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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Linda Brown Buck

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成25年  
2月10日 来日
夕刻:翌日のシンポジウムの講演者及びオーガナイザーとの懇談会に出席
2月11日 午後:国際シンポジウム「感覚受容と神経回路」において基調講演
演題”Olfactory Mechanisms and Neural Circuits in Mammals”
シンポジウム出席、研究者と研究討議
ポスター発表において若手研究者への研究指導及び意見交換 (於:東京大学伊藤謝恩ホール)
2月12日 終日:国際シンポジウム「感覚受容と神経回路」出席、研究者と研究討議
2月13日 午前:京都へ移動
午後:沼記念講演会において講演(於:京都大学芝蘭会館)
演題”Olfactory Mechanisms and Neural Circuits in Mammals”
若手研究者との意見交換会に参加、研究指導及び意見交換
2月14日 午後:国際高等研究所にて副所長、学術参与と意見交換
2月15日 離日。

受入実施の状況とその成果

前回の招へいでは、2011年12月に開催した「高等研カンファレンス“Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind”」及び「高等研レクチャー“神経科学の最前線-脳から心へ-”」において講演をいただき、その講演内容及びカンファレンスにおける議論での意見やアドバイスは、昨年度のカンファレンスにおいて多大な貢献をもたらした。

当研究所で実施している研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで解明できるか?」は、同カンファレンス・レクチャーの基礎となっているものであり、本年度が最終年度であることから、研究活動をさらに充実、展開させるため、Buck博士には、参加研究者として加わっていただくことになり、今回の招へいを行なった。 来日中には、上記研究プロジェクトのシンポジウム、京都大学での講演会、当研究所の副所長・学術参与との意見交換を通して、研究者との交流を積極的に図ることができた。 受入実施状況と成果は次のとおり。


○国際シンポジウム「感覚受容と神経回路」

このシンポジウムは、当研究所の研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで解明できるか?」の活動の一環とし、かつ、Buck博士らによる嗅覚受容体遺伝子の発見(1991年)から20年の節目を経たことから開催したものである。10周年記念シンポジウムは、ニューヨークのCold Spring Harbor研究所で2001年に開催されたが、今回のシンポジウムでは、化学情報受容の研究がその後どのように進展し、神経科学研究に寄与したか、について討議された。

Buck博士は基調講演において、”Olfactory Mechanisms and Neural Circuits in Mammals”と題して、哺乳動物が多くの異なる匂い物質をどのように検知し、それによって生み出される信号が脳の中でどのように伝達されるか、について紹介した。 同シンポジウムでは、Buck博士をはじめ海外の著名な嗅覚研究者ら6名と国内の主な神経科学者ら19名による招待講演があり、300名を超す学生や研究者らが参加した。講演では感覚情報受容についての新しい研究成果の報告があり、Buck博士も積極的に質疑応答に参加され、神経科学の最先端について白熱した議論が展開された。 また、50件もの若手研究者によるポスター発表が同時に行われ、Buck博士は若手研究者の熱意溢れる発表に耳を傾けていた。


○沼記念講演会

Buck博士は、嗅覚情報受容の分子機構のみならず、それぞれの受容体により多様な化学物質が神経情報にどう変換されるか、さらにフェロモンやにおいがどのように認識され行動へ影響を与えるか、などについて最新の知見に基づき講演を行った。特にアミンを認識するTrace amine associated receptors (TAARs)と呼ばれる新しい嗅覚受容体の構造や生理的役割、ウイルスベクターを用いた神経回路の同定技術について活発な議論が行われた。

講演会には、京都大学大学院医学研究科、生命科学研究科、理学研究科、工学研究科の教員、大学院生、学部生など100名を超える参加があり、大変盛況であった。

講演会終了後には、若手研究者との意見交換会が行われ、約30名の若手研究者が参加した。意見交換会では、講演内容に関する質疑応答のみならず、Buck博士がなぜ嗅覚について研究しようと思ったか、今どんな研究に興味があるか、などについての質問が出されるなど、活発な意見交換が行われた。


○国際高等研究所訪問

当研究所における今後の学術研究の推進と役割等について、当研究所の副所長及び学術参与と意見交換を行った。

昨年度から実施し、Buck博士にも参加いただいた「高等研カンファレンス」及び「高等研レクチャー」の印象について話を伺った後、今後の進め方について、Buck博士のこれまでの経験を踏まえた貴重な意見をいただいた。また、高等研の設立目的に照らしたうえで今後どのような研究を推進していくべきかについても意見をいただき、当研究所の研究活動を推進するうえで、大変参考になるものであった。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

東京でのシンポジウム及び京都での講演会には非常に多くの研究者が参加し、Buck博士は彼らとの交流を積極的に行った。若手研究者にとっては、Buck博士から研究に関する多くの示唆に富んだアドバイスを受けることが出来、極めて貴重な機会となった。

シンポジウムにおけるポスター発表では、50件ものポスター発表を1枚ずつ丁寧に見て回り、ポスターの前で自身の研究成果を話す若手研究者と積極的に意見交換をしていた。Buck博士からは、若手研究者の熱意と研究内容のレベルの高さについて賞賛のコメントを得た。このことは若手研究者が今後研究を進めていくうえで、大きな励みになることはいうまでもない。

また、沼記念講演会の後に行われた若手研究者との意見交換会では、若手研究者から「なぜ嗅覚について研究しようと思ったか」、「今どんな研究に興味があるか」などについて質問が出されたが、Buck博士からも同様の質問が若手研究者に投げかけられ、活発な意見交換が行われた。Buck博士の考えを聞き、研究への取組み方などについて自分自身で考える機会を得たことは、若手研究者にとって非常に有意義で極めて貴重な時間となったことであろう。

当研究所にとっては、今後の学術研究の進め方等について、Buck博士と意見交換できたことは、非常に有意義であった。さらに、今後の協力について快諾が得られたことから、当研究所の研究活動に対して、引き続き、大きな貢献を期待することができることとなった。

その他

外国人著名研究者招へい事業により、昨年度に引き続き今年度もBuck博士を招へいしていただいた日本学術振興会に深く感謝いたします。Buck博士とは今後も交流を続け、当研究所への助言等をいただくなど、当研究所の推進にご協力をいただきます。そのことは、日本の学術の進展にも大きな影響をもたらすものと確信しています。