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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

Maxim Kontsevich

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成22年  
10月30日 AF292便にてパリ発。
10月31日 関西空港着。着後、宿泊先へ移動。
京都大学数理解析研究所を訪問し、柏原正樹教授、深谷賢治教授、加藤毅教授らと研究討論を行う。
11月1日~11月5日 国際研究集会「Noncommutative Geometry and Physics 2010」および林原フォーラムに参加し研究討論を行う。
11月6日 林原フォーラム市民講演会に参加し、学生らと討議を行う。
11月7日 京都大学数理解析研究所を訪問し、加藤正樹教授、Yakov Eliashbergs氏ら国際研究集会参加者らと研究討論を行う。
11月8日~11月12日 国際研究集会「Noncommutative Geometry and Physics 2010」に参加し、講演と研究討論を行う。
11月13日 AF291便にて関西空港より帰国。

受入実施の状況とその成果

Maxime Kontsevitch教授の著名研究者招聘事業は今年度が最終年度にあたる。そこで、昨年までの集大成を勘案して、今年度は、京都大学数理解析研究所での2010年プロジェクト研究「変形量子化問題と非可換幾何学の新展開に向けて」の国際研究集会の参加を要請し、2週間の来日となった。同氏は、この研究集会のアドバイザーとして討議テーマの検討や招待講演者の推薦等、来日前に多くの協力をしていただくことができた。また自らも、世界で未発表の研究について、3回の連続講演を承諾してくれた。

2010年10月31日に関西空港に到着後、その足で京都大学数理解析研究所に来所し、翌日から始まる国際会議の綿密なスケジュール作成に同席していただけた。11月1日と11月2日は、代数解析の立場からの変形量子化問題についての討論を行った。パリ第6大学Pierre Schapira教授、京都大学理学柏原正樹特任教授、京都大学数理解析研究所望月拓郎准教授が行ったD-束理論およびその応用について、同氏からの多くの質問と討議があった。また、数理物理学での代数的問題について、エコールポリテクニック・フランス高等科学研究所Pierre Cartier名誉教授とステクロフ研究所・韓国高等科学研究所Dmitry Kalden教授の講演について、自身の研究との関連性について、多くの討論を重ねた。

11月3日から5日にかけては、林原共済会が主に主催する林原フォーラムに於いてシンプレクティック幾何学・非可換幾何学・物理学に関する討議を行った。ここでは、シンプレクティック幾何学・接触幾何学のトポロジーの側面から不変量についての講演が、スタンフォード大学Yakov Eliaashberg教授、京都大学理学部深谷賢治教授によって行われた。これは、Kontsevich教授が提案した不変量と深く関連しており、自身の研究をもとに、さまざまな討議をすることができた。

11月6日は、京都大学百周年記念時計台ホールにて市民講演会を行った。これは 同氏の提案で、数学と物理学の融合を目的として、京都大学基礎物理学研究所佐々木節教授による宇宙の誕生と進化についての講演、今回林原フォーラムで来日したスタンフォード大学Yakov Eliashberg教授による「Rigidand Flexible Geometry」の講演を企画することができた。その後、林原フォーラム顧問委員の東京大学鈴木増雄名誉教授による討論形式の対話の中に、Kontsevich教授も参加され一般市民や学生と有意義な時間を作ることができた。

11月7日は、京都大学数理解析研究所において、国際会議に来日した海外研究者および日本の研究者とインフォーマルな研究討論を行った。特に、次週に話す予定の積分可能系についての独自のアプローチについて、若手研究者を含めて、そのアイデアを披露した。

11月8日から12日にかけての国際会議のなかで、3回の精力的な講義を行った。今回は、積分可能系を量子的な立場の見方と超ケーラー構造の発見について、今まで未発表の研究について講演を行った。参加していた多くの研究者は、その独創的な発想に感嘆し、多くの注目を集めた。特に、若手研究者たちに対して、講演後多くの時間をかけて議論を続けたことで、若手研究者にとって大きな影響を与えたといえる。

今回は、2週間の大変濃厚な国際会議開催のなかで、招聘者が若手研究者に訴えたいことが十分伝わり、また、アジアからも同氏が来日することを知り、この国際会議に参加をしてきたことは、日本の研究拠点としてアピールができた有意義な招聘となった。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

1)学術上の進展
招聘研究者は、ポアソン構造の変形理論の存在についての研究がフィールズ賞受賞のひとつの理由となっている。この研究分野は、日本ではあまり浸透していないが、重要な研究成果を上げている研究グループが今回の招聘につながっている。同氏は、graded differential algebra, qusi-homomorphism,operado theory, 等をこの中から生み出し、これが現在大きな研究テーマとして国際的に発展している。これらの研究に従事している研究者にとっては、パイオニアである同氏の来日と実際に討議を行えたことで大きな意義があったといえる。特に、先端若手研究者への影響は多大であった。さらには、motivic積分や代数多様体の変形理論、幾何学的不変量についての講義や討論を通して、同氏のはかり知れないほどの、スケールを吸収することで、本研究機関が同氏の受け入れ拠点となって日本の数学への大きな影響を与えることができたといえる。

2)若手研究者への影響
前述にも述べたように、現在最も先端にいる数学研究者と若手研究者がじかに触れ合うことができたことは、今後の若手研究者にとって相当大きな影響を与えることができたと言える。同氏は、大変フランクな方で、城崎シンポジウムという若手研究者が主体となって行っている合宿形式のセミナーに参加され、若手研究者と深夜まで議論を行ったりしている。このような数学に情熱をもった国際的研究者と寝食を共にするような機会はめったにない。また、受け入れ機関の若手研究者も同氏の活動に積極的に参加し、大きな刺激を得ている。今回の著名人招聘のもっとも効果があったことだと特筆できる。

3)国際的なアピール
Kontsevitch教授は、現在の数学をリードする研究者であり、このような研究者が日本へ3年連続で来日したという実績は、世界的にアピールできた。実際、今年の最終年度に行った国際会議では、120名を超える参加者があり、その3割程度が国外研究者であった。このなかには、ベトナム、韓国、中国、台湾といったアジアからの研究者も参加していることでアジアへのアピールも十分であった。この研究方向のイニシアチブをとれたことで、本研究機関が世界に先駆けた研究機関として認められたといえる。

4)受け入れ研究機関での効果
Kontsevitch 教授の当事業における来日は、今回が3年目の最後の年にあたる。前年までの2年間は、慶應義塾大学理工学部をベースとして、京都大学理学部、京都大学数理解析研究所、東京大学数物連携宇宙機構等を訪問し、講義、研究討論、および若手研究者の指導等にあたっていただいた。 日仏交流150周年事業として行った日仏数学フォーラムや若手研究者との合宿形式でのセミナー(城崎シンポジウ)等に積極的に参加していただいたことで、大きな数学への貢献をしていただけたと考えている。フィールズ賞受賞者で、また現在数学をリードしていく世界的に著名な数学者を日本に3年間継続的に招聘することで、本機関のなかで数学研究分野の活発な研究を示すことができ、本機関での注目を得ることができた。

その他

今回は、林原フォーラム市民講演会を企画した。それにも気軽に参加していただき、大学生や一般の方々とも気軽に触れ合うことができた。