サイエンス・ダイアログ

2017/03/08 「サイエンス・ダイアログ」を実施しています。

サイエンス・ダイアログは、日本学術振興会のフェローシップ制度で来日している優秀な若手外国人研究者(JSPSフェロー)に有志を募り、近隣の高等学校等に対して英語での研究に関するレクチャーを提供するプログラムです。

地域の大学や研究機関で活躍しているJSPSフェローから、英語で研究の話を聞くという経験が、生徒達に大きな刺激を与え、研究への関心・国際理解を深めるだけでなく、JSPSフェロー自身にとっても、地域社会と交流し、日本とのつながりを深めることを狙いとしています。

実施をご希望の場合は事業のウェブページをご参照の上、参加申込書をご提出ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

■実施プログラム例の紹介

平成29年1月17日 千葉県立佐倉高等学校 (講師:Dr. Robert NAWROCKI)

 平成29 年1月17日に、日本学術振興会外国人特別研究員(JSPSフェロー)のDr. Robert NAWROCKI(ロバート・ナウロッキ博士)が、千葉県立佐倉高等学校の1年生を対象に薄く柔軟な高性能有機トランジスタ集積回路についての講義を行いました。

講師のDr. NAWROCKI

 講義は、「ヘルスケアへの応用のための有機バイオエレクトロニクス」と題され、大きく3つの内容に分かれていました。講師ははじめに、講義中は自身ばかりが一方的に話すかたちにならないように、生徒達にも積極的に質問や発言をしてほしいと伝えました。
 第一部の「我々はどこから来たのか」では、有機エレクトロニクスによる神経形態学的エンジニアリングの一例として、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟が紹介されました。続いて、講師が生まれ育ったポーランド、高校卒業後に住んでいたアメリカ合衆国、そして現在研究者として滞在している日本の3つの国の地理、例えば国土の面積や人口などの数字を比較しながら、それぞれの国の特徴を概観しました。また、肖像画や写真を生徒達に見せ、「これは誰でしょう」と問いかけながら、ニコラウス・コペルニクスやマリー・キュリーなどのポーランド出身の著名人について紹介していきました。
 第二部の「科学とは/工学とは何か」では、科学(science)とは何か、また工学(engineering)とは何かについて、それぞれ文章で説明した後に、重力の発見や印刷技術の開発などの具体例をいくつか挙げ、科学と工学のどちらに当てはまるかを生徒達に選んでもらいました。また、「今後、どのような科学的成果が出る/出てほしいと思いますか」という生徒達への問いかけもなされ、講師が話すだけに留まらない講義にするための工夫がかいま見られました。

講義の様子

 第三部の「バイオエレクトロニクス」では、有機エレクトロニクスについての説明に始まり、具体的な応用例として太陽電池やディスプレイ、照明などが挙げられ、身近なところに色々な有機エレクトロニクスによる技術が使われていることが紹介されました。有機エレクトロニクスは低コストで、大面積での製造が可能であり、高い柔軟性や生体適合性を実現できるという特徴があります。
 ここで、講師自身の研究テーマである「エレクトロニックスキン」、つまり皮膚にも貼れるような、薄く柔軟な高性能有機トランジスタ集積回路について説明がありました。世界では、身体の不自由な患者の頭部に穴を開けて電極を差し込み、患者の意思に従ってロボットアームなどが動くといった技術が実用化されつつありますが、講師はなるべく患者の身体に侵襲的ではないものを開発したいと考えており、主に皮膚に貼ることのできる医療用集積回路の開発を目指して、既に従来のものより薄くすることに成功しています。さらに、3Dプリンタを使って大量に有機トランジスタ集積回路を製造できることを示した動画も紹介されました。
 講師は現在東京大学で研究を行っており、様々な研究に取り組む研究者と切磋琢磨しています。現在の研究室は世界でも最先端の有機エレクトロニクスの実験や技術開発が行われており、他にはない装置などを使える恵まれた環境にあることから、文化の違いに戸惑うことはあっても、充実した研究生活を送ることができていると語っていました。

質疑応答の様子

 講義の締めくくりに、生徒達にやってほしいこととして、「一生懸命勉強する」「人生を楽しむ」「自分の使命(生きがい)を見つける」の3つを挙げました。その後、生徒達からは、講義で紹介された技術に関する内容や講師の好きな食べ物など、幅広い質問が投げかけられました。講師は一つ一つの質問に丁寧に答えており、生徒達に自分の経験や考えを伝えたいという熱意が感じられました。