きなギャップがあった。生徒には抜けている詳細を埋めるのが難しく、生徒の問題解決の仮説を不必要に難しくすることを避けることができなかった。もう一つのアブストラクトの中で紹介された研究は、生徒が異なるパートの解決方法の関係性を明確に説明できていないようだった。5つめのアブストラクトは、あまり上手く書けているとは言えなかったが、我々は、アブストラクトをより簡単に理解できるようにする改善点を見つけることができた。
10)早稲田大学
a)情報学研究科集中講義
約200名の学部3年生に対する論理プログラミングの講義を行った。Kowalski教授は、生徒がとても静かに熱心に聴講していることに感心していた。
b)論文の書き方ワークショップ
7名の学生がアブストラクトを提出していた。ほとんどのアブストラクトは、とても技術的であり、限られた聴講者しか理解できなかった。Kowalski教授と学生は5時間を7つのアブストラクトについて議論したり改善したりするのに費やした。しかし、結果は、Kowalski教授が想像したよりもはるかに良いものだった。
アブストラクトに書かれている殆どのアイデアが大変ややこしく、素人には理解不可能であったにも関わらず、全てのケースにおいて、アブストラクトの中のゴールやサブゴール、原因と結果など、コンセプトの構造関係は明確にすることができた。アブストラクトの中には、研究で何をしたかは書かれていても、何故、研究がなされたのか書かれていないものもみられた。更に文章がゴールとサブゴールの関係を明らかにしていないものや、筆者にはわかりきったステップだが、読者は知らないであろう重要なステップに触れていないものがあった。多くのケースでは、文章が逆転していた。彼らは、新しい情報を文章の冒頭で紹介し、古い、前の文章で説明された内容を後に続けていた。文章の古い情報と新しい情報の順番を反対にすることは、アブストラクトをより首尾一貫したものにした。ほとんどのケースでKowalski教授自身理解出来なかったアブストラクトからスタートし、最後には、そのアブストラクトが元より長くないにも関わらず、Kowalski教授の限られた知識でも簡単に理解出来る物になり驚いた。Kowalski教授は、改良されたアブストラクトが、その分野の専門知識を持った読者に対しても理解しやすいものになっている印象を受けた。
11)受入研究者との共同研究
Kowalski教授は、本滞在中、受入研究者が行っている民法のプログラム化の研究(PROLEGプロジェクト)について議論を行い、このシステムと自然言語処理との融合による説明生成手法について話し合った。また、上記のJURISINワークショップで受け入れ研究者が発表した、事例ベース推論における議論構造の明示化についても議論を行った。さらに、義務論理におけるChisolmパラドックスを、仮説推論プログラム(ALP)構造で表現されている目的達成の異なる方法を参照することで置き換えられる可能性について議論した。

招へい研究者の受入機関に対する寄与(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

上述の国立情報学研究所における論文の書き方ワークショップは、Kowalski教授の長年の論理プログラミングの知見から行われたもので、論文をいかに論理的に明晰に書くべきかについての議論を主としたものであり、参加者は、自分の書いたアブストラクトについて直接Kowalski教授からコメントをもらうことで、その知見を直接、体得することができたといえ、非常に有益なものであった。
受入研究者は、国立情報学研究所滞在期間中だけではなく、各大学出張にもほとんど同行し、その間、知識表現、法的推論、論理プログラミングについてKowalski教授と議論し、これらについての理解を深めた。
以上よりこの招聘は、受入研究機関に良い成果を与えた。

その他

特になし