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このプログラムでは、ヒトの知覚のもつ不思議さについて、デモ体験とその理論的説明の両方を通じて、知覚心理学の面白さや基礎研究の意義について知っていただきました。
午前中は,東京大学法文二号館一番大教室において,実施担当代表者である佐藤隆夫教授による科研費の重要性の説明,および「心理学とは?」というテーマのもとに知覚心理学が扱う研究領域に関しての話をいたしました. その後,IML研究機関研究員である谿雄祐より「知覚体験の基礎知識」というテーマで講演いたしました.ヒトが知覚している光や音とはなんだろうか?そのような物理的な刺激をどのようにして知覚しているのか?外の世界とヒトの知覚はどのような関係にあるのか?など知覚心理学の基本となる問題を説明いたしました.
午前中の講義の後,本学IML内にある没入型バーチャルリアリティ実験施設CABINの見学を行いました.CABINとは高精細の立体表示スクリーンで囲まれた映像空間とデータグローブ等の入出力装置で構成される大型三次元画像装置です.複数の人間が共同体験可能な没入型のヴァーチャルリアリティ空間を実現することがます。参加者の皆さんにもこのヴァーチャルリアリティの世界を体験していただきました.またCABINで同時に見学できる人数は限られているため、待ち時間の間大学の構内の見学を行い大学での研究などについて参加者とお話いたしました.
大学院生や先生との会話をしながらの昼食の後,実験室で普段用いている研究環境をそのまま教室に移し,ヒトの視覚,聴覚の不思議について実際に体験していただきました.面白い錯覚を見て知覚現象の不思議さを体験するだけではなく,ポスターやスライドでの説明を加えることで,錯覚からわかるヒトの知覚の仕組みもあわせて説明し,より深い理解を得られるような説明を行いました.
デモ体験の後,再び一番大教室において,実施担当の佐藤から一日のまとめの講義がありました.「知覚体験は実際の外の世界をそのまま再現した物ではなく,頭の中で再構成をしていると言う点で,全てがイリュージョン(錯覚)である」こと,「知覚は外の世界を再現した受け身のプロセスでなく,積極的に知覚世界を作り出す能動的なプロセスである」ことを説明し,盲点の補完や大きさの恒常性,陰影による奥行き知覚などの具体例を挙げながら知覚現象の仕組みについての基本を説明いたしました.
講義のあとは大学院生とのフリーディスカッションを行いました.一日の感想や心理学に関する様々な疑問,実験的な心理学研究の進め方,また普段の大学院生の生活まで多岐にわたる話題で非常に盛り上がりました.最後に参加者全員に対して「未来博士号」の授与式が行われました.
非常に濃密なスケジュールのもと,ヒトの知覚の様々な側面を広範囲に体験していただいたため,最後には皆さん疲労困憊の様子でしたが,「とてもよい体験ができた」「体験型のデモンストレーションがわかりやすく面白かった」「講義の時間が短かった事が残念」などの感想をいただきました.また,テレビなどで紹介される「心理学」とは異なる学術的な心理学を実際に体験することで,「心理学の中にもこのような分野があることをはじめて知った」「心理学,といわれて想像するものと全然違い新鮮だった」という言葉もいただきました.
心理学の分野のうち,我々の研究室では普段の生活ではほとんど問題として意識されない,見ること,聞くことに関する研究を進めています.「日常生活で何気なく見ている出来事のうちにも科学的に研究されていることがあることがわかった」という参加者の方からの感想からも伺えるように,どのような問題を扱っているのか,その問題に対してどのようにして研究を進めているのか,ということを中高生の皆さんに体験してもらい,基礎研究の意義や面白さを伝える事ができたこの機会は,実施者にとっても大変有意義な機会であったと思います.
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