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ひらめき☆ときめき サイエンス

プログラムの実施の様子
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プログラムの実施の様子

日本大学

近未来の安全な自動車と安心な社会交通

整理番号 HT232

実施担当代表者

青木 義男 (あおき よしお)

理工学部・教授

開催日

平成 18年 11月 3日(金)

開催会場

日本大学理工学部船橋校舎

住所:千葉県船橋市習志野台7-24-1

関連URL

 http://www.cst.nihon-u.ac.jp/move/contents.html

実施の様子


写真1 講演会開始直後の様子


写真2 
福田教授による近未来型交通
システムの紹介

 本プログラムは,衝突安全車体の開発研究で得られた成果の一端を中高生に広く公開する目的で,平成18年11月3日(金)午前10時より千葉県船橋市の日本大学理工学部船橋校舎にて開催したものである.当日の参加者は,47名(高校生43名,中学生2名,保護者2名)で,多くは千葉県内の高校生であり,その他東京都や埼玉県からの参加者が数名という内訳であった.
 午前9時30分から船橋校舎14号館教室棟の2階フロアにて受付を開始し,午前10時から1422教室おいて,ひらめき☆ときめきサイエンスの主旨と1日のプログラムの説明の後、本プログラムの代表者である青木教授により「近未来の安全な自動車と安心な社会交通」というテーマで講演を行った.この講演では,交通事故のように,人間の生活を便利で豊かにするために創り出された機械構造が人間を傷つける道具になるという,起こしてはならない事例をどのようにして防いでいったらよいのか?という観点から,自動車や道路環境を設計する技術者,これらを保守・保全,管理する立場の人々,そして自動車や道路の運転者や利用者が,それぞれにどのような努力や注意をしてゆけば,交通事故の無い理想的な交通社会が実現できるか,について中高校生に考えてもらうことを目的に行った.現状の問題提起から,自動車の安全性向上に関する内外の先駆的な試みを紹介し,機械技術者が様々な視点から人や環境に対する安全を検討し,如何にして現在の自動車を設計しているかについて,また,自動車整備や交通環境整備ではどのような部分に着目して交通事故を防ぐ努力をしているかなど,安全設計や保全についての基本的な考え方 を説明し,運転者や交通システムを利用する人たちが意識すべき安全について紹介した.この後,社会交通工学科の福田教授により,安全と環境保全を考慮した近未来型交通システムについて,自らが行っているタイのバンコクや沖縄県でのパイロットプロジェクトの事例を紹介した上で,近未来の交通システムについての様々な可能性を解説した.参加者の中高生は,学校の授業では殆ど聞くことができない機械や安全の技術について興味をもった学生が多かった様子で,昼食時間のディスカッションの際には,支援の大学院生や大学生に対して自動車構造や交通システム,さらに大学生活に関する様々な質問がなされていた.



写真3 
衝撃破壊試験後の試験体観察の様子


写真4 
電動カートによるすれ違い走行試験の解説


写真5 
大学生によるバッテリーエコランカーの解説


写真6
バッテリーエコランカー走行デモの様子

 続いて午後1時20分からは,理工学部の大型実験設備を利用した「自動車ドアの衝撃破壊試験」,「電動カートと自動車のすれ違い走行試験」,「バッテリー駆動及び燃料電池駆動エコランカーの走行デモンストレーション」を行った.まず,「自動車ドアの衝撃破壊試験」は,船橋校舎テクノプレース15の落下塔内に設けられた国内最大級(落下高さ20m)の落錘衝撃試験を利用して行った.この実験は自動車の側面に中型の自動二輪車が時速55kmで衝突することを想定したものであるが,殆どの中高生にとって大型実験設備を利用した実験は始めての経験だった様子で,実験装置の説明に時から,興味津々で落下塔を覗き込んでいた.実験は僅か数秒で終了したが,大きな破壊音と床を伝わる微妙な振動に,皆,驚嘆の声を上げ,落錘子衝突時の高速度カメラ映像や大きくへこみ屈曲した自動車ドアの様子や,その内部構造に興味深く見入っていた.また,自動車ドアを持ち上げた学生から意外なドアの軽さに関する質問があったが,現在の自動車ドアには内部にウィンドウ昇降用装置や音響装置などが重さを増やしていることを説明し,自動車軽量化・高機能化に関する考え方を文部科学省科学研究費の成果を元に解説した.
 次に,理工学部船橋校舎の大型施設である交通総合試験路(全長620m、幅30m)を利用して「電動カートと自動車のすれ違い走行試験」を行った.これは写真4に示す電動カートを利用する側に立場になって,狭い道での自動車とのすれ違いが如何に感じられるかを体験する実験である.時間の関係で4名しか体験させられなかったが,誰もが電動カートの着座位置の低さがすれ違いの際の恐怖感を倍加させることを感じとり,自転車やオートバイですれ違う際にも十分注意したいとの意見が多く聞かれた.本プログラム参加を機に交通弱者への気配りを再認識してもらえれば本プログラム実施者としては喜ばしいかぎりである.
 さらに交通総合試験路を利用して「電動車両の試乗体験とバッテリー駆動及び燃料電池駆動エコランカーの走行デモンストレーション」を行った.電動車両の試乗体験は,原動機付自転車並みの走行性能を有する市販の電動車両で行ったが,発進時の加速がガソリン車と同等以上であることや静粛性に意外な好反応が多かったことが印象に残った.また,バッテリー駆動及び燃料電池駆動エコランカーは理工学部の大学生が自分達の手で一から製作したものであるので,構造や運転操作についての解説を製作した学生自身に行ってもらった.操舵機構や燃料電池の仕組みなどが一般車両と全く異なるので,分かり難かったとの意見も一部あったが,中高生にとって身近な大学生が実際に走行する車両を製作していることに,自らの将来に大きな可能性を感じたとの感想が多かった.その後,これらの車両の走行デモンストレーションでは,ガソリン換算で5000km/l に相当する小さなバッテリーや燃料電池の燃費から想像した走行性能のイメージに対し,予想以上の速さで走るエコランカーに皆から驚きの声があがり,製作の際の要点や,大学生達が出場したエコランレースに関しての様々な質問が寄せられた.
 午後3時からは14号館1422教室に戻って,クッキータイムと質疑応答を行った.午後からの実験体験によって,参加者各自が多くのことを考え,近未来,すなわち彼らが社会で働きだす頃の安全で環境にやさしい自動車に対するイメージがいっそう鮮明になったと感じられた.大学に入ったら是非,エコランカーを製作してみたいとの意見もあり,中学・高校で忘れかけていた「ものづくりに対する知的好奇心」を喚起できれば,本プログラムを実施した大きな意義があると応じた.
 後3時45分には質疑応答を終了し,参加者ひとりひとりに「未来博士号」と記念品を授与した後に修了式を終えた.参加した中高生の諸君には「安全と環境に対する認識」のみならず,「ものづくりの面白さ」,「社会に貢献することの意義」を様々なかたちで感じてもらうことが出来たとの手応えを得た.