サイエンス・ダイアログ

2017/03/08 「サイエンス・ダイアログ」を実施しています。

サイエンス・ダイアログは、日本学術振興会のフェローシップ制度で来日している優秀な若手外国人研究者(JSPSフェロー)に有志を募り、近隣の高等学校等に対して英語での研究に関するレクチャーを提供するプログラムです。

地域の大学や研究機関で活躍しているJSPSフェローから、英語で研究の話を聞くという経験が、生徒達に大きな刺激を与え、研究への関心・国際理解を深めるだけでなく、JSPSフェロー自身にとっても、地域社会と交流し、日本とのつながりを深めることを狙いとしています。

実施をご希望の場合は事業のウェブページをご参照の上、参加申込書をご提出ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

■実施プログラム例の紹介

平成28年12月14日 名古屋市立向陽高等学校 (講師:Dr. Jamjan MEEBOON)

 平成28年12月14日に、日本学術振興会外国人特別研究員(JSPSフェロー)のDr. Jamjan MEEBOON(ジャムジャン・ミーボーン博士)が、名古屋市立向陽高等学校の1年生を対象に熱帯・亜熱帯地域におけるウドンコカビの適応進化についての講義を行いました。

講師のDr. MEEBOON

 講義は、自己紹介ののち、母国であるタイの紹介から始まりました。
 まず、タイの地理や仏教・挨拶などの文化、プミポン前国王についての説明がありました。その後、多くの写真を用いて、ジャムジャン博士の出身であるチェンマイの伝統的な服装、チェンマイに住むカヤン族、生活に身近な動物である象についての紹介があり、生徒達からは、日本とは異なる文化に驚きの声があがっていました。

 次に、講師から自身の研究テーマであるウドンコカビの研究をしている理由について説明がありました。内容は以下のようなものでした。
 タイの国民の約40%は農業もしくは関連分野で働いており、農業生産を維持・増加することは国の重要な目標となっています。しかし、農作物がうどんこ病にかかってしまうと、その分収率が減ってしまいます。そこで、農業生産の維持・増加の為にはうどんこ病による収率の損失を減らすことが必要になります。その実現のために講師はウドンコカビの研究を行っています。具体的には、「農業生産管理手法」「ウドンコカビの検出と診断」「ウドンコカビの抑制と根絶」の3つの方法があり、この中でも講師は「ウドンコカビの検出と診断」に取り組んでいます。
 「ウドンコカビの検出と診断」が重要な理由は以下の通りです。まず、もしウドンコカビの診断を誤ってしまうと病態を抑制するのに余分な時間とお金を浪費することになります。また、農作物貿易の際には植物検疫が行われますが、取締り対象となる有害動植物リストが誤っていた場合、輸出先の国から農作物が返却されてしまうため、経済的な損失につながります。加えて、もし輸入の際にウドンコカビの混入を見落としてしまうと、海外のウドンコカビが国内で拡大する危険が生じ、農業生産へのダメージやさらなる経済的な損失が見込まれます。講師は、研究を通じて、どのようにして世界の90億の人々の安定的な食糧供給を実現するのかという課題に取り組んでいきたいと語っていました。
 講師は現在三重大学で研究を行っており、具体的な研究手法は、日本・タイ・インドネシアでウドンコカビのサンプル採集を行い、採集したサンプルを研究室にて顕微鏡で観察し、DNA実験を行う、というものです。ウドンコカビの研究者を志した理由は主に4つあり、①うどんこ病を根絶して農業生産を増加させたい、②タイの農業生産による国際競争力を高めたい、③タイや世界の人々の食糧供給を支援したい、④農業に従事する若い世代にうどんこ病対策を教えたい、というものです。これらの達成のために農業管理の高い技術を持つリーディングカントリーである日本で研究を行っているとのことです。

講義の様子

 ここまでで講義は終わり、残りは質疑応答の時間となりました。最初は質問が出るまでに少し時間がかかりましたが、時間の経過と共に生徒達も慣れて中盤から終盤にかけては何人もの生徒から手があがり、日本での生活やカヤン族の装飾、英語の勉強法についてなど、様々な質問がありました。研究に興味があるという生徒もいて、実際に母国以外の国で研究をしている研究者の声を聞く良い機会になりました。また、講師がタイ語の単語の5通りの発音を紹介した後全員で発音の練習を行うなど、賑やかな雰囲気で進みました。この質疑応答を通じて、生徒達は研究内容だけでなく、他国の生活や文化、英語やタイ語など様々なものに触れることができました。

質疑応答の様子