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外国人著名研究者招へい担当
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外国人著名研究者招へい事業

研究活動報告

外国人著名研究者招へい事業報告書

ADA YONATH E.

滞在中の日程
年月日 訪問先名称・訪問内容(研究討議・講演・視察等)
平成22年  
12月3日 関西空港着。午後8時30分到着の予定が約一時間の遅れで到着。
タクシーにて宿舎のホテル日航茨木に送りチェックインとともに明朝からの打合せを行う。
12月4日 大阪大学にて講演を行う。担当:蛋白質研究所中川敦史教授
大阪大学コンベンションセンターで開かれた日本結晶学会平成22年度年会(60周年記念年会)に参加し、「The amazing ribosome, its tiny enemies and hints about its origin」と題して特別講演を行った。
夕方:京都に移動。ホテルグランビア京都にチェックイン。
夜:京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」におけるレセプションパーティに出席。
12月5日 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席。
夕方:グランドプリンスホテル京都におけるスピーカーズディナーに出席。
12月6日 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席。
ポスターセッションにて若手研究者と交流。
12月7日 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席。
国際神経ペプチド学会とのジョイントセッションに参加。
夜:在日イスラエル大使招待のディナーに参加。
12月8日 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席。
“Strikingribosomal architecture: Nascent proteins voyage form making to initial folding”と題して特別講演を行う。
ポスターセッションにて若手研究者と交流。
12月9日 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席。
夜:グランドプリンスホテル京都における学会主催の晩餐会に出席・スピーチを行う。
12月10日 公式行事なし。
12月11日 奈良女子大学において講演を行う。担当:理学部中澤隆教授
奈良女子大学記念館においてAda E. Yonath博士講演会(奈良女子大学特別講演会)で「FromHibernating Bears to Improved Ribosomal Antibiotics」の演題で講演を行った。
講演後、学長、副学長、そのほか学内、学外の関係者と昼食をともにして懇談した。
12月12日 大阪薬科大学にて講演を行なう。担当:創薬基盤科学技術センター 小林祐次教授
大阪薬科大学講堂にて「高校生のためのノーベル賞受賞者による講演と交流会」を行った。
第1部は、同博士による「リボソームの構造とタンパク質合成の仕組み・研究上の困難とその克服」と題する講演を、第2部は、同博士と5名の高校生をパネラーとした交流会(パネルディスカッション)が行われた。
12月13日 京都薬科大学において講演を行う。担当:薬品化学分野 木曽良明教授、向井秀仁博士
躬行館で創薬科学フロンティア研究センター特別講演会として「Striking ribosomal architecture: Nascent proteins voyage form makingto initial folding」と題して講演を行った。
12月14日 京都大学理学研究科にて講演を行なう。担当:生物物理学教室 藤吉好則教授
Ada E. Yonath博士特別講演会にて“Amazing Ribosome”と題して講演を行った。
12月15日 京都産業大学にて講演を行う。担当:総合生命科学部伊藤維昭教授 
タンパク質バイオジェネシス研究室にて討論した後、京都産業大学図書館ホールにおいて特別講演会にて「"The voyage of nascent proteins through the ribosome"(リボソームにおける新生タンパク質の旅)」と題する講演会を行った。
学長の表敬訪問の後、教員6名と会食し懇談した。
12月16日 帰国のため伊丹空港から羽田空港に移動。
12月17日 (出国)日付変わって午前0時30分羽田発で帰国の途に着いた。

受入実施の状況とその成果

今回の招聘では、京都国際会館で開催された「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」において、アダ・ヨナット博士の研究内容について講演していただくとともに、上記国際シンポジウムで若手研究者との交流プログラムを実施し、我が国の若手研究者・大学院学生ばかりでなく、国際シンポジウムに集う世界中の若手研究者、特に女性研究者・学生を啓発することとしていた。
 本学においては、高校生を対象とした講演会及び同博士との交流会を実施し、また、奈良女子大学では、女子学生を対象とした講演会を実施するなど、特色ある講演会を実施した。これにより、高校生、女子学生が科学者を目指す動機付けの一助となることを期待したものであった。
 さらに事業では、受入大学である大阪薬科大学をはじめ、京都大学、奈良女子大学、京都薬科大学、京都産業大学等において講演を行い、同博士の研究を広く社会に発信するとともに、講演会に出席した研究者と精力的に学術討論を行うなど、我が国の学術振興に貢献いただいた。
 以下にいくつかの例を挙げる。

12月4日
 日本結晶学会60周年記念講演会は一般公開としたため、一般市民の他、中高生など若い人も数多く参加され、370名の学会参加者を含めて500名収容のMOホールがほぼ満席となった。本講演は、聴衆を、とりわけ学生や若手研究者を特に鼓舞し、深い感銘を与えた。

12月5日~9日
 京都国際会館での「第5回ペプチド国際学会・第47回ペプチド討論会」に終日出席
 5日 2002年ノーベル化学賞受賞者Wuthrich博士の講演などを含め討論に加わる。
 8日 特別講演には在日イスラエル大使が特に出席し歓迎のスピーチを行った。
 9日 Kent 博士のAkaboriMemorial Award Lectureに参加、討論に加わる。

12月11日
 奈良女子大学特別講演会では、参加者は奈良女子大学理学部と生活環境学部の学生・院生および教職員(学長、副学長、事務局長を含む)、さらに事前登録した学外の学生と社会人などで。収容人員350人の会場が満席となった。 内容は高度であったが、アダ・ヨナット博士の非常によく準備されたプレゼンテーションと、配布した解説資料(博士のノーベル授賞講演の要旨の別刷;化学、2010年9月、10月号、小林祐次訳)などにより、質疑応答を含め2時間弱の講演会を適度な緊張感をもった学術講演会とすることができた。特に女子学生よりの質問に対し女性科学者の心構えを率直に話され、学生に感銘を与えた。

12月12日
 大阪薬科大学における「高校生のためのノーベル賞受賞者による講演と交流会」では、高校生がノーベル賞受賞者と交流できる機会を与えるために、主に京阪神地方の高等学校に呼びかけ、同時通訳つきの講演会を行った。また理解を深める一助として解説資料(博士のノーベル授賞講演の要旨の別刷;化学、2010年9月、10月号、小林祐次訳)を配布した。高校生290名、高校教諭45名を含む約400名の参加者があった。講演会、交流会、会場からの質疑・応答全てにおいて優秀な同時通訳に恵まれ、高校生の活気溢れる4時間に及ぶ交流会となった。終了後アンケートを回収した。博士が将来の研究者に対し、「賞など名声を得るために学ぶのではなく、自分が知りたいことについて強い好奇心を持って学び、研究し続けなさい」と強調されたことに多くの学生が感銘を受けたようであった。高校教諭からこの試みを大いに評価され、感謝の意が伝えられた。

12月13日
 京都薬科大学での特別講演会には学内外から若手研究者や大学院学生、学部学生が中心に約200人程度が参加した。タンパク質の翻訳機構について学部学生レベルに対しても非常にわかりやすい講演であった。またタンパク質の結晶構造の解析方法についても、その意義、必要性を含めてわかりやすい説明が行われた。最後に若手研究者、特に女性の若手研究者をエンカレッジする経験談が語られた。講演後、女性を中心とした若手研究者や大学院学生、学部学生との交流を行った。

12月15日
 京都産業大学ではタンパク質バイオジェネシス研究室にて研究室における最近の実験結果(翻訳アレスト配列の特異性、多様性などに関する解析、細胞内合成途上polypeptidyl-tRNAを検出する実験方法)について討論した。その後、特別講演会が行われた。リボソームの構造を説明に続いて、リボソーム内部にはトンネルがあり、合成途上のタンパク質の鎖が順次トンネルを通ってリボソームの外に生まれ落ちていくことを述べ、その過程で起こる出来事とその分子機構について最近の研究結果を紹介しリボソームが生き生きと働いていることを印象づけた。講演後活発な質疑応答が行われた。

招へい研究者の受入機関に対する寄与
(若手研究者への刺激,受入機関全体の国際化など)

 アダ・ヨナット博士は、構造生物学における主要な研究テーマである、mRNA分子に転写された遺伝情報を生体内の主たる機能分子である蛋白質へと具現化する分子装置であるリボソームの構造を解析した。その高度な高次構造と機能との関連を明らかとした業績により2009年ノーベル化学賞を受賞している。受入れ機関である大阪薬科大学は単科大学であり比較的小規模の大学であるが、構造生物学には伝統があり、三研究室(石田、土井、小林)で多くの若手研究員、学生がX線結晶解析に従事していて、他大学にはないin houseの装置としては最高輝度のX線発生装置FR-E+SuperBrightを設置している。
 中でも小林らは原核生物においてリボソーム再生因子(RRF) の働きが必須であることに着目し、その構造を世界に先駆けて決定した。得られた構造情報に基づき、この因子の阻害剤を合理的に設計する事により、新規抗生剤のリード化合物を得るなど、既に幾つかの成果を挙げている。このようにリボソームの構造と機能といった共通の研究対象を持ち、小林は以前からアダ・ヨナット博士との知己を得てきた。今回、国際ペプチド学会が京都で催されるのを機会に、組織委員である小林が来日を依頼し快諾を得た。大阪薬科大学では高等生物リボソームの結晶化、リボソーム蛋白質の構造研究、NMRを用いてRRFやトリガー因子(TF)の構造変化阻害物質の探索を行っているが、これらに従事する若手研究員や学生を始め、X線結晶解析を中心とする構造解析の関係者は博士と直接対話できる機会を得て、博士の気さくなお人柄から、心置きなく質問、討論を行うことが出来、構造生物学の情報を得るだけでなく、その学問への情熱・真摯な態度に深い感銘を受けた。今後の研究生活での大きな指針を得たと考えられる。更に博士の最高の構造解析技術と、小林らの溶液物性解析技術を用いて、共同研究を行うという合意が得られたことは特筆すべきである。
 本事業を通して、上述の受け入れ機関に限らず全国的にも大きな成果を上げることが出来た。すなわちリボソームに関係してRNAを対象とする研究者は日本でRNA学会を組織し広く研究のネットワークを形成しているが、圧倒的に複雑なリボソーム自身を研究している研究者間のつながりは希薄であった。そこでアダ・ヨナット博士来日を機会にこれら研究者の属する機関に博士に出向いていただき講演を重ねていただくことを企画したところ、上述のように大きな3つの講演会のほかに6大学での講演と討論の場を持つことが出来た。これらの場所で数多くの研究者が世界トップレベルのリボソーム研究に接する機会を得た上に、女性研究者や未来を担う高校生たちにも啓発の場を持てたことにより本事業の目論見が十分達成されたと言える。

その他

特になし。