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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Jean Pierre Changeux

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成23年  
12月4日 来日
夕刻:所長、副所長、翌日の講演会の座長及び他の講演者と懇談会に出席
    (於:ホテルオークラ東京)
12月5日 午前:講演会関係者との打合せ

午後:高等研レクチャー2011「神経科学の最前線‐脳からこころへ‐」において講演(於:東京大学安田講堂)
演題「Allosteric receptors: from molecular biology to conscious processing」

12月6日

午後:国際高等研究所(京都府木津川市)へ移動
高等研カンファレンスIIAS Research Conference 2011 on “Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind ”出席、研究者と研究討議

12月7日 終日:高等研カンファレンス出席、研究者と研究討議
12月8日

終日:高等研カンファレンス出席、研究者と研究討議
特にPoster Presentationの時間において、若手研究者と意見交換や研究指導

12月9日

終日:高等研カンファレンス出席、研究者との研究討議
Closing Lectureとして講演
演題「Experimental and theoretical approaches to conscious processing」

12月10日 離日

受入実施の状況とその成果

国際高等研究所は、従来の学問の分野を超えた異分野の優れた研究者たちの対話による相互理解と緊密な接触を最大の特徴とし、この特徴を背景にして、次世代の「学術の芽」を発掘し、さらにそれを育成して、次世代の学術の方向性について提言することを主たる目的として研究活動を行なっている。
  今回の招へいでは、国際高等研究所で今年度から開催した「高等研レクチャー」及び「高等研カンファレンス」において講演をいただいた。これらは、学術の将来の在り方や問題等ついて様々な提言することを主たる目的としている当研究所の研究活動の新たな取り組みの一つとして実施されたものである。
  高等研レクチャーは、学生・若手研究者をはじめ、一般市民を対象としたもので、ヒトのこころや意識等の高次脳機能神経機能が、分子生物学的なアプローチによってどこまで解明できるかをテーマとし、「神経科学の最前線-脳から心へ-」と題して開催した。Changeux先生をはじめとする世界の先端を行く科学者に、それぞれの立場から最先端の学術研究の一端を語ってもらうだけでなく、最先端の学問はどのようにして切り拓かれるものか、研究活動に必要な洞察力や観察力はどのようなものかなどを踏まえて講演いただいたことで、単に専門的知識を参加者に与えただけでなく、すべての講演者の研究に対する態度や情熱が参加者に伝わり、深い感銘を与えた。特に、参加者の多くをしめた大学院生や若手研究者らを啓蒙し、彼らの今後の研究活動に大いに刺激を与える機会になった。また、一般からも多岐にわたる職業や専門の方が参加し、その講演の関心の高さがうかがえた。
  引き続き開催した高等研カンファレンスは、高等研レクチャーの内容をさらに深化させ、近年急速な進展を遂げている脳神経科学の中で、とりわけ感覚受容をめぐるニューラルネットワークに関する分子生物学的研究と高次脳機能の機構解明の可能性に焦点をあて「Frontiers in Neuroscience: From Brain to Mind」 と題して開催した。Changeux先生をはじめとする国際的にも一流の研究者が一堂に会し、各研究者が主として未発表のデータを持ち寄り、研究者としてのプライドをかけて発表を行なった。このカンファレンスは、単なる研究発表を行なうだけでなく、議論することに多くの時間を充てたことが大きな特色で、その白熱した議論を通して、参加者全員が神経科学の次のターゲットを共有することができた。このような「場」を提供することにより、単に研究成果の発信ということだけでなく、広く研究者、学界等に向かって、新たな学術研究が展開する可能性を示すことができた。これを継続していくことにより、当研究所の主たる目的がより具現化され、その意味でも今回のカンファレンスの成功は、今後につながる有意義なものであった。

 

高等研レクチャー

高等研レクチャーでは、Changeux先生をはじめとし、2004年にノーベル医学生理学賞を受賞したLinda Buck氏(フレッドハッチンソンがん研究所)、David Anderson氏(カリフォルニア工科大学)、松沢哲郎氏(京都大学)といった世界の先端を行く4名の科学者が講演した。
Changeux先生はその中で、「Allosteric receptors: from molecular biology to conscious processing」と題して講演を行なった。講演では、主に分子生物学から意識に至るアロステリックモデルについて発表があり、非常に興味深いものであった。Changeux先生の講演は、人の意識に関する考察について、刺激受容体のアロステリック性を基盤にした問題を提起するものであった。
  講演には、約300名の参加者が集まり、その多くが大学院生などの若手研究者であった。時間の都合上、会場での質疑応答の時間をとることができなかったが、講演会終了後には、参加者自らがChangeux先生に話しかけに行く姿が見られた。

高等研カンファレンス

12月6日から9日の4日間にわたって開催された高等研カンファレンスには、Changeux先生、先述のLinda Buck氏、David Anderson氏に加え、Michael Greenberg氏(ハーバード大学)、Michael Stryker氏(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)をはじめとする国際的にも一流の研究者25名が一堂に会した。
  カンファレンスでは、Linda Buck氏のOpening Lectureをはじめ、7つのセッション(招待講演23件、Short talks3件)があり、Changeux先生は、どの研究者の発表にも非常に熱心に耳を傾け、積極的に質疑・議論に参加された。
  またChangeux先生ご自身は、最終日のClosing Lectureにおいて、「Experimental and theoretical approaches to conscious processing」と題して、意識についての実験的及び理論的アプローチについて講演された。講演内容はカンファレンスを締めくくるにふさわしい包括的な内容で、参加者から多くの質問があり、ひとつひとつに丁寧に答えておられた。
  招待講演のほか、公募による若手研究者によるポスター発表が、当研究所のある関西文化学術研究都市内の研究機関や京都大学、大阪大学などからはもちろん、全国の大学や研究機関から20件、さらには海外から8件あり、Changeux先生と若手研究者が議論し、研究指導する非常によい機会となった。長年に渡り、パスツール研究所を代表する研究者として活躍されているChangeux先生は、常に学問の先端を切り拓くチャレンジ精神に満ちた研究者で、Changeux先生とこのような機会を持つことができたことは、若手研究者の今後の研究活動に大きな励みを与えることができた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

若手研究者への刺激という点では、4日間に渡るカンファレンスの講演会場で行われたChangeux先生をはじめとする一流の研究者間の白熱した議論が、若手研究者にとって非常に大きな刺激を与えたことは間違いない。
  また、カンファレンスにおけるポスタープレゼンテーションの時間も大変有効であった。プログラム上は3日目に2時間の枠で設けたが、ポスタープレゼンテーションの会場と朝食と昼食を含む懇談会の会場を併設することにより、会期中いつでも若手研究者が自身の研究について他の研究者と議論できる環境とした。そのため、昼食時などにもポスターを前に若手研究者とChangeux先生らが意見交換や議論する姿が頻度多く見られた。一流の研究者を前に、自身の研究発表をする機会を得たことは若手研究者にとって大変貴重な体験であり、またそれに対する議論やアドバイスは、彼らの研究活動に大いに示唆を与えるものであり、今後の研究を続けるうえでの大きな励みとなった。
  ポスター発表者以外にも、国内講演者の研究室の学生を会場スタッフとして参加させ、著名研究者の最先端の研究発表や研究者同士の質の高い議論に直に触れる機会を実現した。このような機会が彼らに与えた刺激は計り知れないものとなった。
  また、高等研レクチャーは、東京大学で開催したこともあり、多くの大学院生が参加し、熱心に聴講していた。世界の先端を行く研究者の声を直に聞いたことは、彼らを啓蒙し、今後の研究活動に大いに刺激を与えた。

当研究所に対する寄与という点では、当研究所が、Changeux先生をはじめ国際的に一流の研究者を招へいし、そこで質の高い議論する「場」を提供できる機関として、招待講演者や参加者はいうまでもなく、それ以外のコミュニティにもその存在を知らしめることができた。このレクチャー、カンファレンスの成功を礎にしてこれを継続することで、先に述べた当研究所の主たる目的がより具現化されることは間違いない。そのなかでも、特にChangeux先生の講演は、当研究所の研究活動の推進に大きく貢献いただいた。Gordon Research Conference、Keystone Conference 、Cold Spring Harbor Meetingのように、これらを継続させていくことで、当研究所の存在を世界に大きくアピールすることができ、ひいては日本の学術の地位を高めることとなる。
  また、このような非常に高い水準での国際的・学際的な研究交流の機会は、今回の参加者が所属するマックスプランク研究所をはじめとする国際的な研究機関と当研究所との連携を今後深めるために、大変有効であった。

その他

外国人著名研究者招へい事業により、Changeux先生の招へいを可能とした日本学術振興会に深く感謝いたします。Changeux先生とは今後も交流を続け、当研究所への助言等をいただくなど、当研究所の研究活動の推進にご協力いただきます。そのことは、日本の学術の進展にも大きな影響をもたらしていただけるものと思われます。