|
私達の研究室では、人間が視覚情報から空間の奥行きや立体形状を知覚するメカニズムについて研究を行っています。本プログラムは、トリックアートで用いられる立体感に関する錯視現象「逆遠近錯視」を用いて、人間の視覚情報処理について理解を深めて頂くことを目的に企画しました。 プログラムの実施日は、夏休みに入ったばかりの大変暑い日となりましたが、大阪府下はもとより奈良・兵庫・三重県などの遠方からも多数の中高生と保護者・教育関係者の方々にご参加頂きました。
冒頭で、日本学術振興会の担当委員である中村桂子先生(JT生命誌研究館館長)より、本事業全体の趣旨をご説明頂いた後プログラムを開始しました。 最初の1時間は、本学部のノーマンクック教授による「逆遠近錯視と奥行き知覚」についての講義を行いました。視覚情報処理における人間と他の動物との相違点は、様々な知識に基づくトップダウンの情報処理であること、逆遠近錯視はそのトップダウンの情報処理で奥行きを誤って解釈するために起きることについて、日常生活で見られる具体例とデモンストレーションを交えた説明がありました。また、講義終了後には活発な質疑応答が行われました。参加者の皆さんには、錯視現象とその仕組みについて理解を深めて頂けたと思います。
 |
|
 |
| 講義の様子 |
|
質疑応答の時間 |
次に、クッキータイムでは、お茶を飲みながら、申し込み時に寄せられた質問についてパワーポイントを利用して説明を行いました。視覚系のメカニズムと視力に関する質問、錯視現象を医療目的で応用する方法、本学部のような文理総合学部の研究や学習内容に関する質問もありました。 本プログラムでは、参加者の皆さんに錯視図形のペーパークラフトを配布しました。当初は、これを会場で一緒に作成する予定でしたが、時間の都合上組み立て方法を大学院生が実演して説明し、各自で家に持ち帰って作成して頂くことにしました。ご家庭や学校等でさらに錯視を楽しんで頂くとともに、本プログラムに参加しなかった友達にも当日の様子を伝えて頂くことが出来れば幸いに思います。
 |
|
 |
| クッキータイム |
|
説明と大学院生によるデモ |
後半は、参加者の皆さんに被験者になって頂いて心理実験を行いました。3種類の実験を用意して、それぞれ自由に参加して頂きました。一番目は、錯視の強度を測る実験です。奥行きの手掛かりを変えた3種類の錯視図形について、近づいたり遠ざかったりして錯視が見える距離を測ります。錯視図形までの距離が近いと両目からの正しい奥行き情報が加わるため、錯視が見えなくなります。すなわち、錯視が見えた距離が近いほど錯視強度が強い図形であることになります。
 |
|
 |
| 実験刺激 |
|
心理実験風景 |
次は、視野反転眼鏡を使った実験です。視野反転眼鏡とは、プリズムにより左右眼の像を反転させる特殊な眼鏡です。これで見ると左右の網膜像の変化が反転するため錯視が見えなくなります。 三番目の実験は、コンピュータグラフィックスを利用した実験です。テーマパークで用いられるコンピュータグラフィックスの立体映像と同じ原理で、眼鏡をかけて見ると図形が実物同様に飛び出して見える映像を提示して、錯視の強度を測ります。コンピュータグラフィックスを使う利点は、錯視図形の形状や図柄を自由に変えることが出来、両眼からの情報も含めた様々な条件下での心理実験が行えることです。また、このシステムを基にして、奥行き知覚能力に関する診断システムへの応用も可能であると考えています。参加者の皆さんには、赤・青のセロファンの眼鏡を掛けて錯視図形を見て頂き、コンピュータグラフィックスの表示を変更すると奥行きが反転して見えることを確認して頂きました。また、一部の方には眼鏡をつけずに立体に見える裸眼立体ディスプレイを使って同様に実験が可能であることを体験して頂きました。
 |
 |
 |
| 反転眼鏡の実験 |
CGを用いた実験 |
未来博士号を授与 |
最後に、クック教授より参加者のひとりひとりに未来博士号の証書が手渡され、プログラム終了となりました。参加者からは、「面白かった」「難しかった」「興味をもてた」など様々な意見が聞かれましたが、大学の研究室の雰囲気を経験して頂き、きっと視覚情報処理の研究の面白さを感じて頂けたと考えています。
|