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ひらめき☆ときめき サイエンス

プログラムの実施の様子
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プログラムの実施の様子

首都大学東京

数学を楽しもう!- まっすぐなもの、まるいものを極める -

整理番号 HT221

実施担当代表者

神島 芳宣(かみしま よしのぶ)

大学院理工学研究科・数理情報科学専攻・教授

開催日

平成 18年 8月 11日(金)

開催会場

首都大学東京 大学院理工学研究科数理情報科学専攻数理科学教室

住所:東京都八王子市南大沢1-1

関連URL

 http://www.sci.metro-u.ac.jp/math/koho/hirameki06.html 

実施の様子

 開催予定のものまたこれまでの各大学の『ひらめき☆ときめき サイエンス...』の資料を見て、今回『数学を楽しもう!- まっすぐなもの、まるいものを極める -』のような地味なタイトルでどれだけ中高生が集まるか不安でした。 しかし、結果的に、純粋に数学が大好きな人、数学に興味を引かれる人が思った以上に集まることとなりました。 
 まず、本学理工学系長の理系を愛する気合の入った挨拶に始まり、学術振興会のKAKENHIは私たちの研究を支える大切な基金であることの説明に続き、今回のプログラムがスタートしました。  前半は二つの講義からなり、後半は体験実習、ディスカッションタイムと続き、修了証書授与式で幕がおりました。 各先生が自らの専門分野の立場から今回のテーマに対する思い入れ・考え方を力のこもった講義により教示され、またシミュレーション実験では、その裏づけとなる明快な解釈が与えられました。大学の研究成果の社会還元という観点では、決して中高生のみならず、一般の方々にも大学の数学がどのようなことをしているのか、先生方が何を研究のテーマとしているのかその一端を分かりやすく紹介したように心がけたつもりです。
 第1の講義は『"まっすぐ"と最短経路- "直線"、 ビリヤード、 ネットワーク』というテーマで始まりました。直線それが持つ性質  - 2点を結ぶ最短経路であるということに焦点をあて、平面以外の面(球、円筒)での最短線の意味付けと存在、それがビリヤードでは反射(鏡像)の原理により実証され、またネットワーク問題では中継点をいくつか与えて最短経路を作ることなど多くの話題が取り上げられました(まだ、一般の場合は懸賞金のかかった未解決問題であることも魅力です)。  また、興味深いことは外枠が円周であるようなビリヤード、さらに楕円枠であるようなビリヤードではその打ち出した球(点)のクッション軌道がどうなるかその複雑性をメイプルソフトを駆使した図示による説明がなされました。  豊富な話題・問題を含む講義でしたが、自分で後から深く静かに考えたくなる面白い内容でした。
 第2の講義は、まるいものとしてのテーマ 『輪がほどけないことを証明しよう. -数学的作法入門- 』でした。 大学では身近にあるものが実は数学の研究対象であるという一端を覗かせてくれたものです。
 三葉結び目という輪(平面に正射影するとき、クローバーに見えることから)がほどけないことを実に明快に証明してみせました。 数学の論理的証明方法(作法と名付けました)の一つ背理法を使って、数学的真理(定理)をどのように導くかという過程を中高生に実感させるように努めました。 まず、高校ではともすると忘れられがちな「考える(疑問を持つ)訓練」を自然に身につける、そしてその繰り返しという不断の努力(例えば受験勉強で沢山問題を解くというパターンでも構いません)を通して数理的(証明)感覚が着実に養われていくという信念はプロの数学者ならではの講義でした。
 講義時間は各40分でしたが、ここで一旦休憩して、その後体験コーナーに入りました。
 最初は 『まるいもの, まっすぐなものを動かす』 というテーマでコンピューターシミュレーション(アニメーション)の実演を行いました。 車輪が動くときのその上の一点を追跡(軌跡)するという実験です。そこではホイヘンスの原理(等時曲線)が正しいことが体験できました。  また、なぜまるい車輪でなければいけないのか、四角い車輪、一般に多角形の車輪だとどのような道を作れば滑らかに運転できるか様々なケースをシミュレーションしました。  3角形の車輪ではどうしてもだめであることも説明されました。 この背景にあるなぜそうなのかは微分方程式の理論によるわけですが、世の中に実用化されるものの多くは表示こそされませんが必ず数学の理論により安全と正確さがしっかり保証されていることを理解してもらった気がします。  もっとも、四角い車輪の自転車は実際に作ったとはいえ、日本の道路条件はよく、実用には適さないですが。
 この後、コンピューターを使った「数値を変えて多角形の車輪の軌道を見る」コーナー、「球、円筒、立方体など曲面での最短線を造る」コーナー、  「円、楕円などで考えるとき、周期軌道がいつできるか(できないか)を検証するビリヤード」のコーナー、そして 石鹸液を使った「最短ネットワークを見つける」コーナーに分けて、各自が好きなブースに移動して、体験実習を楽しみました。  実はこの最後の実験はいろいろな人によりすでに試されているものです。石鹸液の粘着度またネットワークモデルの大きさによりうまく最短線ができるかどうかはなかなか手ごわい所業ではありました。  ところがとあるデパートの夏休み宿題工作キット売り場でまさにそのモデルが売っていたのを知り、すぐそれを購入して、実験補助員(大学院生)の努力で実験を重ね、改良し大きくしたものを作りました。当日それを使って、皆さんに大変好評だったことは是非伝えたいところです。
ここで、エピソードをひとつ。 この市販のキットの名前は「石鹸膜で近道を探そう (対象年齢6歳以上)」というものでした。 今回のプログラムでこのまま実験だけ見せるなら小学生の「ひらめき☆ときめき  お遊びサイエンス...」になってしまうと思い、慌てました。 しかし、幸いにも、最初の講義で私たちは、石鹸液からできた道がなぜ最短線(近道)であるかを数学的に示したのですから、このキットの内容の対象年齢を一気に16歳くらいに引き上げたのではないかと思っています。
 この時点ですでに予定の終了時間も過ぎてしまい、時間に忠実な参加者には大変申し訳なかったのですが、ディスカッションタイムができなくなるかと思われた頃、一人の学生(しかも中学生)が質問をしてきました。これを皮切りに、一気に実施担当者、協力者、諸先生が集まり、ディスカッションタイムが始まりました。ところが私たちは学生たちが用意してきた(予想しなかった)数学の質問に明快にあるいは十分に答えることは残念ながらできませんでした。 
 大学の先生に質問することは勇気がいることなのかもしれませんが、一方大学の先生には何でも聞けばわかるという「潜在的尊敬の念」から解放された参加者  (学生さんと親御さんたち(保護者))は私たち大学教員と一緒に先生・生徒という垣根を越えて、最後には自由に数学の質問ができる和やかな雰囲気になりました。 
 最後に、修了式を行いました。最後まで出席していた方々は20数名でしたが、楽しくできました。 終了後、まだ質問の足りない人とは話し合ったり、 さらに 私たちの研究・教育環境設備たとえば図書室などの見学を希望する人には案内もしました。  実を言うと、私たち教員は高校生の皆さん方とはオープンキャンパス、毎月数理科学コース説明会、大学祭などを通して主に受験の事ばかり対応しているのが現状です。 しかし、本当にうれしかったことは、このプログラムの趣旨を理解してくださった参加者、および保護者の方々とは幸いにも受験のことは忘れて、十分数学の楽しさを講義・対話を通してお互いに堪能することができたということです。また、皆さんとは数学を語り合う機会にいつかめぐり合いたいと願っています。