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ひらめき☆ときめき サイエンス

プログラムの実施の様子
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プログラムの実施の様子

高知大学

赤ちゃんが残してくれた“仲間”
―悲しみを思いやりに変える社会心理学

整理番号 HT3097

実施担当代表者

増田 匡裕 (ますだ まさひろ)

人文学部 准教授

開催日

平成 19年 11月 23日(金・祝日)

開催会場

高知大学朝倉キャンパス 総合研究棟2階第1会議室

住所:高知市曙町2丁目5番1号

実施の様子

 「心のケア」について考えることが大切な職業というのは、意外とたくさんあります。対人援助職とひとまとめに呼ばれることがある、教育・医療・福祉の専門職に興味のある様々な人たちのために企画されたのが、本プログラムです。高校生を主な対象にしたものですが、大学生・大学院生、さらに一般の方々にも、新鮮に感じてもらえるようなメニューになっています。
 「赤ちゃんの死」という、とても悲しい出来事をテーマにしていますので、参加に尻込みした生徒さんや先生がいらしたのかも知れません。ですが、お問い合わせをしてくだされば良かったと思います。深刻なテーマを明るく楽しく真面目に紹介するというのが、このプログラムの本当の目的だったのです。そういうお話をしてくださる2人のゲストスピーカーが招かれています。実際に赤ちゃんを亡くす悲しい体験をされた後、同じ体験をした他の人を支える人たちがヴォランティアで集まるピア・サポート・グループで活動をしているアロマセラピストと、将来の助産師を育てる仕事をしている大学の先生のおふたりです。大切なものを失う経験をした人たちを支える仕事には、アマチュアとプロフェッショナルの2つの道があるのです。そしてその2つに共通すること、「喪失体験の理解」に必要な知識を集めるのが心理学者の仕事です。表に示した当日プログラムの4講義で、3者の立場のつながりが分かると思います。
 小春日和の休日の午後、会場に集まってくださった23名の方々は、立場はそれぞれに違いますが、対人援助職を目指す勉強をしている若い人たち、そして若い人たちを見守る立場にいる人たちでした。特に、看護職を目指す生徒さんたちがたくさん来てくださり、ゲストのおふたりも、おひとり25分という限られた時間をフルに生かして、生徒さんたちの熱意に応えてくださいました。午後に灯りを落としてスライドを用いた講演をすると、居眠りをするお客さんが次々と出てくるものですが、この日はそういう人は見かけませんでした(アンケートで居眠りを“告白” した方が1名いましたけれど)。
 ゲスト講演の後には、少し寛いだ雰囲気で、「社会心理学」という学問の姿を知ってもらうプログラムが設けられています。社会心理学というのは、日常生活の何気ない普通の行動がどうしてうまくいくのか、その反対に、どうしていつも似たようなトラブルが起こるのか、という素朴な疑問から、社会生活における人間の行動や考えを分析する心理学です。スタッフとして当日のプログラムを手伝ってくれていた3人の卒論生が、それぞれ自分が学んだ社会心理学を、将来の進路(学問の道とは違う進路です)でどのように生かしていくのかを話してくれました。
 プログラムのまとめとして、参加してくださった生徒さんたちや、ゲストスピーカー、更に視察に見えた日本学術振興会の方々を含めたディスカッションがありました。この講座は、悲しい気持ちを口に出せない苦しさへの理解がテーマです。悲しみだけでなく、怒りや喜びなど、日頃口に出せない様々な感情が次々と飛び出しました。実はこれがプログラムの“卒業試験”でした。全員無事に合格しましたので、和やかに「未来博士号」授与式が執り行われました。

時刻 内容 担当者
12時50分 開会・スポンサー挨拶 佐藤達哉(日本学術振興会委員・立命館大学教授)
13時00分 オリエンテーション 増田匡裕(高知大学)
13時05分 第1講義:喪失体験の社会心理学入門
思いも寄らぬ悲劇に遭遇したときに人はどのようにそれを受け止めるのか解説します。
増田
13時30分 休憩  
13時40分 ゲスト講演第1:喪失体験から生まれるピアサポート
重大な喪失を体験した人は、専門家でなくても同じ立場の人たちを支えることができます。「誕生死」体験をしたアロマセラピストの講演です。
山本さくら(アロマセラピスト/自助グループメンバー)
14時05分 ゲスト講演第2:赤ちゃんとの死別を体験した女性や家族へのケア
対人援助職を養成する現場では喪失体験へのケアをどのように考えているのか、助産学や母性衛生の観点から解説します。
岡永真由美(神戸市看護大学准教授)
14時35分 休憩(これ以降、飲食自由のティータイム形式)  
14時45分 研究室の活動紹介:私と社会心理学
日常生活の謎からヒントを得る社会心理学のおもしろさを紹介します。
学生スタッフ3名(高知大学人文学部4回生)・増田
15時00分 第2講義:非公認の悲嘆とは??人を孤独にしないためには??
人は自分の悲しみを理解してもらえないとき、より孤独になります。それは悲しい出来事そのものより辛いことです。なぜそうなるか解説します。
増田
15時25分 休憩  
15時30分 ディスカッション:“非公認”を公認にするワークショップ
私たちが知らず知らずのうちに“非公認”にしてしまっている感情はないでしょうか。悲しみでも喜びでも怒りでも、それを感じている人を孤独にしないためにはどうすればいいのか、まず発見することから始めましょう。
増田・ゲスト・スタッフ
15時55分 「未来博士号」授与式・挨拶 増田
16時05分 アンケート記入  
16時15分 解散<16時20分閉場>  

↑表:当日のプログラム。黄緑部分はティータイム形式。


↓写真:左は第1講義;中はゲスト講演第2;右は「未来博士号」授与式。

実施の様子_1   実施の様子_2   実施の様子_3
         
 

※ 謝辞
 「悲嘆ケア」に関する一般向け公開講座で、体験者と医療従事者と実験系心理学者の3つの立場を組み合わせたコラボレーションは例を見ないものです。また、こういう催しがいつも成功するとは限りません。本プログラムに参加してくださった皆さんや、いろいろと助けてくださったゲストスピーカーとスタッフの皆さんのご協力あっての上首尾です。皆さんに心からお礼申し上げます。本プログラムは、通常の大学公開講座や模擬授業とは異なり、「ひらめき☆ときめきサイエンス」という事業だからこそ可能であったものであるということを申し添えておきます。