サイエンス・ダイアログ

2017/12/28 「サイエンス・ダイアログ」を実施しています。

サイエンス・ダイアログは、日本学術振興会のフェローシップ制度で来日している優秀な若手外国人研究者(JSPSフェロー)に有志を募り、近隣の高等学校等に対して英語での研究に関するレクチャーを提供するプログラムです。

地域の大学や研究機関で活躍しているJSPSフェローから、英語で研究の話を聞くという経験が、生徒達に大きな刺激を与え、研究への関心・国際理解を深めるだけでなく、JSPSフェロー自身にとっても、地域社会と交流し、日本とのつながりを深めることを狙いとしています。

実施をご希望の場合は事業のウェブページをご参照の上、参加申込書をご提出ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

■実施プログラム例の紹介

平成29年12月15日 山梨県立甲府南高等学校 (講師:Dr. Ishwar Yadav)

 平成29年12月15日に、日本学術振興会外国人特別研究員(JSPSフェロー)のDr. Ishwar Yadav(イシュワー・ヤダブ博士)が、山梨県立甲府南高等学校の1年生を対象に「残留性有機汚染物質」についての講義を行いました。

講師のDr. Yadav

 講義は、自己紹介ののち、母国であるネパールの紹介から始まりました。まず、ネパールの地理・気候についての説明があり、その後、多くの写真を用いて、言語・食事・宗教などの文化について日本とも比較しながら紹介がありました。

 続いて、講師が研究者になった理由について説明がありました。講師は、たとえ、当面の利益が明確でなくとも、私達の周りの世界について理解を深める事は人類にとって良い事であると信じ、研究者として物事の仕組みを理解していきたいと考えて研究者になったということです。世界はつながっており、人類が地球上で持続的に生きていきたいと考えるならば、自然そのものに目を向ける必要があるのではないか、と語っていました。

 加えて、科学とは何かという説明がありました。科学とは私達の周りの世界を説明するために、観測や実験を使って得られた知識であり、逆に科学的方法に基づいていないものは、疑似科学と呼ばれています。科学技術が重要な理由としては、科学は数百万人の命を救っており、高い科学力を持つ企業は社会と国にとって不可欠であり、国の発展は科学にかかっていることがあげられます。また、科学を理解することは環境に対し、責任ある行動をする助けになるだろうと説明されました。

 次に、講師の研究内容の説明に移りました。まず講師の扱っているPOPsについて解説が行われました。POPsとは、残留性有機汚染物質の略称であり、炭素系化合物で以下の4つの特徴を持つ物質を指します。①長期間分解されずに、環境中に残り続ける。②長距離移動が可能。③生物の脂肪組織に蓄積。④人間への毒性や環境に悪影響がある。

講義の様子

 POPsの元となるのは、殺虫剤や化学産業、生産時に生じた副産物です。POPsが恐れられている理由は健康と環境に深刻な脅威をもたらすからです。脅威としては、癌、生殖率の低下、免疫系の破壊、中枢神経系の損傷、先天異常の誘発などがあげられます。しかし究極的には科学者が調べなくてはどのような悪影響があるかはわからず、その意味でも科学を勉強することは大切であるとの説明がありました。また、POPsには環境中での驚くべき残留性があり、濃度が下がるまでに数十年から数世紀かかることがあります。さらに、POPsは生物の脂肪組織に蓄積しますが、その方法には二種類あります。1つ目は生物蓄積と呼ばれ、子供から大人になるにつれ体内の蓄積濃度が高くなることを指します。2つ目は生物濃縮と呼ばれ、食物連鎖を通じて、高次の生物ほど蓄積濃度が高くなることを指します。加えて、POPsは空気の移動などに伴い、長距離を移動していきます。赤道付近では気温が高いため、高く舞い上がりやすく、北極付近では寒いため地上に落ちていきます。このようにPOPsがもたらす影響は、1つの国にとどまらないグローバルな問題となっており、1国で対策することができなくなっています。これらのPOPsの脅威に対抗するため、2004年にストックホルム条約が発効されています。この条約はPOPsの製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定しています。このように各国が協力してPOPsの問題に取り組もうとしているとのことでした。

 次に講師の研究者としての仕事の説明がありました。有害な化学物質から環境や人の健康を守りたいということが研究の動機となっています。目標は「環境中のPOPsがどこから来て、どこへ行くのか。環境中でどのような活動を行い、どのような構成物質からなるのか。」をより理解し、予測することだと話されました。最後にPOPsのモニタリングサイトや調査対象、具体的な調査方法の説明が行われ、講義は終了しました。

 続いて、質疑応答が行われました。生徒からの質問に対し、非常に熱心に回答され、少しでも内容や思いを伝えたいという講師の熱意が伝わってきました。最後に、生徒から講師へ挨拶が行われ、講師・生徒の双方にとって有意義な講義となったことが感じられました。