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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Jean Pierre Changeux

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成24年  
8月31日 来日
夕刻:在日フランス大使館にてフランソワ=ザビエル・レジェ公使と面談
    日本とフランスの科学交流について意見交換
9月1日 午前:理化学研究所御子柴教授、東京大学佐々木教授と研究打ち合わせ

午後:来日シンポジウム「ルイ・パスツール生誕190周年記念:脳神経障害からの回復を目指して」において講演
(於:ベルサール神田)
演題「神経レセプターの発見から治療薬の開発まで」

9月2日 午後:東京大学理学研究科坂野仁研究室訪問
    研究施設等見学、研究者との研究討議、 若手研究者の研究指導及び意見交換
9月3日 終日:理化学研究所脳科学総合研究所訪問
    研究施設等見学、研究者との研究討議、     若手研究者の研究指導及び意見交換
    理化学研究所脳科学総合研究所スペシャルセミナーにて講演
    演題 ”Theoretical and Experimental Approaches to Conscious Processing”
9月4日 京都へ移動
9月5日 講演準備
9月6日 午後:国際高等研究所にて所長、副所長と懇談
9月7日

午後:沼記念講演会において講演(於:京都大学芝蘭会館)
演題「アロステリック制御 - 生体における情報伝達機構の原理解明と創薬開発の基盤 - その歴史と展望」
研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで解明できるか?」研究会において研究者との研究討議、若手研究者との意見交換

9月8日 離日

受入実施の状況とその成果

前回の招へいでは、昨年12月に開催した「高等研カンファレンス“Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind”」及び「高等研レクチャー“神経科学の最前線-脳から心へ-”」において講演をいただき、その講演内容及びカンファレンスにおける議論での発言内容は、昨年度のカンファレンスにおいて多大な貢献をもたらした。
当研究所で実施している研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで解明できるか?」は、同カンファレンス・レクチャーの基礎となっているものであり、本年度が最終年度であることから、研究活動をさらに充実、展開させるため、Changeux博士には、参加研究者として加わっていただくことになり、今回の招へいを行なった。
来日中には、上記研究プロジェクトの研究会以外にも、当研究所の所長・副所長との懇談会、講演会2件、関係機関訪問など精力的に活動され、研究者との交流を積極的に図られた。主な受入実施状況と成果は次のとおり。


○来日シンポジウム「ルイ・パスツール生誕190周年記念:脳神経障害からの回復を目指して」

(日本パスツール協会主催、国際高等研究所後援)
 「神経レセプターの発見から治療薬の開発まで」と題して、ニコチン受容体を中心としてアロステリックなチャネルの機能を紹介され、病気とどの様なかかわりがあるか、特にニコチン受容体のノックアウトマウスを例にして、脳障害と治療薬との関連も紹介された。会場からは病気の治療法に関する質問が多く出され、それに対してニコチン受容体を例にして分子レベルでの治療メカニズムも紹介された。
  Changeux博士の講演の他にも3本の講演があり、先生はどの講演も熱心に聴講され、必ずいくつかの質問をされていた。そのことにより、より活発な質疑応答が行われ、シンポジウムが活気づいたものになった。シンポジウムには大学、研究機関、製薬会社等の関係者が70名参加し、大変盛況であった。


○理化学研究所脳科学総合研究所訪問

理化学研究所では、“Theoretical and Experimental Approaches to Conscious Processing”と題した講演を行った。理化学研究所脳科学総合研究所の研究者を中心とした約80名参加したが、会場に用意していた椅子が足りなくなるほど盛況であった。会場からは「脳の認識」の問題と「ニコチン受容体」と「アロステリック変換機構」など様々な質問が出たが、常に構造(結晶構造)から全ての現象を解明してゆく一貫した流れの明解な講演であった。大変多くの質問があり、1時間30分の講演と40分にわたる質疑応答となった。中身の大変深い講演であったために、「質問をしている間により深い内容に入り、理解の割合が大変深まった」と、Changeux博士も参加者も喜んでおられた。その後引き続き行われた学術交流会においても、Changeux博士の周りにはたくさんの研究者が集まり、講演会の余韻を残したまま活発な議論を交わされていた。
  講演の前には、1時間ごとに6つの研究室訪問を行い、途中の昼食時には9名の若手研究者との意見交換会を行うなど、精力的に研究者との学術交流を行われた。


○国際高等研究所訪問

当研究所の所長・副所長と懇談会を行い、当研究所における今後の学術研究の推進と役割等について懇談会を行った。昨年度から実施し、Changeux博士にも参加いただいた「高等研カンファレンス」及び「高等研レクチャー」の印象について話を伺った後、今後の進め方について留意すべき点などについて、Changeux博士のこれまでの経験を踏まえた貴重な意見をいただいた。また、高等研の設立目的に照らしたうえで今後どのような研究を推進していくべきかについても、具体的なテーマを何点かお示しいただいたうえで、その前提としてヘッドライン(焦点)を示すことが重要であるとの意見をいただいた。Changeux博士の意見は当研究所の研究活動を推進するうえで、大変参考になるものであった。


○沼記念講演会

「Allostery, signal transduction and drug design: past and future(アロステリック制御 - 生体における情報伝達機構の原理解明と創薬開発の基盤 - その歴史と展望)」と題した講演では、「アロステリック」のアイデアの発端と意義について述べられた。Monod氏、Wyman氏とともにMonod-Wyman-Changeux (MWC) modelの提唱者であるChangeux博士は、バクテリアの酵素やヘモグロビンのアロステリック制御に関する初期の研究について説明された。さらにX線構造解析により得られたタンパクの高次構造に関する最新の知見に基づいてアロステリック制御による生体メカニズムの原理解明や創薬への応用について解説された。講演に対し、会場からはいくつもの質問が出され、それに対して発表に使用した以外のスライドを示されるなどして、ひとつずつ丁寧に説明をされ、活発な質疑応答が行われた。講演会には京都大学医学研究科、生命科学研究科、理学研究科、工学研究科の教員、大学院生、学部生など70名参加し、大変盛況であった。


○研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで解明できるか?」研究会

沼記念講演会での講演を受け、タンパクの分子レベルの解析から意識のような高次の脳機能にいたる様々な問題について活発に議論を行った。本研究プロジェクトは今年度が最終年であるが、昨年度のカンファレンスでのChangeux博士の講演と議論と、今回の議論を踏まえ、研究活動をさらに展開させるための重要な示唆を得ることができた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

来日中、Changeux博士は非常に多くの研究者との交流を積極的に行われた。特に若手研究者との意見交換は、毎回予定時間を大幅に超える議論が続いた。どの若手研究者も、この機会にと積極的に質問をし、先生との議論を楽しんでいた。Changeux博士はタンパク質のアロステリックモデルを提唱した世界的先駆者として著名な業績を残されており、講演でもそのアイデアの発端と意義について説明をされていたが、その中で「最近の研究は流行の研究を行おうとする傾向が多いのに対して、自ら流行を作り出すことが大切である」と話されたことは、今後の若手研究者に大きな感銘を与えた。また、先のことにとらわれない大局的な見方をするChangeux博士の姿勢も若手研究者に大きな刺激を与えた。Changeux博士は、どの質問に対しても真摯に丁寧に答えておられたので、質問をしている間により深い内容に議論が及び、若手研究者からの質問が途切れることがなかった。その場にいた若手研究者にとって非常に有意義なものになったことはいうまでもない。

当研究所にとっては、Changeux博士から当研究所の今後の学術研究の推進と役割等について、焦点を示す重要性だけでなく、具体的なテーマなどについてもご意見をいただいたことは、今後の研究活動を推進するにあたり非常に有意義なことであった。また今後の協力についても快諾してくださり、今後も当研究所の研究活動に大きな貢献をもたらしていただけることとなった。

その他

外国人著名研究者招へい事業により、昨年度に引き続き今年度もChangeux博士を招へいしていただいた日本学術振興会に深く感謝いたします。Changeux博士とは今後も交流を続け、当研究所への助言等をいただくなど、当研究所の推進にご協力をいただきます。そのことは、日本の学術の進展にも大きな影響をもたらすものと確信しています。