お問い合わせ先

国際事業部人物交流課
外国人著名研究者招へい担当
TEL03-3263-3443
FAX03-3263-1854

外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

平成25年度外国人著名研究者招へい事業報告書

事業報告書

Johann Deisenhofer 

滞在中の日程

平成25年/年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
10月9日 成田国際空港経由,福岡空港に来日
10月10日 福岡から熊本に移動
10月11日 熊本大学学長を表敬訪問
大学院薬学教育部にて研究討論,大学院および学部学生に対して講義
10月12日 熊本大学で開催の日本結晶学会年会に出席
10月13日 熊本大学で開催の日本結晶学会年会に出席,特別講演
10月14日 熊本から京都に移動
10月15日 フリータイム
10月16日 京都大学大学院理学研究科にて研究討論
10月17日 京都大学大学院理学研究科にて研究討論,講演
10月18日 京都大学大学院理学研究科にて研究討論
10月19日 フリータイム
10月20日 フリータイム
10月21日 京都から東京に移動
10月22日 東京大学大学院農学生命科学研究科にて研究討論,大学院および学部学生に対して講義
10月23日 東京大学大学院農学生命科学研究科にて講演
10月24日 東京大学大学院農学生命科学研究科にて研究討論
10月25日 成田国際空港から離日

(注)来日日及び離日日を含めて記入してください

受入実施の状況とその成果

今回の招へい事業においては次のような成果があった.

1)学術講演会
学術講演会は熊本大学,京都大学,東京大学において行った.熊本大学,京都大学における講演演題は,”Structural biology of photosynthetic light reactions”で,博士のノーベル賞受賞対象となった光合成の構造生物学研究のこれまでの発展と今後の進展を示すものであった.博士による講演要旨は次のようなものであった.
”In this lecture I will give an overview of crystal structures of photosynthetic reaction centers (RCs) and photosystems (PS I and PS II), with emphasis on common features. The structure of the RC from the purple bacterium Rhodopseudomonas viridis (now Blastochloris viridis), a complex of 4 protein subunits and 14 co-factors, showed in its core an arrangement of chlorophylls, pheophytins and quinones with an approximate twofold symmetry (Deisenhofer et al. 1985). This structural symmetry is in contrast to functional asymmetry, with electron transfer preferentially along only one of two paths formed by chlorophylls, a pheophytin, a quinone, ending on the second quinone. A similar twofold structural symmetry exists in the cores of PS I (Jordan et al. 2001) and PS II (Zouni et al. 2001; Umena et al. 2011). While the functional asymmetry is almost complete in PS II, it is less so in PS I (Poluektov et al. 2005). The structural similarity of the cores of RC, PS I, and PS II strongly supports the assumption of a common evolutionary origin of these complexes.”  
熊本大学での講演は,博士の滞在時期に開催された日本結晶学会平成25年度年会(年会実行委員長:熊本大学大学院自然科学研究科,吉朝 朗教授)における特別講演として行われ,博士は関係する構造生物学分野のポスター発表会場において参加者と議論するなど,積極的にこの年会に参加した.一方,東京大学での講演の演題は,”Structural insights into cholesterol homeostasis”で,博士の主要な研究テーマであったコレステロールのホメオスタシスに関して,博士の研究室での成果を中心にこの分野の最近の進展を示すものであった.計3回の講演会は,それぞれ参加者に大きな感銘を与え,講演後には活発な議論が行われた.なお,熊本および東京でのホスト研究者は,熊本大学,山縣ゆり子副学長(大学院生命科学研究部教授),東京大学大学院農学生命科学研究科,田之倉優教授であった.
2)研究討論
京都大学において,構造生物学およびタンパク質結晶学の先端研究に関して,またこの研究分野が成立したこれまでの過程について,Deisenhofer博士との幅広い議論が行われた.二名の若手研究者(博士後期課程大学院生と修士課程大学院生)が博士に対してそれぞれ自らの研究について発表を行った.うち一名のテーマは,タンパク質の翻訳時フォールディングの中間状態に関する研究,ほか一名は光合成反応中心と集光性アンテナタンパク質複合体の結晶学的研究に関するもので,受入研究者の研究室での最近の研究結果について,さまざまな議論と意見交換が行われた.とくに,光合成反応中心と集光性アンテナタンパク質複合体の結晶構造解析については,Deisenhofer博士のノーベル賞受賞対象となった研究との関連が深く,踏み込んだ議論が行われた.また,講演ならびに学生に対する講義で訪れた熊本大学および東京大学においても,それぞれのホスト研究者が行っている構造生物学研究について議論と意見交換が行われた.
3)学生に対する講義
この招へいでの主要な目的の一つであるDeisenhofer博士による学生のための英語による講義は,今年は熊本大学および東京大学で行った.一昨年度は,京都大学において,”Principles of X-ray Diffraction”というテーマで,理学部の2,3回生を主たる対象とした1回の講義を実施した.昨年度は,京都大学および北海道大学で,博士が2回の講義を行い,それぞれでの大学での受け入れ教員らが残りを補充するかたちで,単位の出る大学院生向けの特別講義を実施した.本年度は,昨年度の2回の講義内容を精査して,1回分にまとめた講義をそれぞれの大学で行った.内容は次の通りである.
講義タイトル:"Structural Biology: Past, present, and future"
要旨:Fifty years ago, the determination of three-dimensional structures of biological macromolecules was an exotic activity, practiced by only a few. Since then, Structural Biology has grown into a large field of research, which has influenced much of biology. This growth was made possible by developments in science and technology such as, for example, recombinant DNA methods, synchrotron radiation, high speed computers, etc. The lecture will describe some of the history and the developments with an emphasis on X-ray diffraction methods. It will also discuss likely directions structural biology may take in the near and intermediate future.
4)学長との意見交換
熊本大学においては谷口 功学長を表敬訪問して,学長と博士の共通する研究分野について,熊本大学の前身の第五高等学校出身の寺田寅彦博士の結晶学の創成期における研究についてなど,さまざまな意見の交換があった.

招へい研究者の受入機関に対する寄与

1) 学術講演会
学術講演会では,他部局からの聴講もあり,また,大学院生や博士研究員などの若手研究者も多く参加し,多くの聴講者に大きな感銘を与えたと思われる.講演の内容は,博士のノーベル賞受賞につながった光合成の構造生物学研究についてであり,博士の受賞研究(およそ30年前)で見いだされたことが,現在も光合成の初期過程における基本的な原理として普遍性を持っていることなど,若手研究者に研究とはどのようなものであるかということを考えさせる契機になり,刺激を与えたのではないかと思われる.
2)研究討論
研究討論では,研究室内の大学院生が中心となって参画し,プレゼンテーションを行った研究内容に対して,直接博士と議論,意見交換し,また,助言を受ける機会があり,極めて有意義であった.
このように,多くの若手研究者,学生が刺激を受け,国際化にも十分の効果があったと思われる.

その他

招へいを可能とした独立行政法人日本学術振興会に謝意を表したい.博士もあらためて同会への謝意を表していた.