平成28年度「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」

平成28年度「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」を実施しています。

  「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」は、科学研究費助成事業(KAKENHI)から生まれた研究成果を我が国の将来を担う小中高校生に広く伝えることで、人文学・社会科学から自然科学にわたるさまざまな分野の科学の楽しさを身近に感じてもらうために平成17年度から実施している事業で、今年で12年目を迎えました。
  小中高校生の皆さんに、最先端の研究を行っている大学等へ実際に来ていただき、大学等の研究室でしか体験できない最先端の実験や調査をするとともに、第一線で活躍する研究者から直接話を聞くことができる点にポイントがあります。
  今年度のプログラムは、全国の161機関で平成29年1月まで随時実施されています。皆さんのご参加をお待ちしています。

ひらめきときめきサイエンス
■実施プログラム例の紹介

8月2日(火)関西大学「最古の寺院・飛鳥寺~瓦から古代日本のお寺を知ろう~」

8月6日(土)広島大学「気球を使って環境観測を体感しよう!」

8月9日(火)福井大学「タンパク質って何だろう?大腸菌から作ってみよう。ミクロな分子の世界にようこそ!」


実施プログラム例の紹介


8月9日(火)福井大学 「タンパク質って何だろう?大腸菌から作ってみよう。ミクロな分子の世界にようこそ!」

  平成28年8月9日に福井大学で「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」によるプログラム「タンパク質って何だろう?大腸菌から作ってみよう。ミクロな分子の世界にようこそ!」が開催されました。ここではその様子を紹介します。

  タンパク質は私たちの体の中で様々な働きをしていますが、本プログラムでは高校生を対象に会場は福井大学の教室を借り、タンパク質の構造の模型を作成することや大腸菌にタンパク質を作らせることを通じてDNAからタンパク質が合成されるメカニズムについて理解を深めることを目指しています。

  講師の藤井先生によるオリエンテーションののち、講義が始まりました。初期の生物の誕生についての説明に続き、DNAの構造や遺伝子工学(遺伝子発現・タンパク質合成)についての説明がありました。説明終了後、遺伝子工学により人為的にタンパク質を発現させる実験を行いました。具体的には、あらかじめ外来タンパク質を合成する遺伝子を取り込ませていた大腸菌を、遺伝子発現を促す溶液が入ったチューブと入っていないチューブの両方に加え、培養を行いました。培養は本日のプログラム終了まで行い、最後に培養結果の確認を行います。

  • プログラムの様子1

    遺伝子工学の説明が行われました

  • プログラムの様子1

    大腸菌をチューブに加えていきます

  実験が終わると、タンパク質の元となるアミノ酸の構造についての説明があり、その後、分子模型キットを利用して、複数のアミノ酸が結合して形成されるタンパク質の立体的な配置を作成していきました。このキットは藤井先生が監修している物で、立体構造を組み上げながら学ぶことのできる物となっています。

  • プログラムの様子3
  • プログラムの様子4

部品を組み上げていきます。複雑な部分はTAに質問しながら作成していきます。

  • プログラムの様子5

もう少しで完成です。参加者同士でも相談しながら完成を目指していきます。

  さらに多くのアミノ酸が結合したタンパク質の二次構造について、模型を用いた説明が続きます。タンパク質は熱を受けたときに変性しますが、その際には、アミノ酸同士の結合が切れていきます。講義の中では、模型の中のどの結合が切れていくのかを参加者が予想していきました。立体的な模型を用いることで、教科書などの平面ではイメージすることが難しい分子と分子の結合関係や、変性によって分子同士の結合関係が切れる現象をわかりやすく学ぶことができました。加えて、講義の中では、スタンリー・プルジナーによってプリオン病がタンパク質によって引き起こされるという仮説を提唱した際なかなか医学界に認められず苦労したエピソードの紹介もあり、より身近に研究を感じるための工夫がされていました。

 

  • プログラムの様子6

    二次構造についての講義の様子

  • プログラムの様子7

    結合が切れる場所を予想していきます

  • プログラムの様子8

    全ての結合が切れました

  お昼は班ごとに先生やTAと一緒にとり、その後、参加者とTAとで歓談する時間がありました。参加者は、普段の大学生活や受験に関してなど様々なことについて質問しました。

  • プログラムの様子9

    昼食後の懇談

  午後は、タンパク質の変性や、DNAからアミノ酸、タンパク質が作られるメカニズム、タンパク質が関係する病気であるアルツハイマー病などについての説明がありました。講義の後には午後からの実験で使用するマイクロピペットの使い方について学びました。マイクロピペットとはスポイトよりも遙かに正確に液量を計り取ることができる実験機器です。皆さん初めて触る機器もみるみるうちに使いこなしていきます。

  • プログラムの様子10

    マイクロピペットの使い方について学習

  次に、今回の実験で大腸菌に発現させる緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む様々なタンパク質を電気泳動で分析しました。先ほど練習したマイクロピペットを用いて実験を進めていきます。マイクロピペット以外も初めて操作する機器ばかりでしたが、わからないところはTAに質問しながら、しっかりと進めていきました。
  電気泳動後に撮影したゲルの写真を使ってタンパク質の分子量を計算し、各班の代表者が計算結果を発表していきました。同時に電気泳動していた分子量マーカーを基準にGFPの分子量を推定できること、タンパク質を変性させた場合と変性させなかった場合で、分子量の計算結果が異なっていることを確認できました。

  • プログラムの様子11

    タンパク質を電気泳動していきます

  • プログラムの様子12

    分子量の計算方法の説明

  • プログラムの様子13

    分子量の計算をしていきます

  • プログラムの様子14

    班ごとに分子量の計算結果を発表

  最後に、ゴーグルをつけて、午前中に培養を始めていた大腸菌からGFPが作られているか確認しました。大腸菌の増幅時間が短かったため、想定していたほど光りませんでしたが、十分増幅させていたサンプルと比較しながら観察を行い、実験で予想通りの結果を得ることの難しさについても体験しました。

  • プログラムの様子15

    タンパク質の発現を確認します

  最後に、未来博士号の授与が行われました。

  • プログラムの様子16

    未来博士号授与

  • プログラムの様子17

    集合写真

  実習は高校生がまだ習っていないような多くの複雑な内容を含んでいたのにもかかわらず、動画や工作キットなどを用いることで理解しやすいよう工夫がなされていました。加えて、代表の藤井先生以外にも、数名の先生が分担して講義や質問対応をしており、さらに各班に一人TAがつくことできめ細やかなサポートがなされていました。その中で、参加者はわからない部分を積極的に先生やTAに質問しながら実習に取り組みました。盛りだくさんのプログラムに対して、最後まで集中力が途切れず実習に取り組む参加者の姿が印象的でした。