サイエンス・ダイアログ

2017/03/08 「サイエンス・ダイアログ」を実施しています。

サイエンス・ダイアログは、日本学術振興会のフェローシップ制度で来日している優秀な若手外国人研究者(JSPSフェロー)に有志を募り、近隣の高等学校等に対して英語での研究に関するレクチャーを提供するプログラムです。

地域の大学や研究機関で活躍しているJSPSフェローから、英語で研究の話を聞くという経験が、生徒達に大きな刺激を与え、研究への関心・国際理解を深めるだけでなく、JSPSフェロー自身にとっても、地域社会と交流し、日本とのつながりを深めることを狙いとしています。

実施をご希望の場合は事業のウェブページをご参照の上、参加申込書をご提出ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

■実施プログラム例の紹介

平成29年2月14日 奈良県立青翔高等学校 (講師:Dr. Benjamin OUTRAM)

 平成29年2月14日に、日本学術振興会外国人特別研究員(JSPSフェロー)のDr. Benjamin OUTRAM(ベンジャミン・ウーテラム博士)が、奈良県立青翔高等学校の2年生を対象に「VRの未来」というタイトルで講義を行いました。

講師のDr. OUTRAM

 講義は、自己紹介と母国である英国の紹介から始まりました。
 始めに、日本と比較しながら英国の地理や面積について解説を行いました。日本と英国で異なる点として、英国はヨーロッパ内での移動や住居、労働に制限が少ないことが挙げられました。しかし、英国がEUからの離脱を決定したため、今後状況は変わるかもしれないとのことです。講師の出身県の風景や通っていた大学、その周りの環境の説明がありました。大学はマンチェスターにあり、周囲にはクラブなどもあって音楽に親しんだとのことです。

講義の様子

 次に、博士課程まで研究を行っていた液晶についての説明が行われ、様々な液晶画像が紹介されました。液晶構造は様々な物でみられ、人工物だけではなく、七色に見える甲虫の外骨格にもみられます。

液晶の紹介

 液晶が様々な色に見えるのは様々な長さの波長がでているためですが、講師は液晶について研究を行う中で、音も波によって伝わるものであり、音を可視化したらどうなるのか興味がわいてきたと述べていました。このような経緯から、音楽に合わせて映像が変化する動画を作成する研究につながったとのことです。講師の作成した動画が流されると、ドラムやギターなどの楽器それぞれの音に対応して画面上の色や模様が複雑に変化していく様子に、生徒達は強い関心を持っていました。こうした研究には、大学時代に音楽やダンスで遊んだ経験が活かされていると述べていました。

講師の作成した動画を再生

 続いて、博士課程を修了した後に開始した、メディア技術に関する研究について解説がありました。講師は液晶の研究に一区切りつけ、現在はメディア技術の研究室に所属しています。
 まず、メディア技術の歴史について説明がありました。昔の、メディアといえば本の技術しかなかった時代から、テレビが作られ、現在はインターネットによって世界中がつながるようになり、世界が小さくなっています。講師はこの次に何が来るのかを考えていくのが私の役目だと述べていました。
 次に、本講義のタイトルにも含まれている、バーチャル・リアリティ(VR)の解説に入りました。VRは、全く違う場所にいても、同じ風景の中で一緒に打ち合わせをしているように感じられる点や、手術の経験が場所を選ばずに経験可能というような体験ができる点で、インターネットとは異なるものです。
 VRでは、プレゼンスとよばれる、VRの世界の中にいる実感がどれだけあるかという点が重要になります。具体的には、頭を動かした際に自然に周りの風景を動かすことができれば、それだけVRの世界にいることを実感することができます。また、複数の感覚が連動した共感覚も重要視しています。講師の所属している研究室では、VRプレイ中にVRの世界で何かにぶつかった際、その部位が振動するスーツを作成して実験を行っています。視覚や聴覚だけでなく触覚も駆使することで、よりその世界に没頭できる仕組みを作ることが可能になります。講師が学会で発表を行っている様子も動画で流されました。その他の課題としては、VRを見ていると画面に酔ってしまう人がおり、このVR酔いとよばれる状態をどのように防ぐかということにも取り組んでいるとのことです。

VRの動画

 さらに、VRの未来についても語られました。将来的なVR技術では、脳と情報を直接つなぐことができるようになる可能性があり、人工知能が発展することによって研究者の作業が手助けされ、発展のスピードがさらに加速するのではないかと述べていました。一方、現在はVRを作るプログラムが無料で提供されており、1人でも作成に取り組める時代になっています。興味がある生徒向けに、プログラムの紹介もありました。
 最後のまとめとして、講師から生徒達へ次のようなメッセージが贈られました。学校での勉強ももちろん大切だが、現在は1人でも学ぶことができるようになっている。例えばテレビ、インターネットを見ている人は多いと思うが、そこからもアクティブに学ぼうとしてほしい。自分の将来につながっていく可能性があるので、このような姿勢を持ってほしい、というコメントで講義が終了しました。講義終了後も、講師の元に数名の生徒が集まり、熱心に質問していました。
 今回の講義全体として、カラフルな画像や動画を用いることで生徒達が興味を持ちやすいような工夫がなされていました。加えて、自身の作品を公開しているウェブサイトを紹介したり、VRを作成する際におすすめのプログラムを教えたりするなど、今後生徒自身で取り組む機会を提供しようという工夫も見られ、実際に、生徒達にとって大きな刺激になった様子でした。

講義終了後の質問の様子