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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Robert Anthony Kowalski

滞在中の日程 1日
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成24年  
10月31日 京都から東京へ移動
11月1日 NII湘南会議1周年シンポジウム
http://www.nii.ac.jp/en/about/international/shonanmtg/sympo2012/ に出席し”Towards a Logic-based, Unifying Framework fo Computing”という題で発表するとともに"What we expect for NII Shonan Meetings"というパネルにおいてパネル討論を行った。
11月2日 受入研究者および関西学院大学の高橋和子教授とともに議論システムについて議論を行った。
東京から京都へ移動
11月29日 京都から宮崎へ移動
11月30日 第6回International Workshop on Juris-Informatics(JURISIN 2012) http://www.kl.i.is.nagoya-u.ac.jp/jurisin2012/ に参加し「法的知識表現と推論に対する論理アプローチ」という特別セッションにてコメンテータとして各著者にコメントをするとともに、ワークショップ参加者との研究議論に参加
12月1日 JURISIN 2012においてワークショップ参加者との研究議論に参加
12月2日 宮崎から京都へ移動
その他の本招聘に
関わる活動
9月20日 受入研究者との共同研究計画の打ち合わせ(京大)
9月25日 プログラミング言語、データベース、パラレル処理などの様々な原理を統一する論理定式化および個別制約規則と全体制約規則の相互推論に関する受入研究者との議論(京大、京都大学・山本章博教授およびDavid Kinney准教授が同席)
9月28日 法的推論における明示的否定と失敗による否定との関連についての受入研究者との議論(京大)
10月5日 法的推論における明示的否定と失敗による否定との関連についての受入研究者との議論(京大)
10月11日~13日 第7回International Workshop on Information Search, Integration and Personalization (ISIP 2012) http://www.meme.hokudai.ac.jp/isip2012/ にてプログラミング言語、データベース、パラレル処理などの様々な原理を統一する論理定式化の発表およびそれについての受入研究者との議論(北大)
10月19日~20日 個別制約規則と全体制約規則の相互推論に関する受入研究者との議論(京大)
10月25日~26日 合同エージェントワークショップ&シンポジウム2012(JAWS2012) http://jaws-web.org/event/jaws2012/index.html にてプログラミング言語、データベース、パラレル処理などの様々な原理を統一する論理定式化の発表およびそれについての受入研究者との議論(掛川、ヤマハリゾートつま恋)
11月9日 個別制約規則と全体制約規則の相互推論に関する受入研究者との議論(京大)
11月15日~16日 個別制約規則と全体制約規則の相互推論に関する受入研究者との議論(京大)
11月22日 個別制約規則と全体制約規則の相互推論に関する受入研究者との議論(京大)
12月7日 BDIアーキテクチャに基づいた義務推論に関する受入研究者、Marina De Vos博士およびTina Balke博士との議論(京大)
12月12日~13日 受入研究者との共同研究のまとめ(京大)

受入実施の状況とその成果

本年度は、研究計画に従い、Kowalski教授の招へい事業として以下を行った。
なお、本年度に関しては、Kowalski教授は京大に客員教授として招へいされていたので、本国の英国からの招聘ではなく、京大からの招へいおよび京大のKowalski研究室またはKowalski教授の出張先での研究討論を行った。

(1) NII湘南会議1周年シンポジウムにおける基調講演およびパネル討論

NII湘南会議とは、計算機科学の専門分野ごとに葉山国際湘南村において1週間、著名研究者および若手の新鋭研究者が集まり、集中的に研究討論を行う継続的な会議である。この集会は国立情報学研究所が主催しており、2012年11月1日に1周年を記念して国際シンポジウムを行い、計算機科学の著名研究者が一同に介する。したがって、Kowalski教授に本事業の招聘研究者として講演いただくことは名誉なことでもあり、また日本の有数の研究者もシンポジウムに参加するので、日本の研究者への知識伝達にも資すると考え、基調講演ならびにパネル討論をお願いした。

90人の出席者のうち40%が外国人という国際的なシンポジウムのなかで、Kowalski教授は、"Towards a Logic-based, Unifying Framework for Computing"という題の講演を行った。これは彼の最も最近の研究成果であり、プログラミング言語、データベースシステム、並列計算などのさまざまな計算原理を統合する新しい枠組みの提案である。この枠組みは論理的モデル理論の中に破壊的代入を取り入れた特徴を持っており、論理で上の計算原理を統一するのに障害であった「フレーム問題」を回避するものである。彼はまた、「NII湘南会議に期待するもの」というパネル討論に参加し、彼の国際協力の経験からどのようにこのような国際集会を盛んにしていくかについての提案を行った。

(2) 受入者と以下の共同研究を行った

(a) 仮説論理プログラミングを基にしたエージェントモデルを洗練させ、人間の意思決定理論や計画生成推論に対する より完全なモデルを構築する共同研究を行った。
(b) LOT理論を発展させ、人間の実際のコミュニケーションを改善するような方法を構築する共同研究を行った。このコミュニケーションに関しては、法廷で行われている弁論の攻撃防御のような議論枠組みを構築することが含まれる。
(c) 上記理論に関連した法的推論のワークショップ(7th International Workshop on Juris-Informatics, JURISIN 2012)に11/30, 12/1に参加していただいた。本ワークショップは私も共同企画者として参画しており、また、参加者も法的推論の研究者であるため、そこでのKowalski教授との議論により日本の法的推論の研究者の研究に資することを目的とした。

活動(a)及び(b)については、受入研究者(佐藤 健)が、Kowalski教授の滞在先である京大およびKowalski先生の出張先に出向き、研究討論を行った。(a)については主に計算科学における計算原理の統一理論についての議論を行った(9月20,25日, 10月11-13, 25-26日)。(b)については、主に法的推論および義務推論について議論を行った(9月25, 28日, 10月5, 19-20日, 11月2, 9, 15, 22日, 12月7日)。これらの議論の結果として、個別制約規則(individual norm)と全体制約規則(global norm)の相互関係についての興味深い問題を発見した。この問題は、個別制約規則を各個人が順守することによって全体制約規則が順守されるようになるかという問題や、逆に全体制約規則が与えられたときに、その全体制約規則が順守されるためには個別制約規則をどのように設計すればよいかという問題を含む。たとえば、前者の例でいえば、もしわれわれがいつも交通信号を守っていたときには、衝突は絶対起こらないことを論理的に保証できるかどうか、ということである。これらの問題は非常に新しい興味深い問題であり、この問題について、彼の計算原理の統一的枠組みの中でどのように扱えばよいかについて来年度より深く研究することになった。

活動(c)について, Kowalski教授に参加いただいたワークショップは"juris-inforamtics"という法学と情報学を融合させた新しい学問領域に関するものである。JURISINワークショップの目的はjuris-informaticsに関わる法学、社会学、情報学などからさまざまな背景を持つ研究者および実務家が一同に介して、法と情報学に関わるテーマを話し合うワークショップである。今回のワークショップは第6回目で、人工知能学会が主催しているInternational Sympoisum on AI 2012(ISAI 2012)の一環として宮崎で開かれた。Kowalski教授は、70年代に論理プログラミングの創始者となっただけではなく80年代初期には論理プログラミングを用いた法的推論の研究の先駆者でもあった。法的推論の研究では英国国籍法(British Nationality Act)に関しての定式化が有名である。このため、本ワークショップ参加者が彼と議論することによって、我々の研究分野の活性化が図られると考えられた。特に彼は、4つの論文からなる「法的知識表現と推論に対する論理アプローチ」において各著者に対してコメンテータとして詳細なコメントを行った。それら4つの論文は、 "Detecting Conflicts in Legal Systems" by Tingting Li, Tina Balke, Marina De   Vos, Ken Satoh and Julian Padget, "Modelling Legitimate Expectations" by Marina De Vos, Tina Balke and Ken Satoh, "Misconception in Legal Cases From Dynamic Logical Viewpoints" by Katsuhiko Sano,Ryo Hatano and Satoshi Tojo, "On Generality of PROLEG Knowledge Representation" by Ken Satoh, Takamune Kogawa,Nao Okada, Kentaro Omori, Shunsuke Omura and Kazuki Tsuchiy である。
Kowalki教授のコメントの例を挙げると、受入研究者の最後の発表した論文について、彼は、英国国籍法における法律の問題を挙げて、受入研究者の言語においてどのように表現するのかを質問された。受入研究者は、その質問に答えていく過程で、法的推論の表現方法の理解が深まった。

以上のように、Kowalski教授は、招待講演や研究者と教授との直接の討論により、日本の情報学研究者の知識を高めて、日本における情報学の発展に寄与したといえる。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

NII湘南会議は受入機関の国立情報学研究所により運営されており、一周年記念シンポジウムに出席したNII研究者が, Kowalski教授の招待講演を聴講することによりKowalski教授の最先端の研究成果について触れたことは今後の情報学研究に役に立つと思われる。また、Kowalski教授のNII湘南会議の運営に関するアドバイスもこれからの発展の上で貴重なものといえる。
受入研究者は、ほぼ毎週、知識表現、法的推論、マルチエージェントシステムについてKowalski教授と議論し、これらについての理解を深めた。また、個別制約規則(individual norm)と全体制約規則(global norm)の相互関係という新しい問題を発見し、来年度はこの問題をより深く掘り下げる予定である。
以上よりこの招聘は、受入研究機関に良い成果を与えただけではなく、新しい問題の発見という成果を得た。

その他

特になし。