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国際事業部人物交流課
外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

平成25年度外国人著名研究者招へい事業報告書

事業報告書

Robert Anthony Kowalski

滞在中の日程

平成24年/年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
10月9日 来日
10月10日~18日 受け入れ研究者との研究討議
10月21日 東京から札幌へ移動
10月22日 北海道大学大学院情報科学研究科特別講義
http://www-cs.ist.hokudai.ac.jp/archives/2715
10月23日 北海道大学大学院情報科学研究科特別講義
10月24日 北海道大学大学院情報科学研究科特別講義
田中譲研究室の学生に対して「論文の書き方ワークショップ」開催
10月25日 SOCREAL-2013会議参加
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~k15696/home/sr13/
札幌から東京へ移動
10月27日~28日 法的推論ワークショップ(JURISIN 2013)参加@慶応大学
10月29日 JURISIN 2013 post-mini workshop参加
10月30日~11月1日 受け入れ研究者との研究討議
11月5日 JSPS安西理事長との懇談
11月6日 東京から福岡へ移動
11月7日 九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻集中講義
http://portal.isee.kyushu-u.ac.jp/topics/kowalski
11月8日 九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻にて「論文の書き方ワークショップ」開催
11月9日 福岡から東京へ移動
11月11日 国立情報学研究所における連続講義:第1講義
http://www.nii.ac.jp/en/event/list/1111/
11月12日 受け入れ研究者との研究討議
11月13日 東工大大学院総合理工学研究科にて「論文の書き方ワークショップ」開催
http://www.dis.titech.ac.jp/special_lecture131113.pdf
11月14日~15日 受け入れ研究者との研究討議
11月18日 国立情報学研究所における連続講義:第2講義
11月19日 東京から金沢へ移動
11月20日 JAIST片山学長との面談
JAIST情報科学科集中講義
http://www.jaist.ac.jp/event/2013/H251120is.pdf
11月21日 JAIST情報科学科集中講義
11月22日 JAIST情報科学科にて「論文の書き方ワークショップ」開催
11月23日 金沢から東京へ移動
11月25日 国立情報学研究所における連続講義:第3講義
11月26日 東京から京都へ移動
11月27日 京都大学大学院情報学研究科山本章博教授との討議
11月28日 京都大学大学院情報学研究科特別講義
http://www.i.kyoto-u.ac.jp/informatics-seminar/
11月29日 京都大学大学院情報学研究科にて「論文の書き方ワークショップ」開催
http://www.iip.ist.i.kyoto-u.ac.jp/member/akihiro/lectures/LogicAandEnglishWorkshop.html
11月30日 京都から東京へ移動
12月2日 国立情報学研究所における連続講義:第4講義
12月4日~6日 受け入れ研究者との研究討議
12月9日 離日
その他の本招聘に関わる活動  

(注)来日日及び離日日を含めて記入してください

受入実施の状況とその成果

研究計画に従い、Kowalski教授の招へい事業として以下を行った。
1)北海道大学大学院情報科学研究科における特別講義および「論文の書き方ワークショップ」開催
a)特別講義
講演1:The clausal form of logic as the language of thought(called LOT)
ここでは、英語・日本語といった自然言語と、(いかなる形態かを問わず)人間の思考で用いられる言語との関連性に焦点をあてて議論がなされた。主な争点は、LOT(思考言語)が、私たちが会話で用いる自然言語から独立したものであるか、あるいは、私たちが話す言語が思考方法に影響を及ぼしているか、という点だった。英語と日本語という言語の違いから、このトピックは議論の対象として人気があった。
講演2:Psychological studies of human reasoning and thinking
人間の思考に論理的性質はないという主張は、人間の思考に関する数々の心理学的研究によって裏付けられている。私は参加者にいくつかの心理テストを行い、その反応を見た。反応のうちのあるものは心理学的研究の結果に沿うものであった一方、他の反応は古典論理に沿うものであった。この結果を受け、これらの心理テストは適切に作られたものなのか、いくつかのケースでは不適切なものが用いられたのではないか、という議論が生じた。
講演3:Logic and legal reasoning
Kowalski教授は、計算論理(computational logic)の構文(syntax)と英語で書かれた法文の構造の関連性を示しつつ、いくつかの具体例を示した。また、不適切に書かれた英文を改善するために計算論理を用いることができるとのKowalski教授の見解を示した。これらの具体例は、日本法の法文の論理構造について興味深い議論を惹起した。
講演4:The logic of production systems
Production systemsは、人間の思考を説明する上でもっとも説得的な計算モデルとして広く認識されている。もっとも、Production systemsは論理的意味論(logical semantics)を持っていない。Kowalski教授はproduction system modelを示し、production systemsの論理的な公式化を提案した。参加者はproduction systemsについてあまり知らない様子だったので、これが論理学的意味や、論理ベースの証明過程(logic-based proof procedures)をもたらすものであることが、参加者にははっきりわからなかったかもしれない。
講演5:Abduction
Abductionは、observationsを説明するための候補たる異なる仮説群を生産するとともに、いずれが適切かを選択するという問題である。Abductive Logic Programming(ALP)は、これらの仮説群を、説明されるべきobservationsとの関係性が保証されるようなトップダウン方式で生産する。Kowalski教授は、候補として生産された仮説群の間で適切なものを選択するために有用な他のいくつかの基準についても議論した。この議論を受けて、トップダウン方式の理由づけとボトムアップ方式の理由づけの関係性について興味深い議論が生じた。
講演6:Logic and Decision Theory
ALPは、より高いレベルのゴールを達成するための候補としての異なる行動群を生産するとともに、適切なものを選択するためにも使うことができる。異なる候補の中から適切なものを選択するという問題は、古典的決定理論の主題である。Kowalski教授は、ALPが、abductionと決定理論、他にproduction systemsや複雑な認識、複雑なプロセス生成を融合するとともに一般化するという見解を示した。
b)論文の書き方ワークショップ
Kowalski教授は、PhD課程の学生たちに、各々のPhD thesesのabstractないしresearch paperを準備するよう求めた。これらは、北海道大学を訪れる前にKowalski教授に提出された。Kowalski教授は、ワークショップの前に学生たちが修正の時間を確保できるよう、提出されたabstractについて幅広くコメントして学生たちに返した。ワークショップでは、各abstractについて30分間、議論した。そして、論理学を用いることで、文書によるコミュニケーションの明瞭さ(clarity)と内容の一貫性(coherence)を劇的に改善できることが、今回の議論で確認できた。良い副次効果として、ワークショップは、学生たちが他の学生たちに自らの研究対象を説明する機会にもなった。
2) 法的推論のワークショップ(8th International Workshop on Juris-Informatics, JURISIN 2013)出席
Kowalski教授は、前回の同ワークショップ(JURISIN 2012)に引き続き今年も同ワークショップに出席し、いろいろな意見交換を行った。
3)JSPS安西理事長との懇談
Kowalski教授は安西理事長と懇談し、ヨーロッパにおける研究fundingのような政治的な話題から、計算理論における時間の概念の定式化のような理論的な問題にまで多岐にわたって討論を行った。
4)九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻における集中講義および「論文の書き方ワークショップ」開催
Kowalski教授は安西理事長と懇談し、ヨーロッパにおける研究fundingのような政治的な話題から、計算理論における時間の概念の定式化のような理論的な問題にまで多岐にわたって討論を行った。
a)集中講義
講演1:Computational Logic and the Language of Thought(called LOT)
この講演では、北海道大学での1つ目の講演と4つ目の講演のトピックについて話した。
講演2:Computational Logic and Decision Theory
この講演は、北海道大学での5つ目の講演と6つ目の講演のトピックについて話した。Kowalski教授は、abductive logic programming(ALP)が、決定理論やabductive explanation of observations を含むcomputingに関する多様な分野を融合するものであると主張した。この主張は、異なる適用分野ごとに異なるアプローチが必要であるとの通説に反するものである。議論の中で、Kowalski教授が提案しているアプローチがASP(answer set programming)といくつかの点で共通する性質を持つことが確認された。そして、両者の関連性と違いについて議論がなされた。
b)論文の書き方ワークショップ
Kowalski教授は、PhD課程の学生たちに、各々のPhD thesesのabstractないしresearch paperを準備するよう求めた。これらは、九州を訪れる前にKowalski教授に提出された。Kowalski教授は、ワークショップの前に提出された概要についてコメントして学生たちに返した。
北海道大学のときとは異なり、Kowalski教授はワークショップを短い講演から始め、Kowalski教授の最初の講演に参加できなかった者のため、論理学と英語についての一般的な理解を示した。参加者の中にはabstractを提出しなかった者も数多くいた。Kowalski教授たちは、20-30分ほどの時間を、それぞれのabstractについて議論するのに費やした。Kowalski教授は、文章の論理的構造とピラミッドないし三角形が相似の関係にあるという話をした。文書の最初でピラミッドの頂点を示すようにすることは重要である。abstractは、ピラミッドの下部まで説明することなく、その上部を示すことが望ましい。この話は、abstractの理想的な書き方を示す上で役立った様子だった。 北海道大学の場合と同様、良い副次的効果として、ワークショップは学生たちが他の学生たち――それも初対面の学生たち――に自らの研究対象を説明する機会にもなった。
5)東工大大学院総合理工学研究科における「論文の書き方ワークショップ」開催
Kowalski教授は、「論理学と英語」についての短い講演をし、その後に、ワークショップ(2時間30分)を行った。
ワークショップの中で、Kowalski教授たちは5つのabstractについて議論した。5つともそれぞれ異なるトピックに関するものだったが、似たような問題を抱えていた。多くのabstractで共通して問題だったのは、問題提起をはっきりと冒頭で示していないことだった。冒頭以降のある部分で、あるいはabstractの各所に散った形で、問題提起が示されていることもしばしばあった。問題提起が全く抜け落ちているものもあった。あるものは、議論を始めて20分経っても何が(提起されている)問題点なのかわからなかった。
全てのabstractで、research paperやabstractの中のある部分と別の部分の間に、goals/subgoalsの関係を見出すことができた。この関係が順序だって示されている場合もあれば、でたらめに示されている場合――この場合、abstractの理解は難しくなる――もあった。Kowalski教授は、一般的には、goals/subgoalsの関係性は、トップダウンの形で示す――具体的には、上位のgoalsを下位のsubgoalsに先立って示す――ことが望ましいとの見解を示した。 また、Kowalski教授は、良い論理的構造というものは、最初に先行研究について問題点を示しつつ説明し、次に、論文中で参照されている新たな研究がこの問題点に対処するものであることを説明するものであると述べた。これは、「良い構造の文章とは、既知の情報から始まって、新たな情報で終わるものである」というJoesph Williamによる良い文章形式(writing style)のガイドラインの延長にあるものである。
6)JAIST学長との議論、情報科学科における集中講義および「論文の書き方ワークショップ」開催
a)JAIST片山学長との議論
JAISTの組織と、人工知能と知識科学(Knowledge Science)についてのJAISTの研究について話し合った。そこでは、人間が自らの思考を自然言語の形で表現する手法と関連して、いかにして精神が思考を表すかという点について、非常に興味深い議論がなされた。ある興味深い論点は、人間及び(可能性として)他の動物における脳と精神の関係は、コンピュータにおけるハードウェアとソフトウェアの関係になぞらえることができるかもしれないというものだった。
b)集中講義
講義1:Computational Logic and Human Thinking
この講演では、北海道大学での1つ目の講演と4つ目の講演のトピックについて話した。
講義2:Towards a Logic-based Framework for Computing この講演は、プログラミング言語、データベースシステム、並列計算などのさまざまな計算原理を統合する新しい枠組みの提案であった。この枠組みは論理的モデル理論の中に破壊的代入を取り入れた特徴を持っており、論理で上の計算原理を統一するのに障害であった「フレーム問題」を回避するものである。
c)論文の書き方ワークショップ
このワークショップには、多数の生徒と、それに加えて、3人の英語教師を含む教授陣の参加があった。ワークショップでは、主にabstractの著者と参加の間で議論が行われ、abstractが何を説明しようとしているのかより明確にするよう求めるコメントがなされた。Kowalski教授は、他のワークショップ参加者に対しても、abstractに使われている表現が理解可能・明瞭なものか、尋ねた。結果的に、多くのabstractが、先行する部分との関係をはっきりさせないでideaを展開していることがわかった。これでは、abstractの真面目な読者は、著者の助けなしに説明されていない連関(missing link)を自己解釈で埋めることを強いられることになる。 Kowalski教授は、英語教師たちが、Kowalski教授のアプローチに同意してくれただけでなく、論理的関係性に注目することで、今まで無視されてきた英文の意味の明瞭性と全体の一貫性を改善するためのテクニックが見えてくることに気付いたようであった。
7)京都大学大学院情報学研究科における特別講義および「論文の書き方ワークショップ」開催
a)特別講義:English, Logic, and the Language of Thought
講演は、東工大で行ったワークショップ前の短めの講演同様に、ワークショップの導入部としての役割を果たした。もっとも、今回は東工大での講演内容を大幅に拡張し、技術的細目についての説明や具体例を大量に盛り込んだ。 Kowalski教授は、論理学が様々な方法で文章を改善するのに資すること、中でも意見や表現をピラミッド型(ないし三角形)――頂上付近に上位goalが、底部に下位goalと根拠(evidence)が位置づけられる形――に構築するのに資するとの見解を示した。良い文章というのは、典型的には、頂上から始まり、ピラミッドを下に下るように展開されるものである。
b) 論文の書き方ワークショップ
ワークショップでは、もっぱら、Master's課程とPhD課程の学生たちが書いた5つのabstractを改善する方法について議論がなされた。Abstractのうちの3つは、内容がはっきりしていたので、改善策についてよい議論をすることができた。 Abstractのうちの3つは、いずれも著者である生徒に何を言わんとしたのか説明するよう徹底して問い詰める必要があるほどに理解不能なものだった。3人とも、専門家以外でもabstractの内容を理解できるようにするためには何が必要なのか、よくわかっていない様子だった。議論を重ねたことにより、必要な情報を生徒たちから聞き出すことはできた。今回の経験により、生徒たちの文章力の向上につながるであろう。
8)国立情報学研究所における連続講義
講演1:The clausal form of logic as the language of thought
この講演は、九州で行った講演の修正版である。今回は、人間の思考に関するproduction system modelについての説明に重点を置いた。 ここでは、論理学とproduction systemsの関係や、beliefsとgoalsの違いと関係について、活気ある議論がなされた。goalsとbeliefsは同じsyntaxを持つ場合もあるので、はっきりと区別することは難しい。また、決定理論と不確実性(uncertainty)の役割についても議論した。意思決定がgoalsやbeliefsと同じ言語で表現できるのか、あるいは、思考と意思決定という2つのシステムは区別される必要があるのか、という質問があった。この議論からは、意思決定は、下位レベルにheuristic rulesを持ち、上位レベルにそれとは区別される意思決定機構を持つ二重のプロセスにcompileすることができるのではないか、という興味深い見解が浮かび上がってきた さらに、agentのgoalを真にするために必要な行動群(set of actions)は、最小限のものである必要があるのか?という興味深い質問がなされた。これは重要な問題で、単純に最小限というよりも適切な限定を課すために一層の検討が必要である。
講演2:Psychological studies of human reasoning and thinking
Kowalski教授は、人々が英文を古典論理のルールに従って論理的に解釈するかどうかをテストするために作られた心理学的実験の数々を(参加者を相手に)やってみた。講演の参加者は、実験に快く協力してくれた。実験結果は分かれた。というのも、心理学的研究において発表された結果と部分的にしか一致しなかったからである。講演で行った実験の結果は、人々がgoalによって理由づけを行うのではなく、beliefsによって様々に理由づけを行うという仮説をほぼ確証するものだった。もっとも、心理学的研究結果の大部分と比べて、講演での実験結果は、古典論理のルールにより一層合致するものだった。これは、参加者の多くが、過去に古典論理について学習していたからかもしれない。 より興味深いかもしれないのは、実験で使った英文の一部が意図した意味を正確に表現していないという仮説を、講演で行った実験が裏付けていることである。多くの場合、参加者は、文章をその記述通りの意味ではなく、意図された意味通りに解釈した。このことから、思考言語の論理を理解することにより、人々は一層明確に意思を伝えあうことができるようになるという第1回の講義の命題が裏付けられた。 講義の後半では、人間の思考に関するもっとも影響力ある計算モデルであるproduction systemsの話に戻った。Kowalski教授はproduction systemsの論理学的意味を提示した。
講演3:Logic and legal reasoning
この講演では、論理プログラミングを法的情報(legal information)に適用した例を3つ紹介した。1つ目の適用例には、記述形式が論理プログラミングの形式に近い英国国籍法(British Nationality Act)を用いた。英国国籍法の例は、受け入れ研究者が行っているPROLOG言語(の研究)の中心的課題である原則と例外の重要性をも示した。 2つ目の適用例は、ミシガン大学のリース契約終了条項である。これはもとの文章が不適切で、論理プログラミングの形式に書き直すことで意味がより明確になった。もっとも、書き直した後もあまり意味がはっきりしなかったことから、もともと意図されていた意味について興味深い議論が起こった。 3つ目の適用例は、ジュネーブにある世界保健機関(WHO)のスタッフと共同して作ったルール群である。これらのルール群は、国連加盟国における年間の幼児を対象とした免疫のカバー率を見積もるのに用いられたもので、それまで使われていたインフォーマルなルールを改善し、公的な見積もりをより一貫性と透明性があるものにした。
講演4:Logic and Decision Theory
計算論理(computational logic)は、goalsから代替的な一連の行動群(courses of actions)を含むsubgoalsを導出するプロセスを形成するのに使うことができる。異なる一連の行動群の間で選択をすることは、他方で、行動(の結果)の期待効用を見積もった上で期待効用を最大化する行動群の候補を提示するという古典決定理論のトピックでもある。 それゆえ、計算論理と古典決定理論は、相互に補完し合う関係にあり、それぞれの強みは組み合わせることができる。さらに、この2つの組み合わせは、人間と機械の知性について、いずれか一方の場合と比べて、より強力で包括性のあるフレームワークを生み出す。
9)受入研究者との共同研究
Kowalski教授と同時期に英国のBath大学およびKing’s Collegeより博士課程の学生が受入研究者の研究室にインターンシップで滞在しており、おもにそれらの学生との議論にKowalski教授に参加していただき、議論を行った。 Bath大学の学生は、議論の枠組みを行動の決定に用いることを研究しており、まさにKowalski教授のLogic and Decision Theoryとの親和性が高く、その学生のアイディアとKowalski教授の理論との比較を行い、学生に大きな影響を与えた。その結果、まず、論理プログラミングおよび議論の枠組みにより、可能な行動決定について計算を行ったあと、決定理論における効用を考えて、最適な行動決定をするという枠組みに到達した。 King’s Collegeの学生は、法令の条文における言葉の曖昧性の解消の研究を行った。法令の条文は、ピラミッド型(ないしは三角型)の構造――具体的には、上部が目的概念を示し、下部が抽象的な(もしくは文脈開放的な)概念の集合からなるピラミッド型の構造を持っていると見ることができる。本研究では、異なる種類の抽象的概念について、斬新な分析を行ったものである。これらの抽象的概念の解釈手法としては、事例ごとの特殊性に着目する方法と、特定の事例の判断において重きを置かれた「価値」に着目する方法がある。この両定式化の融合について議論を行い、事例ベース推論を行って曖昧性解消を行っても解消できない場合に価値ベース推論を行うという方式に到達した。
招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など) 上で述べた国立情報学研究所における連続講義は、Kowalski教授の最近の成果をまとめたもので、聴講者はその成果に触れる機会を得て非常に有益なものであった。 受入研究者は、国立情報学研究所滞在期間中だけではなく、各大学出張にも同行し、その間、知識表現、法的推論、論理プログラミングについてKowalski教授と議論し、これらについての理解を深めた。 以上よりこの招聘は、受入研究機関に良い成果を与えた。

その他

特になし