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この企画の大きな特長は、現在研究室で取り組んでいるプロジェクトに、地域の子どもたちに実際に参加し体験してもらうことによって、科研費による研究活動や成果をただ説明するだけよりも、できるだけリアルにより実感をもって伝えることを試みたことだ。そのために、昨年度の科研費補助金によって、豊田市生涯学習センター保見交流館と連携してスタートし、本年度も継続して開催した「いきいきカレッジ」の後半の2回に、実際に子どもたちも参加してもらった。昨年度の「保見地域カレッジ」では地域の大人と研究室の学生が協力し、地域の歴史や現状について調査した結果を、豊田市提供の航空写真を使用した大きな二次元のマップ上にデジタル写真や俳句などで表現した。今年度は、昨年から継続している大人の参加者と協力して企画を練り、テーマを「未来の町をえがく」として、大人と学生の視点に、子どもたちの視点も加えて、三次元のジオラマとして制作することにした。地域の大人達と学生とが協力して「いきいきカレッジ」において5週間かけて事前準備をした上で、9月23日と30日に子供たちを迎えて実施した。
1回目(9月23日)は以下のプログラムで行った。
1. 開校式: 研究室の研究活動は、大学の中だけでなく、豊田市や町の大人たちなど、様々な学外の組織や個人と協力して行っていることを説明した。
2. アイスブレーキング: コミュニケーションがとりやすいようにワークショップ開始時によく使う「自己紹介ビンゴ」ゲームを行い、お互いの事を知り合えるように配慮した。
大学探検: 子供のグループに大人と学生が入り、当日開催していた中京大学オープンキャンパスの展示など大学内を案内した。このグループで学生食堂へ行き昼食も共にした。大学の様々な研究室の研究内容を紹介し、学生の日常生活を体験してもらいながら、午後のテーマである「未来の町づくり」についての会話を始めてもらった。
4. ジオラマ説明: 科研費補助金によって、昨年度に豊田市生涯学習センター保見交流館と連携して行った「保見地域カレッジ」で制作した町の大きなマップを見せて説明した。そして、それを今年度継続した「いきいきカレッジ」で、大人と学生が準備してきたジオラマ制作用の土台(一畳大のスチロール板に町の地図を貼り等高線)と、未来の町を想像して制作した施設などの模型を子供たちに見せ、説明した。
5. グループで相談: 町の中のどのエリアにどんなものを作りたいかにより、子供たちはグループに分かれ、大人と学生がグループに入って、子供たちの作りたいものの話をきいた。
6. ジオラマ制作: グループごとに相談しながら、素材を選び、制作を進めた。
7. 中間発表: グループごとにどんなものを制作したか、次回どのように制作を進めたいか発表してもらい、質疑応答を行った。
2回目(9月30日)は以下のプログラムで行った。
1. 制作準備: 前回制作したジオラマを見直し、前回までに出ていた町づくりに対する様々な視点を確認した。そして、完成に向けてどのように取り組むかを全員で考えた。
2. 制作: グループに分かれ、制作を再開した。
3. 研究紹介&昼食: より開放的なギャラリーに場所を移し、科研費補助金を受けて研究室で最近開催した子ども向けのワークショップなどの研究活動の様子を、大スクリーンに投影し、幾つかのテーブルごとに研究室のメンバーから子どもたちに研究活動の説明を行った。同じテーブルで一緒に昼食をとりながら話を続けた。
4. 制作: 昼食が終わったグループから制作会場に戻り、制作を続けた。
5. 発表会: 完成したジオラマを全員で囲んで、ひとり一人から、制作したものについて発表してもらった。それを作ろうと思った動機についてもインタビューした。
6.修了証書授与式: 一人ずつ名前を呼んで終了証書を手渡した。最後に「自分だけではできなかったことが、協力することで、自分がいたからできたこと」を確認し「子どもと若者と大人が協力し、また大学と地域が協力することで、未来の町を作っていこう」というメッセージを伝えて終了した。終了後も茶菓を囲んで多くの参加者が話し込んでいた。
子どもたちに実際にプロジェクトに参加してもらい、自分たちの町にある大学の学生たちや、町の大人たちと一緒に、町の未来を考えてもらうことで、「大学と地域のコラボレーションの場のデザイン」というテーマでの研究活動を、子どもたちに実際に体験してもらうことができた。結果としてアンケートでは子ども、大人の参加者全員が「大学の研究に興味が湧いた」と回答してくれた。「この大学に(将来)絶対に入る」と回答した子どももいた。 また「大人と大学生と子どもでえがく未来のまちづくり」というテーマで行ったこのワークショップは、次の2つの重要な課題に対して方向性を見出すことができた。
・ 大人、学生、子どもという三世代の関係をどのようなものにしていくのか?毎週日曜日連続7回シリーズで、最初4回は地域の大人と学生で進め、後半は子どもも加わり、最後は地域のお祭りで成果発表という構成で行った結果、最初に大人と若者が子どもの環境づくりをするという意味付けが生まれ、地域の大人にとって、単に参加するだけでなく「町の子どもたちに、未来の町について考えてもらう場を作る」という意識が生まれたようだ。
・「未来の町をえがく」という多くの要素が絡む複雑なテーマについて、ワークショップの限られた時間でどれだけ深められるか?現実の町の縮小版であるジオラマという具体的空間を共有することで、「未来の町をえがく」というテーマについて共同思考をすることが可能になった。
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