|
自然環境と調和したバイオマス資源の重要性を、次世代の担い手である中高生の皆さんに知っていただくことを目的として、10月7日(土曜)に本プログラムが催されました。 バイオマスとは、もともとは生物であった資源のことで、木材はその代表選手です。バイオマスは石油とは違って再生可能な資源ですから、これを上手に利用することはとても大切なことです。このプログラムでは、私たちの身近にある木材のユニークな特徴を、講演や施設見学、ミニ実験等を通じて、幅広いレベルで紹介しました。
まず、午前中には「ヒューマン・フレンド・バイオマスへの誘い」と題して、名古屋大学大学院生命農学研究科の山本浩之教授および土川 覚教授の講演がありました。山本教授は、宇宙の誕生から今日の地球上の生命活動を広く見渡して、その中での植物(樹木)の進化の過程とそれによって獲得されたさまざまな特徴をわかりやすく説明しました。続いて、住宅材料として使用された木材のリサイクルに関する話題が、土川教授から提供されました。近赤外光という目に見えない光(波長800-2500nm)で木質廃材を観察すると、その素性が高い精度で判別でき、この手法を廃材工場に導入することによって、判別作業が無人化できることが解説されました。 昼食を名古屋大学内の生協で取りました(参加者と大学教員および大学院生)。大学での研究活動やバイオマスについて普段考えていることなどを、和やかな雰囲気の中で話し合いました。
続いて、午後からは研究施設の見学とミニ実験を行いました。 まず、木造建築の柱や板のような大きな材料に実際に荷重をかけて、どの程度の強さ(強度)を持っているのかを調べる強度試験機を見学しました。この装置を用いて、後ほど解体材の強度を調べました。 次に、走査電子顕微鏡(SEM)による木材組織の観察を体験しました。この装置は、電子を試料に照射したときに、試料から発生する二次電子量が試料表面の形態に依存することを利用して、試料の微細構造を観察するものです。針葉樹と広葉樹を観察し、後者のほうが細胞の種類が多く、生物体としての機能が分化していることを確認しました。また、引張あて材のゼラチン層という組織を観察し、セルロースミクロフィブリルから構成される細胞壁の超微細構造を観察しました。 最後に、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を見学しました。SIMS法とは、一次イオンであるガリウムイオンを試料表面に照射し、放出される二次イオンを飛行時間型質量分析計により分析する方法で、二次イオンの試料中の分布をマッピングできる特徴をもっています。この装置を用いると、細胞レベルでの化学情報を直接得ることができます。樹木細胞壁の構造解析に応用し、木材の主要な成分のひとつであるリグニンを非破壊的に細胞レベルで分析する手法について説明がありました。
クッキータイム後に、今回のメインイベントであるミニ実験に挑戦していただきました。行った実験は、以下の2項目です。 1.解体材の曲げ強度測定実験 現在,住宅の多くは築後数十年で「老朽化した」という理由により解体されていますが,その主要な構造部材はまだまだ十分な強度を保持しています。今回は,実際の解体材に建物の設計荷重以上の大きな力を与え,解体材がどの程度強いか確かめる実験を行いました。実験材が破壊する時の大きな衝撃音もさることながら、解体材の強度が新しい木とあまり変わらないことに、皆さん驚かれていました。
2.新聞紙からのはがき作成実験 リサイクルの代表選手である新聞紙は約70%が再生された繊維からできています。今回は、脱墨装置によって新聞紙からインクを除いて繊維を再生しました。また、その繊維を用いた再生葉書を手づくりしていただきました。皆さん、思い思いの葉書を作られ、実際の紙の再利用についても興味を持っていただきました。
本プログラムの最後に、松田 幹生命農学研究科長から、参加者に修了証書が手渡れました。皆さん、少々の緊張の面持ちでした。 今回は、中高生の参加者が4名と少なかったのですが、保護者および高校の先生方ともに、非常に熱心かつ真摯に取り組んでいただき、参画した教員・大学院生も充実した秋の一日を過ごすことができました。「木を切って大切に使うと人間は自然と友達になれる」というメッセージが、参加された皆さんに多少なりともお伝えできたのではないかと思っております。
|