サイエンス・ダイアログ

2016/02/01 「サイエンス・ダイアログ」を実施しています。

サイエンス・ダイアログは、外国人特別研究員等で来日している優秀な若手外国人研究者(JSPSフェロー)に有志を募り、近隣の高等学校等に対して英語での研究に関するレクチャーを提供するプログラムです。

地域の大学や研究機関で活躍しているJSPSフェローから、英語で研究の話を聞くという経験が、生徒達に大きな刺激を与え、研究への関心・国際理解を深めるだけでなく、JSPSフェロー自身にとっても、地域社会と交流し、日本とのつながりを深めることを狙いとしています。

実施をご希望の場合は事業のウェブページをご参照の上、参加申込書をご提出ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

■実施プログラム例の紹介

平成27年11月13日 香川県立高松桜井高等学校 (講師:Dr. Mengnjo J. WIRMVEM)

 平成27年11月13日に、日本学術振興会外国人特別研究員(JSPSフェロー)のDr. Mengnjo J. WIRMVEM(メンジョ・ジュウド・ウィルムン博士)が、香川県立高松桜井高等学校の1年生及び2年生を対象にHydrogeochemistry and Isotope Hydrologyについての講義を行いました。

講師のDr. Mengnjo

 講義の前から、高松桜井高等学校の生徒と活発にやり取りがあり、和やかな雰囲気で講義が始まりました。
 講義は、自己紹介ののち、母国であるカメルーンの紹介から開始しました。
 まず、日本との比較におけるカメルーンの植生や気候、標高について説明があったのち、高い伸びを示している人口や、さまざま存在する宗教や公用語である英語とフランス語、さらには数百もの地域の言語などのカメルーン固有の事情について説明がありました。生徒たちはそれほど多数の地域言語があることに驚きの声を漏らしていました。また、生徒に身近なサッカーの有名人や、カカオ・木材や車といった輸出入物、ライオンなどの野生生物の説明を通じてカメルーンへの理解を深める工夫をしていました。さらに、カメルーンに湖に関する説明では、高校の先生から助け舟が出るなど、高校側からも理解を深める工夫がなされていました。

 次に、講師からなぜ科学者になったかの説明がありました。カメルーンでは5歳以下の子供の5分の1の死因が水関連のものというところから、カメルーンの水の質に対する疑問から興味が始まった。得た知識でカメルーンの水問題の解決に貢献したいという思いから科学者を目指すことになったとのことでした。また、日本へ来た理由は、カメルーンでも多く運転されているトヨタなどの高い技術のイメージから来日を決意したためとのことでした。

 さらに、講師から自身の研究テーマである「水の質や量の起源が何にあるのか」の紹介が行われました。内容は以下のようなものでした。
 水には、同位体があり、その同位体が様々な作用により偏りが生じ、割合が変化する。様々な作用とは、高度や緯度、季節、降水量である。たとえば、高度でいえば、高度が上昇するごとに雲の中に含まれている同位体が落ちていくため、高地にある水は同位体比が比較的小さく、平地にある水は同位体比が比較的大きい。このような作用により、みんなが飲んでいるミネラルウォーターがどこから来たものなのか(ex. 川・泉・井戸・湖、山・低地、季節がいつか)といったことが理解できる。このことを使い、水質のモニタリングができる。
 人間の体のほとんどは水でできている。たとえば、 脳の85%、血の80%、筋肉の70%は水である。そこで、自分の体にある水の中身を考えてみたい。水にはいろいろな元素が溶けている。その化学成分(=水の質)がどこから来るかを探ることが、Hydrogeochemistryの研究である。たとえば、海水と淡水を比べたとき、ナトリウムやカルシウムの含有量は海水のほうが多いといったことである。水の質は健康にも影響を及ぼす。水にヒ素が多いとヒ素中毒を起こし、肺がんや皮膚がんの原因となる。同様に、水に水銀が多く水銀中毒になると精神遅滞を起こし、水に硝酸態窒素が多く硝酸態窒素中毒になるとブルーベビー症候群を起こす。
 研究方法は4つの段階に分かれる。①フィールドワークで水を採取、②ラボで化学分析、③その内容を会議に報告、④最後に論文にまとめる、である。
 このような作業を続けることで、よい品質の水を得られる手掛かりが見つかる。その水を飲むことで、健康な人間が増えれば、カメルーンの生産力も増えていくはずであると考えている。

講義の様子

 ここまでで講義は終わり、残りは質問時間となりました。ここでは、高度の同位体比に関する質問やカメルーンの言語に関する質問などが行われ、生徒たちは理解を深めました。終了後も質問に来る生徒が出るなど活発な議論が行われました。